3月11日 昨日の続きとなるが、令和4年3月4日に警察庁交通局より策定された「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」の内容について説明して行きたいと思う。ガイドラインは趣旨を除く9項目で構成され、2.基本的制度、3.実施主体の基本的な責務、4.公道実証実験の内容等に即した安全確保措置、5.テストドライバーの要件、6.テストドライバーに関連する自動走行システムの要件、7.公道実証実験中の実験車両に係る各種データ等の記録・保存、8.交通事故の場合の措置、9.賠償能力の確保、10.関係機関に対する事前連絡などが項目となっている。昨日4.までの詳細を書かせていただいたので、本日は5.~の内容となる。5.は、テストドライバーの要件についてだが、ここでは免許の保持、道交法や関係法令における運転者の義務を負うこと、仮に交通事故または交通違反が発生した場合には、テストドライバーが運転者としての責任を負うとの認識を持つこと、実施主体は実験施設等における確認後、当分の間テストドライバーについて、相当の運転経験があり、運転技術が優れていること、実験車両の自動走行システムの仕組みや特性を十分に理解していること、実験の実施前に実験施設等において、自ら実験車両の自動走行システムを用いて運転、緊急時の操作に習熟していることなどを求めるとともに、この要件を満たさない者をテストドライバーとする場合等についても補足している。テストドライバーは自動走行システムを用い走行している間は、必ずしもハンドル等の操作装置を把持する必要はないが、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視し、緊急時に直ちに必要な操作を行う必要があるとしている一方、見通しの悪い場所、交通量が多い場所等、緊急時の操作を行う蓋然性が高い状況では、操作装置を把持し、または瞬時に把持できるよう手を操作装置の至近距離の位置に保つべき、など細かな要求もある。6.はテストドライバーに関連する自動走行システムの要件だが、先にも述べたように、テストドライバーが緊急時に安全を確保するために必要な操作を行うことが出来るものである必要が、第一に要求されている。また自動走行システムは、自動走行を開始または終了する場合、警報音を発するなどして、テストドライバーにその旨を報せ、テストドライバーとの間における実験車両の操作権限の委譲が適切に行われること、特にテストドライバーとしての要件を満たさない者が、テストドライバーを務める場合には、自動走行システムが機の限界達し、もしくは間もなく達しようとすることを検知したとき、または当該システムの故障を検知した時などにおいて、十分な余裕を持って、テストドライバーに操作を要請し、テストドライバーが円滑に操作を行うことが出来るものとすべき等、未熟なテストドライバーを保護しようとする反面、ガイドラインによる要求のハードルが高くなる箇所も見受けられる。また、サイバーセキュリティ基本法等を踏まえ、「適切なサイバーセキュリティの確保」に努めるべきなど、詳細な要求に踏み込まない箇所も見受けられる。7.は実施主体が公道実証実験中に発生した交通事故または交通違反の事後検証を十分に行うことが出来るように、実験車両に車両周辺の状況や車両状態情報の記録を行うドライブレコーダーやイベントデータレコーダー等を搭載すること、公道実証実験中の実験車両に係るセンサ等により、収集した車両状態を含む各種データ、センサの作動状況等について、交通事故または交通違反が発生した場合の事後検証に利用することが可能な方法により、適切に記録・保存することなどを勧めたものだ。8.は交通事故の場合の措置についてとなる。事故が発生した場合、テストドライバーは、道路交通法72条の規定に基づき、直ちに運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど、必要な措置を講じ、警察官に当該交通事故の状況等を報告する必要を述べている。また、交通事故が自動走行システムの不具合や当該システムへの過信を原因として発生した場合には、実施主体は、当該交通事故の原因について調査した上で、再発防止策を講ずるまでの間、同種の公道実証実験を控えるべきとするものだ。これまで各地で起こった実証実験中の事故についても、このガイドラインに従い、長期に亘る実験の休止を余儀なくされているケースも散見される。事故による関係者への影響が大きな箇所でもあるが、真摯に原因究明を行い、実証実験を再開させた事例もあることを申し添えたい。9.は、実施主体は自動車損害賠償責任保険に加え、任意保険などに加入するなどして、適切な賠償能力を確保すべきことを示している。2022年2月4日には、損害保険ジャパン㈱、㈱ティアフォー、アイサンテクノロジー㈱の3社が、国内初とする、レベル4自動運転サービス向け「自動運転システム提供者専用保険」の開発を発表している。