4月7日 昨日ご紹介した通り、富山県朝日町で自治体DX・カーボンニュートラル推進部署「みんなで未来!課」が設置された。本日はそのパートナーとして協働した老舗の広告会社が地方自治体において、MaaSの社会実装のため行った「取組み」について、もう少しご紹介させていただきたい。博報堂は「生活者発想型MaaS」を提案、欧州型や海外参考のMaaSというより、日本にあった(地域にあった)MaaSの導入を進めて来た。その理由は、今後MaaSに取り組もうとする地方自治体において、公共交通について情報や決済などのデータの統合は一切行われていない「レベル0」のケースが大半であり、データの統合以前に交通空白地帯やコミュニティバスの赤字、路線バスやタクシー事業者の撤退などに悩む地域が殆どだからだという。だからこそマニュアル通りのMaaS導入ではなく「生活者発想」による解決が必要と言える。朝日町は人口1.1万、高齢者化率は43%超えで、鉄道の駅やコミュニティバス、タクシーが存在するものの、同町ならではの課題も存在していた。「ノッカルあさひまち」は、既存の交通体系の中に新たな有償交通を加える形となる「ノッカル」を助け合い交通とした理由の一つに、路線バスの撤退により、全国各地で自治体自身が運営する「採算の取れないコミュニティバス」が走っている現状がある。これらの人件費や車両費が自治体の台所を圧迫してしまうケースが散見されるため、この課題に対しては、かような不採算路線を「住民同士の助け合い」という形を取ることで、人件費・車両費を抑制した移動サービスに置き換えると発想し、新たな移動サービスは一般のドライバーの自家用車を活用、自治体が運営する公共交通との形を取り、既にある地元の公共交通事業者と協働しない「交通事業者協力型」とした。ドライバーには自身の用事のついでに人を乗せてもらうので、時給ではなく、ガソリン代+謝礼を支払う。よって募集についても「ドライバー募集」ではなく「ノッカルサポーター募集」という形にした。また「ノッカル」は、一般的なカーシェアやMaaSのようなAIによるマッチングではなく、ドライバーに事前に移動の予定を登録してもらい、乗車希望者にその中から時間を選んでもらう方式を採用した。理由は、利用者の大半が高齢者でスマホを持たない方が多く、予約の大半は電話となる実情がある。一方のドライバーは、やや年齢層が下がるため、運行予定をパソコンやスマホからWeb経由で登録してもらうことが出来る。電話対応を含めたオペレーションは、タクシー会社の黒東自動車商会に協力を仰ぎ、利用者からの電話予約をシステムに登録して貰い、予約情報などはドライバーに自動的に通知される仕組みを採用している。ユーザーインターフェースは「本当にデジタルであるべきか?」との発想からだ。募集する「ノッカルサポーター」の募集にも工夫が凝らされている。事前登録形式を採用したとはいえ、バスのように「毎週この時間であれば確実に移動できる」との運行方式にした方が、より利用しやすい。そこで地域の集まりや、自治会、民生委員、体操教室などに声をかけ、毎週決まった時間に移動している方に「ノッカルサポーター」を依頼することにした。他にも「この曜日は必ずパートに行く」といった方にも登録して貰い、定期便のような形の運行を可能な限り確保している。また利用者には、紙の時刻表を毎月郵送している。時刻表にはバスの運行時間も併記している。「行きはバスで、帰りはノッカルで」といった使いわけが出来ると利便性が増すためだ。リアルタイムやオンデマンドが必要とされる「AIマッチング」を選択しなかったのは、バックヤードでドライバーを待機させる必要が有りコストがかかること、そしてタクシー会社と業務形態が重なってしまうのを避けるためだ。これらを考慮し「ダイヤによる運行」を選択している。目標は地域の交通体系を維持することにあり、ノッカルありきではなく「地元の既存交通との共存できるサービス設計」を心掛けている。都市部でオンデマンドが必要とされるのは「すぐに移動したい」ユーザーの利便性に応えるためだが、同町の利用者(高齢者)においては、予定は逼迫しておらず、「週に1~2回スーパーに行ければよい」といったニーズが主だ。このような利用目的であれば、午前に1往復、午後に1往復確保出来れば十分だ。ルート設計と乗合時間の最適化も検討されたが、同町の構造上各地域と中心部は基本的に一本道である為、採用を見送った経緯もある。ダイヤ設計もドライバー側には「9時~10時半」のように幅を持たせて登録してもらい、利用者には「9時~9時半」「9時半~10時」「10時~10時半」といった時間帯を選択して貰い、予約が入り次第締め切る。こうすることで一人のドライバーの方に複数の時間帯を担当してもらうことができる。プロジェクトを進めるうち「ドライバーも出かける時間をそんなにシビアに考えているわけではない」ことが分かったからこそ、このような設計が可能となったという。「ノッカル」のダイヤをバスのものと統合して一つにしたのも、ポイントの一つと言える。当初はスマホでダイヤを発信したり、Webでリアルタイムで更新することが想定されていたという。前述の通りスマホの利用が少ない高齢者が多い同町では、コミュニティバスの利用者も多いため、ノッカルのダイヤを併せて表示することで、新たな移動手段を利用者が自然に利用できるよう配慮している。高齢者に「ノッカル」の情報をどのように認知してもらうかとの課題には、同町のケーブルテレビ(「みらーれTV」黒部市/入善町/朝日町のケーブルテレビ)を活用している。ケーブルテレビによるアピールについても、サービスの実装を試みる中で、同町の高齢者の方々の多くはケーブルテレビ経由で情報を得ていることが分かり、なじみ深いメディアを通してストレスのないアピール方法を確立することが出来た。スタッフが現地に足を運びつつ得た貴重な発見だったと言える。朝日町内では、従前地域の中で個人的な送迎を行っている方はいたとのことだが、慣習的に乗せてもらったお礼に何かをお返しするなどの慣行もあり、利用をためらう方もいたという。しかし「ノッカル」がサービス化され、対価を払うことでむしろ気軽に利用できるようになったとの声も聞く。またサービス提供側となるドライバー側からは、地域に貢献したいとの思いはあったものの、なかなかピンとくる仕組みがなかったが「ノッカル」の仕組みはノリやすいとの声もあるそうだ。高度だが、サービスを創出する中で丹念に様々な方面の声に耳を傾け、サービス提供者と利用者の心理的作用も巧みに捉えた、博報堂の「生活者発想」「パートナー主義」や朝日町の移動サービスへの熱量が功を奏したと言える。「広報あさひ」には、現在「免許返納で特典!?公共交通割引制度について」の記事が掲載されており、小見出しには「免許返納しても移動に不便なし!」と頼もしい言葉が目に入る。お隣の欄(「新生活には町内の公共交通を!」)にも、「朝日町内の公共交通は充実していますので、新しい生活にあった移動手段をぜひご利用ください!」と記載されている。「ノッカルあさひまち」が、町内の移動を支える公共交通の一角にしっかりとが根を降ろしている様子が伺える。「ノッカルあさひまち」が社会実装されるまでの長い道のりを歩んだ面々やそのノウハウは「みんなで未来!課」に集約され、MaaS導入を起点に、再生可能エネルギー、SDGs(持続可能な開発目標)、デジタル・トランスフォーメーションなど、新たな課題に取り組もうとしているものと思われる。
令和4年度「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(地域新MaaS創出推進事業)」に係る委託先の公募(企画競争)について 他
