エントリー - h.shiba

日本の観光再生宣言を発表、観光振興団体の最大手・日観振、旅行再生のカギはMaaSとワーケーション 他

3月4日 日本の国内旅行の消費額は、2020年は前年比 54.9%減の9兆8982億円となった(観光庁「旅行・観光消費動向調査2020年年間値(速報)」2021年2月17日)。同庁はまたGoToトラベル事業の利用実績等についても発表した(同年2月10日)。利用人泊数:少なくとも8781万人泊、支援額は5399億円だった(*推計値を含む速報値)。コロナ禍により、甚大な被害を受けた。現状を受け日本観光振興協会は「日本の観光再生宣言」を発表した。感染拡大防止と経済活動の両立が求められている。業界にとって「経済活動」とは、すなわち「国内旅行の再生、国際交流の再開」だ。具体的な道筋となるのが、①「ワーケーション、分散旅行などニューノーマルへの対応」、②「MaaS、DXなどデジタル化推進」、③「人材確保・育成など観光事業継承」だ。道筋のうち ①の主体者は利用者、②③は協会自身だ。注目される「ワーケーション」とは何か?「ワーク」と「バケーション」を合わせた造語であり、感染防止、デジタルトランスフォーメーション(DX)、働き改革、テレワーク、MaaSなどの就業環境変化を踏まえた新たなワークスタイルのことだ。深読みするなら、そこに若干の不動産業界や自治体の都合が加味された、空き家・空き地・遊休不動産を利活用した移住・定住を含む関係人口の創出および企業誘致ということになるかも知れない。東急の森田創氏(同交通インフラ事業部MaaS戦略担当課長/「Izuko」実行委員長)も、伊豆下田にある「ワーケーション」のショーケースともいえる「LivingAnywhere Commons 伊豆下田」にも足を運んでいる。しかしながら、観光業界がワーケーションに求める理想とオールド・エコノミーの象徴ともいえる、都心オフィスへの通勤スタイルとの径庭は思いのほか大きい。何より地方や近郊、或いはリゾートに「職場を移す」ハードルは、既存の通勤スタイルに慣れ親しんだミドルやシニア層ほど高いのではないか。アフターコロナの世界で「ワーケーション」を一過性でもお仕着せでもない就業環境の「ニューノーマル」として育てるには、企業の共感を得ること、ミドル・シニアを含む全就業層の取込み、溶け込みやすい地元、良い休暇体験(行・遊・食・泊)が必要だ。本業から少し幅は広がるが、ホスピタリティを必要とするこのコーディネータ役こそが、まさに「おもてなし」のプロフェッショナル・観光業界の仕事だ。

自動運転&自動車いす……茨城・つくば、スマートシティの実証実験 他

3月3日 つくば市のスマートシティ協議会(2021年3月1日現在:47機関)が、自動運転車とパーソナルモビリティを連携させ高齢者などを病院までスムーズに移動させる実証実験を、2/27から始めた。同市では「安心・安全・快適な移動を実現するスマートシティ「つくばモデル」構築プロジェクト(令和2年~4年)」が進む。目標は高齢者や障害者など誰もが安心・安全・快適に移動できるまちだ。自動車の交通分担率が6割である同市では、中心部の渋滞防止や民間路線バスの補完として「つくバス」「つくタク」を整備、バス停圏域300mにおいて高齢者人口の58%をカバーするものの「つくタク」の収支率割合は6.8%と低く、持続可能な地域交通網の構築が課題となっている。また高齢者等の交通弱者の移動手段確保や外出促進も必要とされている。同市の事業の取り組みを俯瞰すると、顔認証によるバス乗降車に係る実証実験(国交省「新モビリティサービス推進事業」令和6年採択の一環)や、バイタルデータを活用した交通移動弱者のための安全なパーソナルモビリティの実証実験(国交省「新モビリティサービス推進事業」令和5年採択)、歩行者信号情報システムと電動車いすの連携に関する実証実験(国交省「新モビリティサービス推進事業」令和5年採択)などがある。令和2年度の取り組み予定としては、顔認証によるバス乗車と移動先サービスを統合する実証実験、パーソナルデータを活用した安全なパーソナルモビリティの屋内外走行実証実験、位置情報、自動運転車、パーソナルモビリティを活用した公道走行実証実験などだ。今回の実験では、五十嵐 立青(たつお)市長自らが参加し、研究学園地区の公園から筑波大学付属病院まで自動運転タクシーで移動後、病院玄関で遠隔操作されたパーソナルモビリティに乗り継ぎ病院受付まで移動し、モビリティの組合せによりラストワンマイルを含む最終目的地までの移動を検証した。人口245,000人(2021年1月1日現在)、在留外国人10,000人を擁するつくば市には、150の研究機関と、20,000人の研究従事者(うち8,000人は博士号取得者)が住まう「科学のまち」だ。研究学園都市の建設から半世紀が経過、市内のインフラが一斉に老朽化し始める。「市民」にとっての「豊かさ」とは何かをもう一度考える時機が訪れている。「科学技術都市つくばのまちづくり」(2021年1月27日)にある「つくばスマートシティ倫理原則」にも、世界のあしたが見えるまちへの想いが滲む。