これは、自動運転導入事業者が事業に活用する自動運転車に対して、自動運転システム提供者が保険を付保する契約方式となる。また遡ると、2017年12月20日には、三井住友海上火災保険㈱、あいおいニッセイ同和損害保険㈱、㈱インターリスク総研が、「自動走行実証実験総合保障プラン」(道の駅版)の販売開始などを発表している。10.は、実施主体は実証車両および自動走行システムの機能、実施場所における交通事故や交通渋滞の状況、道路上の工事の予定、道路環境・道路構造等を踏まえた助言を受けるため、十分な時間的な余裕を持って、実施場所を管轄する警察、道路管理者ならびに地方運輸局(支局を含む)および沖縄総合事務局に対し、当該公道実証実験の計画(実施期間、実施場所、実施体制、実験車両及び、自動走行システムの機能、安全確保措置の内容等)について事前に連絡すべきことを述べたものだ。今後、国内で行われる自動運転「レベル4」の公道実証実験において、本ガイドラインが示された意義は非常に大きい。ゼロからスタートし、取りまとめに奔走したすべての関係者の労をねぎらうとともに、本ガイドラインが公道実証実験における実施主体の安全確保策の創意工夫を促進させ、核心となる「レベル4」の発展の礎となることを願って止まない。*出典:警察庁ウェブサイト:https://www.npa.go.jp/laws/notification/guideline_220304.pdf
自動運転「レベル4」の公道実証実験ガイドライン 警察庁が策定 他
3月10日 令和4年3月4日に警察庁交通局より「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」の策定についてとの通達が各都道府県警察の長宛に出された。参考送付先としては、庁内各局部課長、各附属機関の長とされた。国内において近年、レベル4の実現に向け、公道を使用した実証実験が各地で盛んに行われていることが背景となっている。諸外国との競争上、或いは日本市場への参入を計画する自動運転技術に関係する関係各方面が、待ちに待ったガイドラインとも言える。日本では「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6月30日閣議決定)において、レベル4のまでの技術開発を目指し、適切に実証実験を行い、その効果を検証していくことが必要、かつレベル4を見据えた安全性に関するデータ収集等に必要な公道実証実験を積極的かつ安全に行うための環境を整備し、道路交通法等を含め、事故時の責任関係の他、運転者の義務等のあり方についても、これらの実験により得られたデータも踏まえつつ、我が国として引き続き十分な検討を進め、完全自動走行の早期の実現を目指す、との方針を掲げた。平成28年度3月11日の中央交通安全対策会議決定においては、「平成32年までに24時間の死者数を2,500人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する」との目標達成に向け、従来施策の深化、先端技術の積極的に取り入れ、新たな時代における対策に取り組むことを決めている。その折「自動走行技術等の開発・普及のための環境整備を行う」ものとしている。警察庁はこれらの前提を踏まえて、この度自動走行システムに関する公道実証実験を実施するに当たって交通の安全と円滑を図る観点から留意すべき事項等を示すことにより、適正かつ安全な公道実証実験の実施に資することを目的とし、別添のとおり「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」を策定した。各都道府県警察の長には、公道実証実験の実施主体から事前連絡または事前相談を受けた場合には、このガイドラインを活用しつつ、実施場所の交通実態等を踏まえた助言、情報提供等を行うなど、自動走行システムに関する公道実証実験について適切な対応を求めている。ちなみに別添とされた「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(平成28年5月 警察庁)には、上記の趣旨とともに、本ガイドラインは、これらによらない方法で行う公道実証実験を禁止するものではないとの断り書きが付されており、ガイドラインは、関係法令や自動走行システムに関する公道実証実験についての調査検討結果を踏まえ、同実験を行い、または行おうとする実施主体にとって有用な情報を提供し、その取り組みを支援することを意図しているものであり、「ガイドラインに適合しない公道実証実験を行おうとする場合」には、十分な時間的余裕を持って、実施場所を管轄する警察(各都道府県警察本部交通部交通企画(総務)課)に事前相談を行って欲しい旨などが付記されている。ガイドラインは趣旨を除く9項目で構成され、2.基本的制度、3.実施主体の基本的な責務、4.公道実証実験の内容等に即した安全確保措置、5.テストドライバーの要件、6.テストドライバーに関連する自動走行システムの要件、7.