4月6日 あの富山県朝日町で自治体DX・カーボンニュートラル推進部署「みんなで未来!課」が設置された。コミュニケーション情報誌「広報あさひ」2022年4月号によれば、これまで企画財政課内の「再生可能エネルギー推進室」が「みんなで未来!課」として独立を果たしたとのこと。同課の主な任務は、再生可能エネルギー、SDGs(持続可能な開発目標)、デジタル・トランスフォーメーション等幅広い。また総務政策課から広報業務が移管されており同町の情報発信の強化を図るとしている。昨年10月に締結されたデジタルトランスフォーメーション(DX)連携協定を拡張させ、DX・カーボンニュートラル・情報発信/推進に特化した「みんなで未来!課」は官民連携で推進することが決まっており、そのパートナーとして博報堂が参画することになった。同町と博報堂は、朝日町の自治体サービスの住民利便性向上を目的とし、DXに関する課題について相互に連携・協力する連携協定を締結し、マイカー相乗り公共交通サービス「ノッカルあさひまち」や、地域ポイントとLINEを活用した地域住民向けMaaS実証実験「ポHUNT(ポハント)」などの取り組みを開始、生活や地域コミュニティの活性化に寄与するサービス構築を推進して来た間柄だ。*「ポHUNT」は、「ポイントをハントする」という意味。期間中(同町が設定するイベント期間/2022年1月14日~2月20日)に参加者が外出先や、自宅でポイントを獲得し、貯めたポイントで総額100万円分の豪華景品に応募できるなどのキャンペーンが行われている。同町内のお店や施設(「ポHUNT」スポット)に設置されたポスターやのぼりにあるQRコードをスマホのカメラで読み込むとポイントが獲得できる。スマホがなければスタンプカードにスタンプを押す。自宅ではクイズやアンケート、動画を閲覧してもポイントが獲得できる。貯めたポイントで抽選会に応募し、欲しい景品を入手する手順。朝日町を10地区に分け、地区ごとの参加住民の合計ポイントで競う「地区対抗戦」も実施された。また2022年1月30日にサンリーナで行われたスペシャルイベント①、ビーチバレー大会「ポHUNTカップ」の会場に足を運ぶと来場特典として50ポイント、参加チームには抽選で最大50ポイント、最大100ポイントが贈られた。またスペシャルイベント②、謎解きイベント朝日町ぐるぐる謎巡り「隠された埋蔵金を探せ!」(1月22日~2月11日inアスカ/2月12日~13日inサンリーナ)に参加し、謎を解くことが出来れば、総額100万円分の豪華賞品に応募できるポイントがプレゼントされた。広報誌を使った告知によるイベント参加を、移動機会の創出に繋げている模様だ。「みんなで未来!課」で推進するDXは4つ。①公共交通のDX-共助型マイカー交通「ノッカルあさひまち」×地域交通プラットフォームとして推進。②行政サービスのDX-「ポHUNT」を行政×住民の共創プラットフォームとして推進。③グリーン戦略のDX-行政だけでなくみんなで取り組むグリーントランスフォーメーション(GX)プラットフォームの推進。④子育て環境のDX-学校や家庭だけでない地域での子育てプラットフォームの推進だ。この取り組みには総務省の「地域活性化起業人制度」が活用され、かの「ノッカルあさひまち」のサービス開発を担ったDX推進の専門人材が参画している。「地域活性化起業人」とは6月以上3年以内の期間、継続して3大都市圏に所在する企業から受け入れ自治体に派遣され、地方圏への人の流れを創出することを目指して、地域独自の魅力や価値の向上、地域経済の活性化、安心・安全につながる業務に従事する社員のこと。「地域活性化起業人制度」とは、令和2年度までは「地域おこし企業人制度」として運用されていた。この制度は、3大都市圏にある民間企業が地方自治体の要望に応じて、社員を一定期間派遣し、そのノウハウや知見を活かして、派遣された地方自治体で、その地域独自の魅力や価値の向上、地域経済の活性化、安心・安全につながる業務に従事するもので、地方自治体と企業が協力して、地方圏へのひとの流れを創出できるようにしたもの。ちなみに3大都市圏とは、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の区域の全部を指す。派遣する民間企業にとっては、社会的貢献に加え、人材の育成、キャリアアップ、事業拡大の可能性などのメリットがあり、地方自治体にとっては、ノウハウ移転やスピード感のある事業展開等が行え、双方にとってメリットが大きい制度と言える。マイカー相乗り公共交通サービスとも、共助型マイカー交通とも呼ばれる「ノッカルあさひまち」。近年自治体に導入される確率も上がって来た公共交通事業者などが運営する「オンデマンド交通」とどこが違うのだろうか?「ノッカルあさひまち」はご近所さんの自家用車でのお出かけに、ついでに「乗っかる」ことが出来る、助け合いの気持ちを形にしたサービスで、各地区と中心街を行き来する住民ドライバーの車に、移動したい乗客が「乗っかる」仕組みとなっており、ドライバーは助け合い精神のもと、自分の予定に合わせて、近所の利用者を自分の車に乗せて、目的地まで送迎する。利用者は、ドライバーの予定を見て、事前に予約し、ドライバーの車で目的地まで移動する仕組みだ。利用料は一人で利用の場合は回数券3枚(600円)、二人で利用(乗り合い含む)の場合は、回数券2枚(400円)。*実証実験開始は、国交省の「自家用有償旅客運送」制度に即し、2020年8月3日~開始。2021年1月4日~利用料有償サービス化している。2021年10月1日~本格運行を開始している。実証実験には、朝日町(運行主体、ドライバー/利用者募集および管理)、博報堂(サービス設計など)、博報堂DYグループ(MaaSシステム開発・設計)、スズキ(自動車メーカー)、黒東自動車商会(運行管理:予約受付/配車)が参加した。「ノッカルあさひまち」の実証開始直後は、スズキが提供した軽自動車を町の職員が運転し、地域の住民を送迎していた。その後、住民の自家用車を利用する形に移行させている。縁の下の力持ちとなったスズキは、同サービスで自家用車を運転される方向けの保険など、車周りのことを中心に、サービス開発から実装までパートナーとして協働している。(続く)*画像提供:©(一社)朝日町観光協会
「未来の車」に成長かけるNTT ライバルはグーグルやアップル 他