旅行業界と貸切バスに待つ「冬眠明け後」の世界 「GoTo」や「MaaS」を救世主と呼べない理由 他

3月2日 首都圏の緊急事態宣言は予定通り解除されるか?回復を図りつつ、感染の再拡大はなんとしても抑制したい日本経済。頼みの綱の「GoToトラベル」は立ち消え、再開を待つ旅行業界。最大手のJTBですら昨年11月にグループ全体の2割に当たる6500人を削減、115店舗を閉鎖した。近畿日本ツーリストも同時期に個人向け店舗を2022年3月までに1/3に削減するとしている。主な原因は旅行予約サイトへの顧客流出と新型コロナ感染拡大による観光やビジネス利用の激減と言われている。旅行とは切っても切れない貸切バス業界においても、その影響は甚大で事業者の多くは助成金を受けて従業員を休業、保有している車両を売却するなどの対処を迫られた。これらの業界は、コロナ禍以前より続く、団体旅行需要の低下やマイカーやレンタカーの普及、そして予約のIoT化などに拠る旅行需要の変化の波に晒されて来たが、抜本的な体質改善に至らなかったとも言える。一方「ダイナミック・パッケージ」(交通機関+宿泊の組合せパッケージで予約する形態)変化の波を捉えた「じゃらんnet」「楽天トラベル」などは隆盛を誇る。旅行商品自体にも「テーマ性や体験型」といった新たなニーズが生まれた。コロナ禍を経て終焉を迎えるのは、旅行業界でもバス業界でもない。昭和型の旅行概念に捉われたサービス手法だ。現在フォロワーとなる各社は自社資源と自社に有利な市場環境を採掘し直そう。これまで営んできた膨大な観光地や宿泊施設情報・地方交通機関の情報(データ)は、AIに理解される形でデジタル化出来れば、MaaS市場におけるまたとない資産に転化できる。人材市場には商品の扱いに長けた旅行取扱管理者がいる。急ぎIoT化を図るためには、システム構築から着手したのではオリンピックや緊急事態宣言解除後の移動・旅行需要の回復期に間に合わない。利用料を仕入代と割り切り、MaaSプラットフォーム各社と個別契約し、短期でプラットフォーム上におけるコンテンツ・アピールを実現できる態勢を整えてはいかがか。画一的となりがちなプラットフォーム運営者は、差別化のためフォロワー各社が磨いて来た鉄板コンテンツを待ち焦がれているに違いない。