公道実証実験中の実験車両に係る各種データ等の記録・保存、8.交通事故の場合の措置、9.賠償能力の確保、10.関係機関に対する事前連絡などが項目となっている。2.は公道実証実験に用いる実験車両は、道路運送車両の保安基準に適合したものであること、運転者となる者が実験車両の運転者席に乗車し、常に周囲の道路交通状況や車両の状態を監視し、緊急時には他人に害を及ぼさないよう安全を確保するために必要な操作を行うこと(運転者となる者が緊急時等に必要な操作を行うことができる自動走行システムで)、道路交通法を始めとする関係法令を遵守して走行することなどを求めている。また、3.の実施主体は、十分な安全確保措置を講ずる責務があるとされている。4.は、(1)実施主体に実証実験の実施前に公道において発生し得る様々な条件や事態を想定した走行を十分に行い、実験車両が自動運転システムを用いて安全に行動を走行可能であることを確認することを求める他、公道以外に自動車安全運転センター安全運転中央研修所、独立行政法人自動車技術総合機構交通安全環境研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般財団法人日本自動車研究所、指定自動車教習所、サーキット上などを実験施設として利用することも想定している。これは、実験施設等における確認後も、実証実験は安全性を確認しながら段階的に環境を変えて、実施すべきとの考えに基づくものだ。(2)また、新たな自動走行システムを用いた実証実験は、公道実証実験の内容に応じて、改めて実験施設等における確認から始めるべきとしている。(3)実施主体は、必要と考えられる場合は安全確保措置を講ずるべきとしており、緊急時に必要な操作を行うために、運転席に乗車するもの(テストドライバー)の同乗を求めるとともに、テストドライバー以外の者による自動走行システムと道路交通状況の監視を行う等の役割分担を措置を講ずるべきとしている。また、実験車以外に並走し安全を確保する車両を用意すること、公道実証実験中である旨を表示すること、地域住民や道路利用者に対し、チラシや看板等で公道実証実験の実施日時や実施場所を広報することなどを進めている。(4)実施主体は、自動走行システムが故障した場合や、交通事故が発生した場合等の緊急時における具体的な対応要領や連絡体制の共有と書面化、関係者間での周知を図るべきとしている。(明日に続く)*出典:警察庁ウェブサイト:https://www.npa.go.jp/laws/notification/guideline_220304.pdf
自動運転バスは雪道を走れるか? 北海道で実験、見えた期待と課題
3月9日 2021年の12/15~19まで、に北海道の上士幌町で、ボードリー(BOLDLY/ソフトバンクの子会社)が自動運転バスの冬季運行の実証実験を行った。同社の発表によれば、氷点下となることが予測される環境下で、行政と連携し除雪や凍結防止の道路環境整備を施した上で、自動運転バスを走らせ、積雪による周辺環境の変化や、ぼたん雪などが各種センサーにどのような影響を与えるのか、また氷点下の環境における車両の走破性、路面凍結への対策の有効性などを確認するための実験とのことだ。実験では、フランスのNavya社の「NAVYA ARMA」と呼ばれる自動運転車両に、スタッドレスタイヤをはかせて走行を試みた。ボードリーは過去にも、上士幌町で自動運転バスを走行させた実績がある。ボードリーの自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher」を使い、遠隔からリアルタイムに自動運転バスの運行状況の記録や把握を行い、運休や再開などの運行情報を利用者などに報せることで、利用者の利便性向上、サービスの品質向上にも役立てる。上士幌町では、本冬季運行試験について試験中の乗車を「どなたでも」(但し予約者優先)として町民の利用を促進している。コース上の停車場所の一部は、十勝バス、北海道拓殖バスのバス停やタクシー乗り場と共用することとしている。また、町内の停車場所には「道の駅かみしほろ」や「かみしほろ情報館前」「カミシホロランドリー」「カミシホロホテル」「上士幌町交通ターミナル」「かみしほろシェアオフィス」など、何れも上士幌町の活性化のため近年整備されたと思われる施設を選定しており、新たな公共交通の利用と同時に、これらの施設の利用・活性化も垣間見られる。バスは実証実験期間中、一日20便が設定されており、朝8時台から、夕方18台までほぼ1時間おきに運行される。上士幌町では、町役場から半径1km以内に主要施設や住宅が密集しており、コンパクトなまちづくりが進む。18時台は日没後となるため、自動運転車両はヘッドライトを点灯し、走行する夜間走行もこなすことになる。今回のルートは、町のブロードウェイとも言える337号線にほぼ並行して設定され、上士幌町交通ターミナルの部分だけ、337号線にアクセスすることとなる。