4月5日 昨年9月末にNTTデータ、オリックス自動車、JTBコミュニケーションデザインの3社は「レンタカー旅行向けコンシェルジュサービス、実証実験で有用性を確認」を発表している。昨年発表されたレンタカー向けコンシェルジュサービスとは、車の室内に複数設置する専用タブレット端末上で、マスコットキャラクターが案内人を務め、様々な観光スポットやルートを提案するサービスで、観光地等に向かう車中で同乗者がそれぞれのタブレットに表示される情報を見ながら、目的地を選ぶ楽しみを提供するものだ。端末上におススメ(レコメンド)される観光スポットは、レンタカーの位置情報と利用者の属性を組み合わせて、利用者の嗜好に合わせた観光スポットとなる。これらの情報は、同乗者がタブレット上で作成できる「プラン」と連携し、目的地までのナビゲーション(経路案内)にも活かされるという。NTTデータは、今後モビリティ事業者(オリックスなどのレンタカー事業者やカーシェアリング事業者をはじめ、或いは観光タクシー、訪問者でも利用可能なオンデマンド交通などとも?)、機能追加やビジネスモデルの検討を行い、2022年度中に観光地での提供を開始するとしていた。2021年2月には、本サービスの実用化に向け(*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から)3社の社員などが集い、利用者のニーズを満たす機能性や体験、事業者としてのサービスの実現可能性などを検証するための実証実験を行っている。実験では、車内の助手席、後部座席に専用のタブレット端末を設置、同じ情報を表示させ、どの端末でも画面操作を可能とする仕様としている。この際マスコットキャラクターが登場し、初めてサービスを利用する利用者にサービス機能の説明をしたり、各種案内を提供することで、お年寄りや子供たちにも、分かりやすいユーザーインターフェイスの実現を目指すとともに、利用者が不案内な旅先でも、登録された個人の年代や、性別や居住地などの属性情報を組み合わせ、利用者の嗜好にあわせた周辺のおすすめスポットを案内(レコメンド機能)することで、個人にとって「新たな発見」や「選ぶ楽しさ」の提供を試みた。また、目的地の飲食店や商業施設の営業時間、おすすめ商品などの情報も提示するガイドブック機能や、気になった場所や行きたい場所を保存しつつ(行きたい場所リスト保存機能)、目的地の変更や目的地までのルートを自由に入れ替えるルート作成機能など、今後さらなるデータベースの拡張が期待されるものの、利用者の使い勝手も想定された機能も備えられている。旅行者の行動傾向や、観光地の人流情報などのノウハウの提供と事業プロデュース、自動車(移動)空間における観光コンテンツなど、コミュニケーション手法は、この道の老舗となるJTBコミュニケーションデザインが提供するとしているので、各観光地や観光スポットの情報の質や量についても期待していいだろう。利用者が目的地を登録すると、目的地までのルートが車内タブレット端末とドライバーのスマートフォンに自動連携し、ナビゲーションが開始される。これらの実証実験により、サービスの利用意向や、課金意向、実用化に向けた機能等の改善点などが抽出された結果も明らかになっている。利用者の利用意向について「レンタカーのオプションとして本サービスがあった場合」については、59%が利用したい、35%がやや利用したいと回答している。また、レンタカーを借りる際に他の条件が同じと仮定した場合「本サービスがあるレンタカー業者を選ぶ」と回答した割合は94%と、非常に肯定的な結果だった。また、気になる課金の意向については、レンタカーのオプション料金として本サービスを利用すると仮定した場合、参加者の94%が、300円~1,500円の範囲であれば利用したいとの結果を得ている。機能等の改善点としては、参加者には車内で新しい移動体験やサービスとして受け入れられ、例えば車内のタブレットから周辺の観光情報などが、自動的に提供されることで、受動的に情報を受け取ることが出来、同乗者間で同じ内容や体験を共有できる点が評価された一方、レコメンド機能やコンテンツの充実、デザインにより一層の工夫が求められた。また行先の混雑状況や見どころスポットや、名産品などを知りたい、行先の予約やクーポンなども提供してくれると嬉しいなどの声も上がったようだ。同時期に全国20~40歳代から年1回以上の頻度で旅行へ行く方(約1,250名)を対象にサービスの利用意向や、その理由などのアンケートと、一部の方にはインタビューなども行われている。この結果からも、総じてサービスコンセプトの受容性が高く、約7割の回答者は本サービス利用のためにレンタカーのオプション料金を支払っても良いという結果を得ている。特にレコメンド機能やナビゲーション自動連携機能などへのニーズは大きく、さまざまな周辺サービスと連携を求める声も多かったという。さらにアンケートの対象者のうち10名に対して、実際の自動車に本サービスを取り付けて、実際の体験して貰ったところ、10名全員がアンケート時点では利用意向のなかった人も含めて、レンタカーで本サービスがあった場合には利用したいとの回答を得た。これらの結果から、実際にサービスを体験してもらうと利用意向が高まるという傾向を確認することが出来たとしている。デスクワークに励みつつ「今年のゴールデンウィークこそは・・・」との考えが頭をよぎる今日この頃。レンタカーを利用して普段行くことが出来ない遠隔地への旅行もいいだろう。JTBが2022年3月18日~25日までに実施した旅行動向アンケートによると、新型コロナの世界的流行から、はや3年目を迎える今年、ワクチン接種に加え治療薬の開発など対応策の進化もみられるが、今年のトレンドとしては、近隣を中心としたエリアツーリズムから(国内における)遠方への旅行が増加し、日数や費用も増との傾向。感染防止を意識しつつ、旅行の同行者は身内中心から、友人や知人などに拡大の傾向があると聞く。遠方への旅行(希望)が増加した結果、利用する予定の交通機関は、乗用車・レンタカーがトップで62.0%、次いで鉄道全体38.8%、航空機は20.5%、宿泊先はホテルが43.8%、実家や家族の家(22.3%)、旅館(21.5%)など。これまで感染対策として増加傾向にあったキャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊などアウトドアに関する宿泊(4.5%)、民泊・貸別荘(1.1%)などは、いずれも減少に転じている模様だ。ゴールデンウィークにおける、利用交通機関のトップに含まれるレンタカー業界には「レンタカー旅行向けコンシェルジュサービス」の絶好のアピールの場が間近に到来していると言える。3社からのサービス開始の便りが待ち遠しい限りだ。
一般社団法人 国際サイバーセキュリティ協会加入のお知らせ~サイバーセキュリティ対策ソリューションの提供を強化~
2022年4月4日AOSデータ株式会社 一般社団法人 国際サイバーセキュリティ協会加入のお知らせ~サイバーセキュリティ対策ソリューションの提供を強化~ クラウドデータ、システムデータ、リーガルデータ、AIデータなどのデー・・・
国土交通省、MaaS基盤整備支援で5事業に追加交付、キャッシュレス決済やシェアサイクルなど 他
4月4日 先週末には、2025年に大阪・関西万博を控える大阪高速電気軌道(大阪メトロ)の最近の動きを簡単にまとめさせていただいた。本日もその続編です。今後のOsaka Metro Groupのキーワードとも言える「デジタルマーケティング」や「都市型MaaS」について探求してみたい。Osaka Metro Groupは、事業群をマーケティング、都市交通、都市開発の3つに分け、事業群ごとに成長戦略と日常業務を組み合わせて考えており、その上でグループ全体の経営管理と運営体制を合理的・戦略的なものに変革して行くことを目指し、2025年度にかけてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、2025年大阪における都市生活プラットフォーマーを目指すとしている。しかしながら、事業構造改革(新たな成長戦略)においては事業分野を、都市交通、マーケティング、「デジタルマーケティング」、都市開発の4事業と捉えている。目指すビジネスモデルとしては、次世代交通インフラMaaS(鉄道やバス)を中心とし「デジタルマーケティング事業に包含していく既存の流通・広告事業」、都市開発事業、社外の事業をつなぎ、それぞれの相乗効果を発揮し、「交通を核にした生活まちづくり企業」を具現化し、事業全体の発展を目指すとしている。