ユニバーサル社会におけるMaaSの活用方策について 他

3月1日 国交省が2月に発表した「ユニバーサル社会におけるMaaS活用方策について」。障害者がそうでない人と同等に生活するノーマライゼーションの理念に基づき、車いすをお使いの方、視覚や聴覚に障害をお持ちの方の「移動」について多様な話し合いや取り組みがなされている。首都圏の鉄道各社などのウェブサイトを拝見すると、東京メトロはバリアフリー(以下「BF」)ページが設けられ、前述の障害をお持ちの方以外にも、病気やお怪我、乳幼児を同伴する方、妊娠中の方向けの情報も掲出されている。また身体障害者補助犬、エレベーター運転停止案内、BF設備の設置状況、主なBF設備などの情報も掲載されている。JR東日本は同様の情報の他、障害者割引制度のご案内などの情報もまとめられている。東急電鉄では「ハンドル型電動車いすのご利用案内」ページが設けられ「ご利用になる前に必ずお読みください」やハンドル型電動車いすの(各線各駅の)対応状況などがまとめられている。次世代電動車いすメーカー「WHILL」のサイトにも「公共交通機関での利用」ページがあるが、今のところ情報は少なめだ。国交省では、2018年4月に「ハンドル型電動車いす」で鉄道を利用する際の要件を大幅に緩和した経緯がある。『補装具費支給制度、介護保険制度により「ハンドル型電動車いす」を給付または貸与された人』となっていた人的要件の廃止し、デッキ付き車両に乗車する場合の従来の7つの構造要件が、基本寸法と回転性能だけに緩和した。京浜急行は、2020年11月に横須賀市で Universal MaaSの実証をANAや同市、横浜国大などと実施した。サイトのBFページには、補助犬やハンドル型電動車いす利用について、また「移動等円滑化取組計画書・報告書」、『東京都「鉄道駅バリアフリーに関する優先整備の考え方」に基づく整備計画について』などの情報と共に、各駅のBF対応表を分かりやすいマークで一覧表示している。各社Webサイトには、継続したバリアフリーへの取り組みの成果として必要な「情報」が集まっている。国交省の資料はこれらの情報の「活用」を図るため、現状と課題が「①情報の連携」「②予約・決済の連携」「③サービスの連携」の順にまとめられている。①では各所での技術的データ連携や情報公開の範囲、更新(データ更新と更新方法)、②では障害者割引の適用に必要な個人情報の登録・確認手段、複数の交通手段を跨ぐ障害者割引の導入、③では利用者の登録・確認手段、事業者間での利用者情報の連携、その際の個人情報の保護などと、これらに伴うコストの延べ方や連携を優先するエリアなどが今後の課題とされているようだ。

完全自動運転は「万能薬」か 高齢化社会がもたらす移動問題を考える 他

2月26日 免許返納による社会的な経済への影響について考えた見た。昨今、国内で急速に進む公共交通のオンデマンド化や自動運転化により、モータリゼーションと言われた時代、一般家庭に必要とされて来た自家用車の免許返納が進むと、国や自治体は自動車税の税収が減り、免許の取得や更新などにかかる手数料、違反の際の過料、高速道路の利用料などは減少する。民間企業では自動車保険や月極などの駐車場市場、自動車関連用品メーカーや販売店市場、燃料市場も縮小する。一般家庭においては、自家用車の維持費となっていた、自動車税や駐車場代、車検代含む車両の整備コスト、オイル交換代、燃料代、自動車保険などの費用負担がなくなる。代わりに公共交通へ支払う運賃やMaaS関連サービスの利用費、手軽に使えるカーシェア、シェアサイクルなどの利用費や電動キックボード、電動車いすなどの購入や維持費が発生する、場合によっては買い物や病院などの施設に近い、都心部或いは郊外などへの移住なども考慮する必要が出て来る。西日本新聞によると、JA共済の試算では、自家用車の年間維持費は軽自動車は約38万円、コンパクトカーが約44万円、Lクラスミニバンが約50万円だそうだ。警視庁の「運転免許統計」を拝見すると、2019年の返納者は60万1022人だった。家庭経済の中で、免許返納により生まれたキャッシュフローの主だった使い道、交通事業者、通信事業者、MaaS関連サービス事業者、ラストワンマイルを補うモビリティ関連事業者などだろうか。公共交通維持の観点から、単純計算で恐縮だが、最低でも年間 約2280億円の予算は、各所喉から手が出るほど必要だが、ここは我慢のしどころだ。利用者がスマホを使えば、通信事業者とMaaSサービス事業者が潤い、MaaSサービスが定着し利用が増えれば、次は交通事業者やラストワンマイルのモビリティ事業者が潤う。移動サービスが社会の活性化につながれば、他業種である観光業や宿泊業、飲食業や小売業などにも恩恵は波及する。MaaS経済は「我田引水経済」ではなく、互いが「風が吹けば桶屋が儲かる」ということを承知の上で、社会に行き渡る効果をじっくりと育てたい。