言うなれば町域の全てから、新ブロードウェイ沿いの新たな施設に、自家用車ではなく公共交通を利用して足を運んでもらうお試しコースとも読める。新たな足が定着するなら、カミシホロホテルや道の駅かみしほろ等は、観光客用のプチ観光ルートを想定しているのかも知れない。しかし、これらの期待も冬季に自動運転バスが少なくとも足と言える頻度で運行できなければ、元も子もなくなってしまう。このため、今回の実験では冬季に積雪が予想される当地において、自動運転バスが安全に走行できる環境を整えるため、除雪車を動員し、自動運転バスの走行路の路肩白線まで除雪作業を行ったり、交差点や停止線付近に凍結防止剤を散布するなど、車両側だけでなくインフラ側にも雪や氷点下などの環境にも対応できるよう配慮している。これらの対策を施した上で、積雪時の自動運転バスの運行を前提とした適切な除雪作業の実現、積雪などによる周辺環境の変化が、自動運転バスのセンサーによる自己位置推定機能に与える影響度合いを把握したり、降雪時にぼたん雪などが自動運転バスのセンサーにより障害物として検知される度合いの把握、氷点下における車両の基本的な動作性能の確認(「NAVYA ARMA」の動作保証条件は気温が氷点下10度以上、上士幌町の12月平均気温は氷点下4.8度)、路面凍結においては、スタッドレスタイヤの走破性、凍結防止剤によるスリップ防止の有効性などが確認されることとなった。この他にも様々な国や団体において、雪道での走行を実現させるための取り組みが行われている。雪道において技術的なハードルが上がると言われるのは、自動運転に必要とされる「認知」や「判断」機能に天候や走行環境の影響があるからと言われる。具体的には車両に搭載されているカメラやセンサー等の認知機能の低下などが課題となる。これにより影響を受けるのは、車載カメラで車線の白線を認識し、車線逸脱を防ぐレーン・キープ・アシスト機能である。また、車両周辺の物体との距離や位置を測定するLiDARも、降雨や降雪の影響を受ける。またLiDARなどの情報をもとに生成される、高精度3次元地図なども、除雪された雪山や雪に埋もれ標識が認識できなくなる等、既に登録された位置情報との差異が大きくなるため、正常な判断ができなくなる。しかし、北米、アジア、欧州などの市場において、雪道の走行はほぼ必須条件となる。このためフォードなどは、豪雪地帯となるミシガン州の大学などと雪道走行の実験を重ね、積雪により車載カメラやセンサーなどが路面の表示を読み取れない状況においては、解像度の高い3Dマッピング技術と高精度のLiDARの組み合わせ、これらにESC(横滑り防止機能)やトラクションコントロール(エンジン出力の調整)を連動させることで安全な雪道走行の実現を目指しているという。「宇宙のまちづくり」を目指し、1980年代に「航空宇宙産業基地」の候補地とされた北海道の大樹町では、航空や宇宙分野での実験や飛行試験の誘致に積極的だ。「大樹町多目的航空公園」では、JAXAを始めとする民間企業や大学により様々な実験が行われており、2021年4月より宇宙港「北海道スペースポート」(HOSPO)を本格稼働させている。同町では、2017年12月に20人乗りのマイクロバスを使用し、衛星から送られる測位情報や道路に敷設した磁気マーカーを利用した雪道の走行実験が行われている。2021年2月には、中小企業庁の「サポインマッチナビ」(ものづくり中小企業のビジネスマッチングサイト)において、㈱ヴィッツ、アーク・システム・ソリューションズ㈱が「AIやセンサーを活用した状況確認技術を積雪環境に対応させ、積雪寒冷地域での自動運転技術を開発」プロジェクトへの参加を募っている。同社では、寒冷地域での自動運転には、積雪により車両周囲の状況認識が困難になることを技術課題と捉え、「状況認識技術」を積雪環境に対応させ、雪道走行が可能な自動運転車の開発を加速させ、地域が抱える交通弱者の課題解消に貢献することを目的に開発に取り組んでいる。同社はこれまで、積雪環境で機能する自己位置推定技術の開発(ダイナミックマップを利用しない「Snow-SLAM」方式)や、積雪環境の仮想シミュレータ開発、グローバル経路計画との連携技術開発などの開発成果を上げている。実験のアドバイザーには、トヨタ、アイシン精機、日本自動車研究所、情報処理推進機構、北海道立総合研究機構などが名を連ねる。フィンランドのSensible4(センシブルフォー)は、フィンランドのエスポ―市発のスタートアップだ、同市はフィンランドの南部都市だが、冬季には、平均気温2℃未満の日が続く。2月の平均は-8℃にもなる。同社は、このような都市で全天候型自動運転ソフトウェアの開発を続ける。ちなみに同社の自動運転ソフト「DAWN」を搭載して、同地で走行するのは日本の無印良品の「GACHA」だ。バスの自動運転化が先か、除雪車の自動運転化が先となるかは、まだわからないが、極寒の地を自動運転バスをはじめとして多様なサービスカーが生き生きと走る日を楽しみに待ちたい。