MaaSを運営、そこから得られた利用者の移動や行動データを元に「デジタルマーケティング事業」から、交通との逆相関事業(新規事業)を創出したい意向だ。同時に新規事業の取組みから得られる情報や成果を既存事業にフィードバックすることで相乗効果を最大限発揮できるよう考えている。同社としては、今後の成長株としてマーケティング(デジタルマーケティング+流通+広告を統合)と都市開発、そして屋台骨であるMaaS(鉄道・バス等)を挙げ、ここにリソースを集中したい考えだ。同社は民営化以降、鉄道を核にしたバリューチェーン型で各事業の発展を目指して来たが、今後は、現在推進中のバリューチェーンに加え、フィジカルとサイバー空間をつなぐ新たなバリューチェーンを創出して行くとしている。Osaka Metro Groupは、大阪・関西万博に向け「都市型MaaS構想」を成長戦略の一つの柱としている。大阪交通局時代の運行特化型の事業モデルから、「都市型MaaS」への転換の背景には、現在の鉄道やバス事業を取り巻く厳しい経営環境に対する危機感がある。沿線住民の減少やコロナ禍によるテレワークの普及による利用者の減少の中で移動人口を増やす取組み、即ち「移動ニーズの掘り起こし」が必要との戦略を打ち出している。今後は事業を①最新技術を用いた既存交通の徹底的な進化、②既存の交通網と新たなモビリティの統合によるシームレスな移動の実現、③フィジカル空間での生活・都市機能の整備、④サイバー空間上でのサービス提供の4階層に分け取り組んで行く。①では、可動式ホーム柵やバリアフリー対策、AR案内、顔認証改札機、混雑緩和などの導入、②では、MaaSアプリを中心に既存交通(鉄道+路線バス)と新たなモビリティ(「オンデマンドバス」やシェアリング・ビークル等)をシームレスに繋ぎ、移動需要を最大限引き出すことを狙う。③では、交通とつながる生活・都市機能の整備(流通、都市開発、乗換ハブ、各所への移動経路などが整備対象となるようだ)。④ではサイバー空間でのサービス提供を通し「社会生活インフラ×活力インフラ」への事業変革を成し遂げていくとする。特に既存の取組み+αの部分となる③④の取組みを通して「都市型MaaS」という交通変革を興そうと図る。大阪高速電気軌道㈱の河井社長のものと思われる印象的なコメントがある。「大勢のお客様が来て下さる前提で、決まった時刻に決まった場所を走らせるという事業モデルでは、もう持ちません。そこで2021年3月からスマートフォン用アプリ「Osaka MaaS 社会実験版」を使い、生野区や平野区でオンデマンドバスの実証実験を始めました。時間や場所を指定すれば、お一人の利用から小型バスを呼び出すことが出来、アプリ上では経路検索に加え、予約・決済までがシームレスに出来ます。真にお客様に寄り添う交通を目指した逆転の発想により、従来の「利用される交通」から「迎えに行く交通」への変革を実現したいと考えています」。これは中山間や郊外地域で事業を展開する交通事業者ではなく、国内第二の都市圏・大阪の移動を担う大手交通事業者の代表者の言葉だ。「迎えに行く交通」こそは、MaaS時代の交通事業の経営のあり方を根本から再考させる一言と言えるのではないだろうか。そして、もう一つ気になるのは、今後虎の子となるかも知れない可能性を秘めた「デジタルマーケティング事業」の行方だ。「2018-2025年度 中期経営計画」では、概念的な説明はなされているものの、まだ交通との逆相関事業(新規事業)のアイデアが具体化されているとは言い難い。現段階では、鉄道・バス・タクシーやシェアサイクルなどの利用者(≒MaaSアプリ利用者)に、MaaSアプリ上でポイント(Osaka Point)を付与、提携する外部提携店において会員システムをシェアし、2025年度時点では250万人の会員獲得を目指すこと(提携店舗・サービスの拡大)、また「Osaka Point」を仲立ちとしながら外部事業者とのアライアンスの強化、自社販売事業の展開、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を推進(新たなサービスを展開)、デジタルマーケティングプラットフォームを強化、(大阪府民、来訪者などにおける)情報ネットワークとしての機能を高めて行く(サイバー領域での事業拡大)など目指す方向性が示された段階だ。このような状況は、DXやデータの蓄積が漸く始まった現段階において、むしろ自然なことと言えるのかも知れない。Osaka Metro GroupがDXを果たし、アプリにより、今後蓄積される膨大な利用者情報がその行方に大きな影響を与えることだけは確実なようだ。
Osaka Metro 大阪ならではの都市型MaaSを構築 他
4月1日 2025年に大阪・関西万博を控える大阪高速電気軌道(大阪メトロ)の最近の動きをまとめてみた。直近では4月7日に大阪市内の舞洲において、運転手のいない自動運転車両を走行させる実証実験を行っている。実験会場では自動運転の小型バス、配送用の小型車両など19台の車両が用意され、実際の道路と同じように信号機や横断歩道が設置されたコースを「レベル4」で走行させる。同時に会場を走行する複数の車両の位置や車内の情報は、遠隔に置いた監視室から確認することや車両からエラー信号が発せられた際の対応手順などの確認も行っている。また、2022年4月11日には御堂筋線の梅田駅北改札前の案内カウンターの跡地に「Metro Opus 梅田店」をオープンさせる。店舗では、スイーツ等の食品全般とグッズなど、Osaka Metroがセレクトした様々な商品を日替わりで販売する。店舗の隣には冷蔵自販機を併設し、店舗で販売する一部の商品については、店舗の営業時間終了後もキャッシュレスで購入できるようにする。この自販機は、自動で購入者の年齢や性別などの推定属性と購買情報を取得するものだ(個人を特定する情報が記録されたり、属性情報推定後に画像が残ることはない)。同店舗では「マスク対応顔認証決済」(NECの顔認証技術を採用)の実証実験を行う。同店舗は、御堂筋線のなんば駅にも今夏に2号店を開業させる予定だ。2022年3月29日には、既にリリースしているスマートフォン用アプリ「Osaka MaaS 社会実験版」をバージョンアップし、ホーム画面に地下鉄運行情報を表示し、タップすると地下鉄各路線の運行情報、混雑情報、遅延証明書の閲覧が出来るようになった。2022年3月25日からは、Osaka Metro Group内の大阪シティバス㈱にて、大阪府内で初めて路線バスとして燃料電池バスの運行を開始した。大阪市南部エリアを担当する住之江営業所を起点とする系統で運行を行うこととした。2021年3月30日から、大阪高速電気軌道㈱と大阪シティバス㈱は、ファーストワンマイル・ラストワンマイル等の交通課題の解消や、交通の更なる利便性向上を目指し、「オンデマンドバス」の社会実験を大阪市生野区と平野区で開始している。本社会実験は大阪市が募集した「AIオンデマンド交通の社会実験に関する民間事業提案」に対し、Osaka Metro Groupが提案して行ったものだ。一昨年、2020年3月16日には、Osaka Metro Groupが運行する鉄道・BRT・バスで利用できるスマホ用アプリ「Osaka Metro Group 案内アプリ」の配信を開始し、AR(拡張現実)ナビゲーションによる駅出入口への案内や、臨時運行ダイヤにも対応した時刻表ウィジェットの他、多言語(英語、中国語、韓国語に対応)による乗換案内など便利な機能で目的地までの案内をサポートする取り組みを始めた。アプリは無料で利用できるとした。