オンデマンドバス運行MaaS「SWAT Mobility」にグローバル・ブレインが出資、期待高まる貨客混載の可能性 他

2月25日 2/8 スマートモビリティソリューション(デマンドレスポンス・ライドシェアリング)のSWAT Mobility Japan(株)(本社/シンガポール)は、グローバル・ブレイン(株)が運営するグローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合をリード投資家として、第三者割当増資の実施を公表した。2016年に設立された同社のソリューションは住友商事、トヨタ自動車、ニューサウスウェールズ州交通局(デジタル決済プラットフォーム)、セムコープマリンなどアジア太平洋地域の顧客に利用されている。同社は、これまでもオーストラリア(オンデマンド公共バスにコロナ感染拡大防止対策)、インドネシア(大手民間輸送事業者立ち上げ)、日本、フィリピン(医療従事者に需要に応じた通勤輸送)、タイ(医療従事者輸送)、ベトナム(工業団地向けの従業員輸送ソリューション)の7つの市場に参入し、数々の実績を残し、2020年には ASEAN Business Awards の「カントリースター・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。日本においては、2020年7月にJ:COM従業員向けのオンデマンド作業輸送(東京都練馬区・大阪府堺市)を開始している。実験では、全国約4,500台の営業車を使用、複数の営業社員が効率のよい「相乗り」を行い、生産性向上を目指した。また、同年11月には新潟市下町において、新潟運輸(株)や日本ユニシス(株)が実施したオンデマンドバスの実証実験にも、配車アプリ「SWAT JP」を提供している。また、2021年1月には WILLERS PTE. LTD.(WILLERのシンガポール国内のグループ会社) とアジア太平洋地域の輸送サービスの課題に取り組むため、MaaSプラットフォームの使用を中心とし、需要対応機能(オンデマンド機能)を備えたコミュニティ中心の共有モビリティサービスを共同で開発することを発表した。日本においても、ASEAN諸国においても、オンデマンドやライドシェアに対する需要は急速に拡大、同ソリューションの領域に対する需要も引き続き高まってゆくものと思われる。

自動運転車のデータ収集からマネタイズまで! 他

2月24日 日本における自動運転の社会実装について、今後のポイントは「蓄積データや企業が持つ特許の流通とマネタイズだ」と漸く言える段階となって来たように思う。令和2年度3月19日 国交省の「MaaS関連データの連携に関するガイドライン Ver.1.0」を思い出す。ガイドラインには、MaaSにおけるデータ連携イメージが図示されていた。データを生成するのは、主に公共交通事業者、生活・観光サービス事業者、道路・インフラ事業者、自治体、自動車メーカー、決済事業者などである。そして階層の反対に位置するのは利用者である。両者の中間にはデータ利用者とMaaSプラットフォーム(*以下PF)が位置する。PF自体はまた別のPFと連携するという構造もみて取れる。タクシー事業者が車両に広告用モニターを搭載し、広告配信会社から収益を得る仕組みを構築してから久しい。データ生成者となる全ての事業者は、広告収入に拘ることなく、自社の車両などデータ生成媒体から発生する「自社ならではのデータの資産性」に着目し、その流通に積極的に取り組むべきだ。もとよりMaaSは、関わる全ての事業者が、互いのデータを提供したり利用したりしながら、利用者の利便性に貢献することが大前提だ。互いのデータを誰かが必要とする。地方バス路線のトンネルや橋梁データは、自治体や道路会社が行う構造物の管理や整備、災害時には自衛隊や消防庁に詳細な天候や地図情報等が必要となる。観光客が初めての雪道を走るには、地元の路面の最新データが必要だ。都心の通勤電車の乗客の属性データは広告会社が必要とするだろう。また、これまで実証を重ね技術の礎を築いてきた産学官や地元の各種コミュニティーは得たノウハウを「特許化」し、追従する自治体の早期導入を促すために、特許を流通させ、初期コストを軽減させたり、継続的な収益の確保、今後地元に実装される公共交通機関の自動運転化やMaaS関連サービスの運用コストの削減にも取り組むべき時期だ。データ利用者やプラットフォーマーは、利用者が収集しきれないデータや技術、権利関係を発掘・可視化させ、利用者が情報を自由に俯瞰しながら自社に何が必要なのかを提示(提案)した上で技術、データ、権利などを、短時間で流通できる能力も求められる。技術と権利の流通・資産化が出来てこそ、アップデートされる交通体系を持続可能なものとし、都市部も地方も赤字路線の廃止に歯止めをかけることができるのではないか。