2028年に869.1億米ドルに達する世界の自動車データ収益化市場規模 他
3月8日 3/3に株式会社HYAKUSHOは、長野県飯島町にてスマートモビリティシステムの企画・開発・製造・販売を手掛けるZenmov株式会社と共同実証実験として「二次交通用のEVカーシェアリング実証実験」を始めた。同町は長野県の南部、伊那谷のほぼ中央に位置する。東に南アルプス、西に中央アルプスを望む位置にある。町内の交通は、中央自動車道、JR飯田線、国道153号線となり、東京や名古屋からの交通の便も良い。町の面積の55.66%は森林・他、山林が13.57%、田が9.38%、宅地は僅か3.43%というから、自然豊かな町と表現できる筈だ。西には南駒ケ岳、空木岳(うつきだけ)、越百山(こすもやま)が目前に迫り、東には仙丈岳から赤石岳まで3000m級の峰が連なる南アルプスがある。長野地方気象台飯島観測所のデータによれば、海抜728mにある典型的な内陸型気候の飯島町の平成30年度の最高気温は34.5度、最低気温-11.5度だった。江戸時代に幕府の陣屋が設置(延宝5年/1677年)され、伊那郡を中心とする幕府直轄両を支配する拠点としての役割を担った。明治維新以後に伊那県庁(~明治4年11月まで)が置かれる。町政の施行は昭和29年1月。その後、七久保村と合併、現在の飯島町となる。令和4年3月1日時点の人口は、9,194人(うち外国人が283人)。同町の「伊南観光地域づくり基本戦略」(2019 Ver1.0)によれば、今回の実証実験も基本戦略に含まれる。戦略のもととなる基本構想に「ピュアライフ~二つのアルプスに護られた自然が寄り添う暮らし~」とのブランドコンセプトを置き、地域ブランドの確立を目指す。戦略のモデルユーザーは「故郷がなくどこか里帰りにあこがれる都会のファミリー」だ。同町のコンセプトに共感してもらえるモデルユーザーを設定し、ユーザー視点による価値を追求し、ブランドイメージの形成を図るとしている。将来的には「帰りたい故郷であり続ける~「ただいま」と「おかえり」の声が溢れる場所に~」を掲げ、地域人口の安定、労働人口の確保、交流人口の増加を図り、地域の文化・経済を持続させ、次世代に受け継ぐことを周辺の3市町村と共通の目標に据える。これらの目標を実現するため「100年先も選ばれる故郷であるために、地域を「紡ぐ」「伝える」「磨く」」をミッションに据える。「紡ぐ」は伊南地域の日常や暮らしの豊かさに価値を掘り起こし、つなぎ合わせることで地域ならではの魅力的なコンテンツや体験を創出することを意味する。また「伝える」は住民自身が地域を知り、地域の情報を集め、発信することを意味する。地域情報が集約出来る仕組みを作り、効果的な発信、戦略的なプロモーションを通じて、モデルユーザーに働きかけを試みる。最後の「磨く」は伊南地域全体を面としてブランド価値を磨き上げ、無垢な故郷「ピュアライフ」を地域のブランドイメージとして確立、ユーザーとの信頼関係を構築することを指す。伊南地域の地域づくりを推進するのが「みなこい観光地域づくり推進機構」だ。同地域を一つの会社になぞらえ、各組織の合意の形成・意思決定、観光地域づくり戦略のための検討・計画策定や組織の役割分担などを行うプラットフォームとなる。会社組織の総務部に当たるのが市町村(行政)だが、その役割に「地域二次交通整備」が置かれている(参考:https://www.town.iijima.lg.jp/material/files/group/1/kihonsenryaku20191210001.pdf)。飯島町では、鉄道や高速バスなどの都市部から町までの基幹交通は整備されているものの、町内の観光的な周遊を促す「二次交通」の存在がほぼない。公共交通は日に4便の「いいちゃんバス」とバスの時間に合わせて、地域線として「予約制乗り合いワゴン車・タクシー」が運行されているが、観光向けというより市民の生活の足の色が強いようだ。今回の実証実験では、この二次交通部分にEVシェアリングの仕組みを導入し、バス停に設置、市内ローカルエリアへのアクセス向上を図る。駅やバス停など公共交通の停留所にEVを配置し、同町を訪れる観光客に利用してもらう想定だ。また二次交通の充実により、観光客の来訪意欲が高まるかを検証するため、町内の千人塚公園キャンプ場を目的地とした利用状況を検証するとしている。さらに町内を移動するための二次交通としてもEVを利用してもらい、地域周遊を促すことが出来るのかについても検証していく。飯島町では、現在町内の千人塚講演キャンプ場内にある施設をテレワークやサテライトオフィスとして利用できるよう整備を進めている。同町の令和2年度飯島町移住・観光パンフレット「iijima note」を拝見すると、千人塚公園(オートキャンプ、SUP、トレッキング、テントサウナなど)をはじめとして、依田切公園(BBQ、キャンプ、テニス、プール、信州の名水・秘水に選ばれた「越百の水」)など、観光・レジャー面、市内のカフェやスイーツ、農業体験、移住・定住のお試しなどが紹介されている。これらの情報がEVを利用する観光客の周遊を促進する仕掛けとなると思われる。このパンフレットを通しても「移動」が地域で生活する市民や町への来訪者に与える影響・恩恵の大きさや地域交通大切さが伝わってくる。実証実験が成功し、二次交通が持続可能と言える道筋が付くことを願いたい。