アプリは、その他プッシュ通知に対応した運行情報、経路案内、路線図、天気予報などにも対応させている(同アプリは2022年4月30日を以ってサービス終了となり、一部の機能を「Osaka MaaS 社会実験版」に引き継いでいる)。2019年12月10日~2022年3月31日には、一部の駅(8駅)を対象にOsaka Metro社員を対象とした顔認証によるチケットレス改札の2024年度からの全駅導入を目指し、実証実験を始めている。実験では、改札機に備え付けカメラを設置、事前に登録した顔写真データと照合・承認により改札ゲートの開閉を行うとともに、改札機に備え付けたQRコードリーダーでQRコードを読み取り、事前登録した社員データと照合・承認により改札ゲートを開閉する運用を試している。実験では機能性、利便性やデザインの異なるオムロンソーシアルソリューションズ㈱、㈱高見沢サイバネティックスの試験機についても比較検証している。Osaka Metro Groupの「2018-2025年度 中期経営計画(2020年12月改訂版)」の中期経営計画全体の改訂の骨子を拝見した。今後の経営環境の総括・経営戦略の前提では、すでに織り込んでいる従来からの(経営)環境変化が加速するだけでなく、今回の感染症の影響は人の動きを大きく変え、社会のパラダイムシフトが起きる。事業持続性および成長領域創出の観点から、当社グループの事業活動全体に大きな変革を促すとしている。また中期経営戦略の再構築(取り組みのコンセプト)には、新たな経営環境に適応しながら、20215年度のあるべき姿(目指す姿)を確実に達成するため、経営体質の強化として「やるべきことを徹底して断行」、ならびに、成長戦略見直しのための事業構造改革として「事業多角化の本格的な推進」に徹底的に取り組む。2022年度までに経営全体の本質的な改革を完遂し、経営や事業運営の質の変革を成し遂げるとしている。鉄道事業においては、運営コストの削減や収益向上策(各種イベントの強化、「大阪から元気を創り続けるための」施策と乗車人員の回復策を結び付け、「大阪をもっと元気に(仮称)プロジェクト」などを推進、抜本的な収益向上の実現)を図るとしている。この収益向上策には、沿線地域の魅力の掘り起こし、国内誘客、情報発信から始まり、インバウンド向け情報発信、海外セールス、万博向けMaaSアプリの活用本格化などが計画されている。バス事業に関しては、同じく運営コストの削減と組織改革(管理業務はOsaka Metroに集約、大阪シティバスは運行専門会社に徹すること等)が書かれている。バスの収益向上策としては、沿線の魅力の掘り起こし、貸切バスなど路線バス事業以外の強化、加えてMaaSアプリの本格活用などと共に「オンデマンドバス」の実証実験や、エリア拡充、市内全域への拡充などが挙がっている。(続く)
「大阪・関西万博」を見据えて大阪メトロなどと共同で行う次世代都市交通システムの実証実験で、自動運転バスの走行および遠隔監視業務を実施 他
3月31日 昨日は、最近各地で盛んに実証実験が行われたり、導入が進む「MaaS」(Mobility as a service)において、その決済手段の一つである「Visaタッチ」周辺の話題について書かせていただいた。本日はクレジットカード系タッチ決済以外のQRコード決済と、顔認証決済についてお伝えしたい。まずQRコードからだが、全国の交通事業者の導入事例を俯瞰すると、さらに①「QRコード乗車券方式」と②「QRコードをスマホ上に表示、乗車時にリーダーにかざす方式」に区分することが出来る。①は東武鉄道「TJライナー」(着席整理券確認システムに導入)、ゆいレール(Alipay/QR乗車券)、北九州モノレール(磁気式の切符をQR券に切替え)、JR東日本(高輪ゲートウェイ駅/Suica)、阪神電気鉄道(2020年3月~2021年2月/QRコードを使用した乗車券の実証実験)などで実証・導入が行われている。②は、大阪メトロ(2019年12月10日~2020年9月30日/QRコード改札+顔認証実証実験)、近畿日本鉄道(2022年春~改札機にQRコードリーダー設置)、福岡市地下鉄(2022年3月~Visaタッチを活用した一体型改札機通過に関する実証実験)や南海電鉄が実証を行っている。うち南海電鉄は、2020年12月からVisaタッチ決済とQRコードによる改札機の入出場の実証実験を発表し、2021年4月3日~12月12日まで、同社の16駅32改札に専用改札機を設置している。同時に9時以降に入場可能な「時差通勤応援きっぷ」を発売した。JR東海は、新幹線における訪日外国人向けサービスを2021年春から実施している。(うち、stera transitを導入する事業者は、一部PayPayや、楽天ペイ等でも、QRコードでの運賃決済を可能としている。小田急電鉄は、今年2月22日にEMot等で販売するQRコード付き「デジタル箱根フリーパス(小田急線乗車券付き)」を対象に、小田急線全70駅の有人改札にて専用端末によるQRコードを利用した改札認証を開始すると発表した。利用者には、有人改札付近に設置する専用端末に取得したQRコードを読み込ませ、改札を通過してもらう。近鉄も2021年12月1日に、自動改札機にQRコードリーダーを設置、2020年春からクレジット決済で購入出来るデジタル乗車券の販売を始めると発表している。近鉄が初めに手掛けるのは、近鉄名古屋駅から伊勢志摩方面の観光地などを周遊できるデジタル乗車券で、QRコードリーダーの付いた自動改札機は近鉄名古屋、伊勢市駅、宇治山田駅、五十鈴川駅、鳥羽駅、鵜方駅、賢島(かしこじま)駅の合計7駅に設置する。QRコードによる支払いも、QRコード乗車券方式から、徐々にQRコードをスマホに表示させ、リーダーで読み取らせる方式へ移行しつつある流れが分かる。前述したが「Visaタッチ」の普及に伴い、PayPayなどのQRコード決済ブランドで乗車する方式も増加傾向(クレカタッチ方式+QRコード決済)にあると言えよう。公共交通事業者にとっては、交通系ICカード等が普及したとはいえ、普及率は100%とは言えない。或いは首都圏でも鉄道を利用しない人や海外旅行客など、ICカードを持たない利用者も一定割合存在する。またICカード乗車券を導入していない地域も存在する。その中で一定の利用がある紙の乗車券を廃止し、チャージなどの手間のあるICカードへ完全移行してもらうのは困難であり、ICカード乗車券では自動改札機のコスト削減は可能だが、紙に印刷できるQRコード乗車券よりもコストがかかるようだ。海外では、紙の乗車券の代わりにトークンを利用する事業者も存在するが、トークンの場合、預かり金を徴収し、降車駅で払い戻すか、出口側の改札でトークンを回収し再利用することで、運用上のコスト膨張を抑制している。この点、QRコード乗車券であれば、紙に印刷した乗車券は基本的に使い捨てとし、自動改札機の機械的な可動部を減らすことが出来る。複数のQRコード決済ツールとの連携も可能となるため、海外で普及しているQRコード決済ツールとの連携を図ることで、訪日観光客の利便性向上にも寄与することも出来る。顔認証は、交通機関を利用した際の決済のために、現金やクレジットカード、スマートフォンなどを持ち歩く必要がない。暗証番号の入力やアプリの立ち上げの手間がないため、スムーズに決済を完了させることが出来る。またマスクを着用したまま認証できるシステムも登場している点も技術的に優れたシステムだと評価される。サービスの提供側となる公共交通事業者にとっても、釣銭の用意やクレジットカードやQRコードを読み取る手間がなくなる。さらに改札業務や日々の売上の締めに費やしていた時間を削減し、接客に充てたり、自動改札機数を削減しスペースを有効活用することで、駅などの売上増加が期待できる。利用者にとっては、クレジットカードやアプリの決済時に必要な本人確認用のパスワードの入力が必要なくなるため、パスワード忘れや入力時ののぞき見などのリスクから解放される。また決済時は画面に顔を向けるだけなので、電子マネーの使い方が分からない利用者も、利用しやすいシステムと言える。しかし、一方では、認証端末との距離や設置場所、光の当たり具合などの条件で正確な認証が出来ない場合もある。このため輪郭やパーツ位置に加え赤外線センサーにより立体データとして認証する「3D認証システム(IR方式)」が奨められているという。また、万が一顔認証システムの情報が漏えいした場合、パスワードのように変更が出来ないため、利用者が高いリスクに晒されるとの評価もある。このため、導入企業では情報漏えいを防ぐためにセキュリティソフトを導入したり、セキュリティレベルの高いサービスを利用したりする等の対策が必要とされる。実証実験例では、2021年2月に群馬県前橋市で行われた自動運転バスの実証実験において、運賃決済を見据えた乗降時の顔認証システムの実証が、限られた場所で高速・大容量の第五世代通信規格(5G)を利用する「ローカル5G」も使い行われている。実証実験の際の顔認証では、事前にマイナンバーカードの情報と顔写真の登録が必要とされ、市のホームページからアンドロイドのスマートフォンを使い、専用のアプリで登録を行った。バスの乗降時にはマスクを一時外し、乗降口付近に設置されたタブレットに顔を近づけると、乗客の顔がシステムに認証され、運賃が無料となるとの内容だった。また、2021年9月から千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンにおいて、新交通システムユーカリが丘線とコミュニティバスの複数の交通サービスを非接触でシームレスに利用するための顔認証乗車実証実験が行われている。本実証実験ではパナソニックが提供する顔認証技術とジョルダンが提供する決済・チケット管理システム「JorudanStyle3.1」を用いている。鉄道駅にはパナソニック コネクト社(旧:コネクティッドソリューションズ社)が開発したフラッパーレスでポール型の新デザインを採用した顔認証ポール(ご参考:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2021/09/jn210913-1/jn210913-1.html)を各駅に設置している。東京都も京王バスと共同で、2021年12月15日に新宿駅と都庁を結ぶ自動運転バス(京王バスと都バスが共同運行する「CH01」系統)において、翌年2022年1月から実証実験を行っている。本日実験では、LINEの専用アカウント「TAMa-GO」から顔写真などの登録を行い、乗車時に車内の端末で顔認証を行っている。顔認証時はマスクを外す必要はなくなっているが運賃は無料としている。今のところ実証実験の進み具合としては、顔認証システムだけに閉じた実験と、決済システムと連動させるところまで実証するケースとに分かれるが、「ユーカリが丘版MaaS」のように地域の交通体系を亘る、非接触・非対面での本人確認とチケット確認、乗車管理を実現させたケースは、まだ少ないようにも思える。従来の乗車券・交通系ICカード決済から、クレジットカード系タッチ決済やQRコード決済、顔認証決済への置換えは、すでに交通機関の運賃決済だけでなく、様々な周辺のさまざまな経済活動と一体となったMaaSの実現に不可欠と言える。特に地方の交通事業者にとっては、自社独自の決済システムやアプリ開発はコストがかかり、利用者のアプリのインストール・利用も進みづらいことなども課題とされている。LINEやPayPayなどの決済手段を利用すれば、既に多くの利用者がいるため、インストール数の課題から解放されやすく、開発コストの低減が可能になるのではないかと思う。
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3月30日 交通決済について。まずは簡単に交通系ICカードのお浚いをして見ると、全国で使われているカードは10種類ある。Suica(JR東)、PASMO(㈱パスモ)、manaca(名古屋市交通局、名古屋鉄道など◆)、PiTaPa(スルッとKANSAI◆)、SUGOCA(JR九州◆)、はやかけん(福岡市交通局◆)、ICOCA(JR西◆)、TOICA(JR東海◆)、Kitaca(JR北海道◆)、nimoca(西日本鉄道◆)となる。※◆はモバイル非対応。何れも、全国相互利用サービス対応の交通系電子マネーだ。これらの電子マネーであれば、その1枚で基本的には「対応している全てのエリア」の電車やバスへの乗車、加盟店での支払いに利用することが出来る。原則として各電子マネーのエリア外で使用できるのは、電車・バスの乗車券機能や加盟店での電子マネー機能といったすべての相互利用可能電子マネーに共通の機能となる。*但し、PiTaPaは、PiTaPaエリアでの他の交通系電子マネーによる加盟店利用、PiTaPa以外の加盟店でのPiTaPa支払いとも非対応。チャージに関しても、駅の券売機や加盟店レジなどベーシックなチャージ方法はエリア外でも利用できるケースが大半だが、「オートチャージ含むクレジットチャージのような各電子マネー独自のチャージ方法はエリア外では原則として利用できない」。「ポイントサービスもエリア外での利用はポイント付与の対象とならない」ケースが殆どだという。また、特に注意が必要なのは、交通系電子マネーでは、全国相互利用エリア同士であっても、エリアを跨ぐ利用は原則不可能となっている。PiTaPaの名誉のために?補足すると、PiTaPaは運賃割引サービスも利用でき、提携クレジットカードの優待も豊富なので、近畿エリア在住の方については利用しやすいカードと言える。エリア外での制限が多い交通系ICカードの中で、唯一の例外はモバイルSuicaだ。モバイルSuicaは、ネット経由でチャージが可能なため、エリア外でのオートチャージにも対応している。交通系ICカードの特徴を押さえたところで、最近各地で盛んに実証実験が行われたり、導入が進む「MaaS」(Mobility as a service)において、その決済手段がどのように変化して来ているかを見てみたい。交通系ICカードから移行が考えられるのは「Visaタッチ」と「QRコード」、「顔認証」の3つの決済方法だ。「Visaタッチ」はクレジットカード系のタッチ決済だ。海外の交通機関においては採用例が多いが、日本では交通系ICのFeliCa(ソニーが開発した非接触ICカードのための通信技術)に比べ、決済処理に時間がかかるとされ、これまでクレカ系のタッチ決済の導入は進んでいなかった。「Visaタッチ」の全国の導入事例を見てみると、茨城交通(2020年7月~)や京都丹後鉄道(2020年11月25日~)での導入が早かったようだ。京都丹後鉄道では、日本で初めて距離制運賃の支払いを可能にしている。駅や列車内に設置された読取り端末のVisaタッチリーダーにカードをかざすだけで運賃の支払いが可能となる仕組みを導入している。みちのりホールディングス傘下の茨城交通、福島交通、会津乗合自動車はキャッシュレス決済対応の路線を拡大している。車内ではVisaタッチ決済と共にPayPayなどのQRコード決済を利用できる。