風雲児テスラ、ソフトを主役に 「進化する車」で自動車業界揺さぶる 他
3月7日 この3/3にデロイトトーマツグループは、全世界25か国以上の消費者を対象に自動車産業に影響を与える様々な課題に関して調査した結果をもとに、日本や米国を含む13か国の地域の消費者意識を考察しまとめた「2022年 デロイトグローバル自動車消費者調査」を発表した。※本調査は2021年9月~10月に実施され(コロナ禍における生活環境の影響を受けた調査結果であると考えられる)、今回の調査は世界25か国で26,000人以上の消費者に対し調査が行われているが、うち日本のサンプル数は1,000(3.84%)である。サンプルの分布については、18-34歳が21%、35-54歳が34%、55歳以上が46%で、女性が48%、男性が52%、居住地域は、田舎が23%、郊外が39%、都市が39%となる。同社Webサイトからグローバル版と日本市場編のダウンロードが出来る。この調査はコネクテッド、自動運転、モビリティサービス、電動化といった「CASE」「MaaS」に対する消費者の意識を調査したものだ。うち日本市場編では【①先端技術と車両のコネクテッド】、【②車両の電動化】、【③今後の車両購入意向】、【④モビリティアプリケーション】、【⑤モビリティサービス】がテーマに据えられた。①については、安全性、代替エンジン技術、自動運転には追加コストを支払っても良いと考える消費者が7~8割に上り、自動運転・代替エンジン技術には、比較的高額の追加料金を払っても良いと考える人が4割を超える(代替エンジン技術・コネクテッドを含む先端技術に対して積極的にお金を支払う消費者は、世界のほとんどの国・地域において限定的である)。また約7割の消費者は、コネクテッドカーが安全な、或いは最適なルート提案をしてくれるのであれば、個人データを共有しても良いと考えている。(世界においても、コネクテッドカーが渋滞の迂回ルートや安全なルートの提案、車両のコンディションの遠隔チェックや整備コスト削減方法などの提案を行ってくれるのであれば、個人情報を提供しても良いと考える消費者は比較的多い)。②については、消費者の約6割が電動車に乗り換えようと考えているが、4割弱はハイブリッドを考えている。電気自動車(BEV)への乗り換えを考える人は1割程度に止まる(韓・中・独では多く、日はHEVの比率が高い、米はICEを考える人が7割)。次の車両購入にかける金額は、電動車(BEV/PHEV/BEV)80%、内燃機関車(ICE)75%と、ともに500万円未満が最多価格帯となった。消費者にとって、電動車の魅力は「燃料費の削減」ができる点にあり、気候変動への懸念を背景とした「排出量の削減」を大きく上回る(世界では、低燃費、気候変動への懸念、CO2排出量削減が電動車の取得決定に影響を及ぼす理由)。電動車の購入を考えているものの、充電コスト(電気代)が化石燃料代と変わらないのであれば、購入を再考する(≒買わない選択肢も考える)と回答した人は35%に上った(世界では電気料金が値上がりすれば、相当数の消費者が電動車の購入をためらう可能性がある)。消費者の76%が充電場所に自宅を選択する(日・印・米では「自宅」が多く、韓・東南アジアでは「路上/公共充電スタンド」を考える人が多い。*自宅での充電を考える人の中で、通常の電力網と再生可能エネルギーの両方を電力源と考える消費者は、印・中・東南アジアに多い)。それ以外を選択した消費者の半数は「自宅に充電器を設置できない」ことを、その理由に挙げる(世界では自宅充電を想定しない理由に「充電器を設置できない」「充電設備の設置費用が高額である」が挙がる)。消費者が電気自動車(BEV)の購入をためらう最大の理由は、充電インフラの欠如である(世界では、航続距離と公共充電インフラの不足を懸念、フル充電時の航続距離は、米では凡そ805kmに対して、中・日・印では凡そ402kmが期待されている)。電気自動車(BEV)が内燃機関車(ICE)よりも環境への影響が少ないかどうか、消費者の見方は分かれている(東南アジアでは環境への悪影響は BEV<ICEとの理解が最も高く、最もその比率が低かった韓の消費者の2倍)。③については、COVID-19をきっかけに、公共交通を回避する手段として車の購入を考える消費者は、都市部に多い(印・東南アジアにおいてコロナ禍で車購入の意志決定の理由は、公共交通機関を避けるため)。消費者の約3分の1がローンで車の購入を考えており、うち約半数が1~3年のローン期間を希望している。車の購入は、いまだ対面取引が好まれるものの、若年層ではオンライン購入を考える人が比較的多い(世界でも対面購入が好まれる)。