茨城交通は、東京駅~ひたちなか市東海村を結ぶ勝田・東海線で導入をはじめ、秋葉原と益子・笠間を結ぶ「関東やきものライナー」にもこの決済方法を導入した。「Visaタッチ」は、上記2社以外でも、大阪国際空港、関西国際空港、神戸空港、JTB提供のC→REX端末を設置する旅館・土産物店、MoT(Mobirity Technorogies)*決済機能付きタブレット搭載車両、やんばる急行、みちのりHD*タブレット端末搭載車両、いわて県北バス、福島交通、会津バス、京福バス、長電バス、北都交通、南海電鉄(2021年4月より実証実験中)など交通各社で採用されている。これまで課題だった改札通過速度も問題ない。車両用電装製造(バスの運賃収受機器や運賃表示器などが主力)の小田原機器によれば、キャッシュレス運賃収受対応タブレット端末「SELF」は、「Visaのタッチ決済」「PayPay」「ALIPAY」「LINE Pay」「楽天ペイ」など多様なキャッシュレス決済に対応し、Wi-Fi環境があればどこにでも使用可能でバス車内だけでなく、販売窓口に設置することも出来る。加えてアプリ搭載・回収により機能追加も可能、他の車載機と連動しないので、単独での導入もしやすい。これら車載機の中に導入されている決済プラットフォームは、三井住友の「stera transit」だ。乗客の手持ちのカード(クレジット、デビット、プリペイド)やスマートフォンで電車やバスの乗車を可能にする。このような決済プラットフォームの導入により、これまで観光地の交通機関利用時によくある決済時の課題、例えば海外から訪れる旅行客が改札やバス停、車内などで留まってしまったり、言語が異なる観光客への(操作)負担をかけてしまう、或いは現金で切符を購入してもらわざるを得なかったなど、観光客が本国で利用しているカードやスマホで決済可能、或いは係員とのコミュニケーション(機器の操作説明など)が不要となる利点がある。また、駅員やバス乗務員等の業務する現場では、現金や切符を取扱う設備(券売機や乗越精算機など)コストや独自のICカードの原版コストやサーバコストが削減出来、シンクライアントシステムのため、改札機等の単価、現金を取り扱いに関するコスト(運搬、計算、管理等)も削減可能だ。MaaS時代の核ともいえる、乗降データの取得やクレジットカード等の消費データとも掛け合わせたデータ解析が可能になる(これらは三井住友カードの場合は、別に分析サポートサービスが用意されている)。結果、インバウンドの積極的な取り込みがし易くなり、交通系ICカードと比較し、導入コストも安価となる。今後、交通系ICカードの導入が難しかった地方交通にも、キャッシュレス決済の導入が進む可能性がある。自社の沿線に天橋立や由良川橋梁などの観光資産を擁する京都丹後鉄道や、地元ターミナル駅と羽田や成田、茨城空港を接続するエアポートライナーに注力、笠間や益子などの伝統工芸品の産地も擁する茨城交通の導入が早かったのも頷くことが出来る。(続く)
自動運転車へのサイバー攻撃、米国の研究チームが実証 レーザー銃で「偽物の車が前から突っ込んでくる」錯覚攻撃 他
3月29日 昨日3月28日より、医療業界やワクチン接種に取り組む自治体、サービス運営が困難な企業などの支援を目的とした車両開発・車両提供を行う共同事業体「メモラボ」(MEDICAL MOBILITY LAB.)を運営するキャンピングカー株式会社に、在宅にて医療的なケアが必要な子ども「医ケア児」の災害避難手段・一時避難場所としてキャンピングカーを活用するアシストネットワーク事業「ひなんピング」を運営する特定非営利活動法人輝くママ支援ネットワーク「ぱらママ」が事業参画した。キャンピングカー株式会社(代表取締役 頼定 誠氏)は、キャンピングカーレンタル事業「JAPAN C.R.C」やアウトドアメディア事業「JAPAN C.C.N」「くるまの旅(https://kuruma-tabinavi.com/)」や農業IoT事業「ファインファームSelect」「岡山晴れ娘」、ペット事業「ワンダホー」、防災・災害対策事業「キャンピングカー防災プラットフォーム(https://japan-crc.com/bosai/)」、防犯事業「東京360°」などを運営している。また、女性の社会参画を支援している特定非営利活動法人輝くママ支援ネットワーク「ぱらママ」(代表理事 藤井 弥生氏)は、災害時の要支援者となる「医療的ケアが必要な子ども」のいる家族の一時避難場所としてのキャンピングカーと避難場所を必要とする家族のマッチングシステムを構築している。*「医療的ケアが必要な子ども」とは、生きるため日常的な医療ケアと医療機器(気管切開部の管理、人工呼吸器の管理、たんの吸引、在宅酸素療法など)が必要な子どものことを言う。同団体は2012年8月に設立され、これまで移動託児カー「ベビースポット」や「ママの働き方研究所」などの活動を行ってきた。キャンピングカーレンタル事業と女性の社会参画を支援するNPOの接点となった「ひなんピング」とは、どのような取組みなのだろうか。近年、日本列島で多発する激甚災害。東日本大震災や平成28年熊本地震、平成28年6月6日~7月15日までの豪雨による災害(熊本県・宮崎県)、平成28年8月16日~9月1日までの暴風雨および豪雨による災害(北海道・岩手県)等、過去5年でも24件が指定されている(参考:https://www.bousai.go.jp/taisaku/gekijinhukko/list.html)。被災地の「医療的ケアが必要な子ども」達はどのように保護されて来たのだろうか。厚生労働省が平成2年1月15日の「第17回医療計画の見直し等に関する検討会」の資料「医療的ケア児等の支援に係る施策の動向」によれば、全国の医療的ケア児(在宅)は約2.0万人と推計されている。内閣府の防災情報のページには、高齢者、障害者等の非難に関する作業グループ 第1回で配布された内閣府説明資料が掲載されている。このうち「高齢者、障害者等の非難に関する作業グループ会合における内閣府防災説明資料」という資料がある(参考:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/hinan/1/pdf/setumei.pdf)。このうち防災基本計画(令和元年5月(抄))は、市町村は市町村地域防災計画において避難行動要支援者を適切に避難誘導し、安否確認等を行うための措置について定め、避難行動要支援者の名簿の作成するものとしており定期的な更新や庁舎の被災等の事態が生じた際にも名簿の活用に支障が生じないよう名簿情報の適切な管理に努めるものとしている。名簿は避難支援等に携わる関係者、市町村地域防災計画に定めた消防機関、都道府県警察、民生委員・児童委員、社会福祉協議会、自主防災組織とうに対して提供され、多様な主体の協力を得ながら、避難行動要支援者に対する情報伝達体制の整備や、避難支援・安否確認体制の整備、避難訓練の実施等を一層図るものとしている。市町村は安全確認後に避難行動要支援者を円滑に避難場所から指定避難所へ移送するため、運送事業者等の協力を得ながら、移送先および移送方法について予め定めるよう務めるものとしている。しかし、公的避難所が利用できるのは、要支援者1名に対し介護者は1名と限定されており、家族で避難することは出来ず、また免疫力の低い「医ケア児」にとって、避難先で「3密回避できる環境」は必須条件となるが、これが得にくい点や、環境上の変化に弱い子供も多いため、避難所では精神衛生上の配慮も必要になるなど課題は山積しているようだ。