オンラインでの購入を希望する消費者のほぼ半数は、自動車メーカーからの購入を望んでいる(世界ではオンライン購入の場合、ディーラーからの購入が好まれる)。消費者は「利便性」と「取引のスピード」をオンライン販売に求める(世界でも同様)。それでも、現物を見て試乗したいと思う消費者が大半であり、車両購入のデジタル化は進んでいない。④については、モビリティサービスのアプリは、サービス内容が不十分だと思っている消費者が大半である。消費者はワンストップで様々なサービスを提供してくれるアプリを望んでいる。年齢に関わらず、全ての消費者は、モビリティアプリの「価格」と「使いやすさ」を最も重視している。消費者は、「交通アプリ」よりも「地図」や「旅行」のアプリに興味を持っている。⑤については、一回の移動で、複数の交通手段を使用しない人が半数近くに上る。毎日、複数の交通手段を利用して目的地に向かう人はわずか7%に留まる。公共交通機関と自家用車は依然として最も使用されている移動手段である(世界では、自家用車が最多。韓・日では公共交通機関が3割を占める)。シェアリングサービスは、自転車/電動スクーター/自動車など、全ての形態においてあまり使用されていない。自家用車と公共交通機関を、今後も主な移動手段と考える人が最多に。若年層ほど、自動車のサブスクリプションに興味を持っている(中・印・東南アジアではサブスクリプションへの関心が圧倒的に高い、サブスクに求められるのは、利便性の高さ、柔軟なサービス内容、入手のしやすさ)。中古車・異なるメーカー・同一メーカーの異なる車種の全てにおいて若年層の関心が最も高い。ただし、半数以上の消費者は、通常のカーリースよりも少ない金額、もしくは同額でなければサブスクリプションを選択する意向はない。自動車メーカー(と系列の自動車金融会社)はMaaSソリューションの提供者として、最も信頼されている。一方、消費者の3割は誰が最適なプロバイダーかを決めかねている。調査項目によってはコロナ禍であるが故の回答と推測される箇所も見られたり、各国の交通事情や様々な前提を含め、あらためて調査結果を俯瞰する必要があると思われるが、調査結果はまぎれもなく各国の消費者意識の「いま」を表すものだ。今後のCASEやMaaS市場の発展のため、CASE・MaaSに関わる全ての方々に、国・地域による市場ニーズの差異に柔軟に対応できる、優れた製品・サービス・ソリューションの創出に期待したい。
自動運転本格化を見据え、クルマを走るエンタメ空間として再定義 他
3月4日 MaaSアプリの普及に伴い、MaaS運営主体ではアプリの「使い方」に知恵を絞っている。2022現在のMaaSアプリをいくつか挙げるなら、小田急のEMot(エモット)、西武のSeMo(セーモ)、沖縄MaaS、仙台MaaS、広島電鉄のMOBIRY、京王のTAMa-GO(タマ・ゴー)、トヨタのmy route、MaaSアプリの元祖とも言えるフィンランドのマースグローバル社のwhim、東京メトロのmy!東京MaaS、英・ロンドン発のシティマッパーリミテッドのCitymapper、JR西日本のsetowa、MaaS Japan、東京~伊豆半島における実証実験で名を馳せた東急のIzukoなどがある(参考:リブ・コンサルティング「マルチモーダルカオスマップ2022」)。アプリのカオスマップにおける軸に注目すると、アプリが存在する領域は、オリジナルアプリとホワイトラベル(ホワイトレーベル)、都市交通系と観光系との住み分けになる。アプリに実装される機能としては、混雑状況の可視化、O2O/OMO(O2O:インターネット上の情報を契機に実店舗への来店を促す販売戦略、OMO:ECサイトと実店舗を融合した顧客体験の向上を目的とするマーケティング手法)、決済、地図データサービス、ルーティング(検索)、運行情報、Pol情報連携(*Point of interest/移動の目的地)などが主なところとなる。全国ではこれまで主流であった路線バスやコミュニティバスに加え、より身近な移動をカバーするデマンドタクシー、シェアリングサービス(乗合い)などの、実証や運行が始まっている。これらの「足」と基幹交通をワンストップで結ぶ「移動のDX」や「移動の高付加価値化」がアフターコロナの移動と周辺経済を支えると期待される。しかし、交通事業者にとってはアプリの開発には膨大な開発の手間やコスト(参考:「MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る」講談社/森田創著)が必要となることから、先行する企業のアプリに「相乗り」する事例も増えている。この結果、先発組となる大手企業のアプリは各地の実証実験に用いられることとなり、当初は利用者の「移動スイッチ」を入れるため、アプリ内にポイント発行、スタンプ、デジタルチケット販売などの機能を仕組みを取り入れていた。最近では、アプリ内のこれらの機能がJR各駅などに設置されていた「みどりの窓口+α」を置き換えつつあるようだ。