また、命に直結する医療機器に必要な電源の確保が最も重要な課題となり、在宅避難時に有効な発電機や蓄電池を備えておくことが推奨されているものの、機器持ち運びの利便性や燃料、購入費用やメンテナンスなどの課題も生じているとされる。「ひなんピング」は、避難手段、また一時避難場所として、100Vの電源を備えたキャンピングカーの活用を想定している。さらに非難を希望する医ケア児家族と衛生面やプライバシーなどの環境と、電源確保が可能なキャンピングカーをマッチングするシステムを構築している(システムの構築には、岡山大学、キャンピングカー事業者、医師・看護師ネットワークなども参画)。事前に登録した個別避難計画書「イッツミー」を医師・看護師ネットワークと連携することで、医療従事者のサポートを受けることも可能としている。キャンピングカーには車載したサブバッテリーで100V電源が使用可能となり、医療機器(人工呼吸器や吸引機など)や冷暖房器具を稼働させることが出来る。また、冷蔵庫、給排水設備、ガスコンロ、大人5人分のベッドが確保されている。「メモラボ」は「ひなんピング」が行ってきた蓄電池や発電機の比較検証、医ケア児向け避難訓練の知見を活かし、医療機器の長時間使用に耐え得る「災害・医療特化型ポータブルバッテリー」の開発も視野に入れる。また、それぞれの事業は運用フェーズで車両と利用者の位置情報の取得が最適な車両配備と緊急出動時の迅速な支援の鍵となり、より確実な支援のためには電源使用率やバッテリー残量のデータがリアルタイムで収集できる必要があることから、車両のステータスを常時監視するシステム(GPSアプリケーション)の構築(共同開発)も考慮している。「ぱらママ」では、日常から自助の意識を醸成するため、各家庭の主体的な取り組みのきっかけとして、楽しく防災キャンプ「ひなんピング」などのイベントなども開催している。イベントには、防災士や看護師などの専門家が参加し、参加者の疑問や不安に応えつつ、防災グッズを試したり、非常食の試食なども行っている。看護師からはお奨めの医商品グッズなどの紹介もある。これらの取組みは医療MaaSの、氷山の一角とも言えるが、正式に各地の自治体などの採用段階に至れば、被災時に支援を必要とする「医ケア児」やご家族にとって、現実的かつ心強い支援策となることは間違いない。
会員登録数、目標の5千人を達成 沖縄MaaS実証実験の最終報告 他
3月28日 3/25に沖縄県の沖縄MaaS事業連携体(沖縄都市モノレール、石垣市・浦添市、宮古島市、今帰仁村、伊江村、座間味村、竹富町、ゼンリン、TIS、琉球銀行)は、これまで行ってきた「沖縄MaaS」の実証実験が本年度末で終了するため、実験結果についての報告会を沖縄モノレール本社で行った。同実験は、2020年12月23日に第一フェーズとして一部の交通事業者と観光施設の電子チケットを取り扱う形で始まり、2021年3月17日に第二フェーズとして電子チケットの取り扱いを沖縄県内全域の交通事業者、観光施設に拡大、検索や地図サービスなどを加え、本格的なサービスの社会実装を目指し取組みを継続してきた。2021年9月16日に発表された「沖縄MaaSの実証実験期間の延長について」により、実験期限を2021年9月30日までに設定していたが、これを2022年3月31日まで延長している。延長の理由については、新型コロナウイルスの検銭拡大に伴い、沖縄県に緊急事態宣言が発出されたため、離島の事業者を中心に計画通り実証実験が行われておらず、本格的な実施に向けた判断が正しく出来ないためとしている。この延長に際して、日付指定チケットを除く購入済みの電子チケットの有効期限も、2022年3月31日まで延長とした。また、延長期間となった2021年10月1日以降に利用可能な電子チケットは、事前の9月28日から発売を開始したり、沖縄MaaSのWebサービスのチケット購入画面にチュートリアル画面を追加したり、観光エリアから希望するチケットを選択機能や、目的地タグ(訪問したい施設名称の一覧)から関連チケットを購入できる機能を追加する等、或いは2021年11月10日から、MaaSの認知度の向上を目指し「うちなーぐるっとスタンプラリー」を開催、県内の48箇所に設置したスポットで電子スタンプを集め応募すると抽選で商品が当たるなど、関係者の地道な努力の積み重ねが功を奏し、最終的な結果として、会員登録数は当初目標としていた5千人を超え、6千人を獲得することが出来た。本実証実験は、県全域のモノレール、路線バス、オンデマンドバス、船舶等の交通手段と商業、観光施設などの交通分野以外との連携、さらに他のMaaSアプリなど幅広い連携をAPI/オープンデータ化により実現する「観光型MaaSの提供」でもあり、沖縄県における交通、観光の課題を解決し、MaaSの「継続稼働」や「地域住民への展開」を見据え、有用性の検証を検証することが目的とされていた。実証実験のオブザーバには、沖縄県や内閣府沖縄総合事務局運輸部なども参画していた。実験当初にMaaSの提供により解決したい地域の課題として挙げられていた ①バスの輸送人員が全国平均よりも大幅に減っており、地域の足としてのバス路線の維持が困難である点、②特定の有名な観光地、観光施設に観光客が偏っており、他の魅力あるスポットへの送客が十分でない点、③観光産業に対する住民の期待は大きいものの、マイナスの影響のトップが「バスや自家用車の混雑等により交通が不便になる」となっており、「レンタカーによる事故」や「道路の渋滞」、「違法駐車」などがあるなどの点、④沖縄を訪れる観光客側からは、二次交通の多くは現金での利用(決済)が殆どであり、行き先や系統も分かりづらい点などについても、今回の実証実験を通して解決の糸口がつかめていれば尚のことである。ちなみに国交省から発表された「令和3年度 日本版MaaS推進・支援事業 12事業について」によると、これらの課題に対し「沖縄スマートプロジェクト(沖縄県によるMaaSの社会実装)」では、これらの課題は「様々な交通モードを実績のあるMaaSアプリ「my route」で繋げることや、①'AIオンデマンド交通走行による二次交通へのアクセスを向上させることなど、シームレスな移動の実現と③'交通分散を図り、地域課題を解決するとしており、④'また非接触、キャッシュレス手続きなど感染症対策による利用者の安心感の醸成やモーダルシフト、EV利用などカーボンニュートラルの取組を行うことで持続可能なモデルを構築する。②'さらにデジタルの特性を活かし、得られた情報を交通事業及び交通以外の行動変容に利活用すると共にタイムリー且つ効果的な情報発信をしていくことで周遊性の向上及び地域経済の活性化を促進する」としており、事業自体や参画する自治体などは「沖縄MaaS」と異なるようだが、MaaSを社会実装する起点となる「県の課題」には持続的に取組んでいく方向性が見える。さらに「令和3年度~」には、当初課題とされていなかった「感染症対策による利用者の安心感の醸成、モーダルシフト、EV利用などカーボンニュートラルの取組」といった新たな視点も組み込まれるようになった。そして新たな評価指標は、サイトアクセス数、各モビリティの乗車率、各デジタルチケット販売枚数、アプリ経由の予約数、アプリ利用満足度、周遊性・滞在時間の拡大した結果、サービスを追加した割合、MaaSをきっかけに公共交通を選択した割合などが設定されることとなった。地元への経済効果に対する評価も、むろん大切だが欲を言えば、観光型MaaSを導入する傍らMaaS本来の使命とも言える地元の交通弱者への配慮などの指標が付け加わると、なお良いのかもしれない。