これらの状況を踏まえ先行組は、自社のオリジナルアプリをホワイトラベル(ホワイトレーベル)化し、グループ内以外の交通事業者などと協業を始めている。日経新聞によれば、小田急EMotの、2021年度のチケット取扱額は3億円を超える見込みで、2020年度の約5倍となる。コロナの影響で減便やサービスの縮小などが続く交通各社にとっては、久々の朗報と言えよう。しかし一方では、アプリの乱立状態や蓄積されたデータ利用の権利関係の調整、これまで投資して来た各社のアプリを他社と統合出来るのか?などの議論がある(2/20 産経新聞「移動の変革MaaS 鉄道各社が争うデータ取得」https://www.sankei.com/article/20220220-XZ57U24TERPPVGDUL5CDBUU5FQ/)ことも確かだ。大阪・関西万博を控える中国・四国や北陸を含む「関西圏」の事業者であれば、少なくとも2025年前後における経済的メリットが見通せるため、各社とも協調路線を選択しやすい状況にあると考えられる。他方、九州や、関東、東北、北海道などは、協調のメリットを打ち出すため、この時期に収益ツールとしてのポテンシャルを持ち始めた、MaaSアプリを活用し、「何を・どのように」仕掛けるかが、コロナ禍後の成長を促す戦略として重要となるのではないか。JR東日本は、2/10に昨年11月から開始している「TOHOKU MaaS」の通年実施を発表したところだ。アプリ上では東北6県の8エリアで共通の電子チケットを販売したり、周遊モデルコースを紹介し、各所のオンデマンド交通とも連携、目的地までの移動時間を計算させたりして、観光客の周遊を促進する。経済産業省では、スマートモビリティチャレンジの一環として、2021年6-7月に「地域や業種をまたがるモビリティデータ利活用推進事業」に参加する事業者を募っており、日本ユニシスが採択された経緯がある。業種をまたいで、人流、物流、モビリティデータ等を利活用することで、新たな価値を生み出す高度なMaaS実現のために、利用者にパーソナルデータの提供を仰ぎ、賛同を得られるか?について新潟市と金沢市において社会実験を行った。実験の背景として「地域住民の移動に関するデータは、交通事業者などの移動サービス事業者が個々に保有しており、統合的にデータ分析できる環境は整っていない」としていた。日本ユニシスは、主に地方の中核都市を対象として、生活者向けMaaSの企画実証や、MaaSデータを含む様々なモビリティデータの利活用に関する研究を進めて来た。また、アプリ利用者本人の意思に基づき、MaaSデータ等の生活者が所有するパーソナルデータを「業種・業界を横断して流通させる」ことを可能にするプラットフォーム「Dot to Dot」を2020年11月より、開発・提供している。同省の舵取り次第で、各地の交通事業者が受ける恩恵の器の整備が早まる可能性がある。期待とともに「コト」の成り行きに注目して行きたい。
電動車や自動運転技術搭載車に関する安全確保策やデータ利活用方策の検討を行います ~自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会(第4回)の開催~ 他
3月3日 国土交通省は3/7(月)に「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会(第4回)」をWeb会議で開催し、電動車(EV)や自動運転技術搭載車に関する安全確保策やデータ利活用方策の検討を行うとしている。ここに示された「データ」とは、自動運転技術や電動車の普及等、自動車の変容・高度化に伴い、高電圧保護や各種センサーの作動不良、サイバーセキュリティなど、電動車(EV)や自動運転技術搭載車特有の課題に対応することを目的としてするデータ群を指す。このため、車上に搭載された機器から収集される不具合情報の収集がより重要となる。いわゆるOBD(On-Board Diagnostics)機能の導入により、今後、使用過程にある車両に記録された、故障データの「更なる活用」が可能となる見込みだ。想定される不具合・故障データの利活用の方向としては、ユーザーの安全・安心の確保、ユーザーの利便性向上などとなっている。情報収集の主軸となるODB機能により車両から読み取られる不具合・故障情報とは、具体的にどのような情報なのか、その詳細や収集方法も気になるところだ。3/9(水)~11(金)まで、日本唯一の自動車アフターマーケット国際展示会「第19回 国際オートアフターマーケットEXPO 2022」にその答えの一端がありそうだ。この展示会は、自動車のアフターマーケットビジネスの活性化を図ることを目的に、自動車の売買・整備・メンテナンスを始め、自動車を取り巻く環境・インフラ等、様々な領域を擁する「自動車アフターマーケット」に関する最新情報や業界動向を、展示、実演、セミナー等により情報発信する場であり、自動車関連ビジネスに関わる幅広い関係者の交流の場となっている。今回は3年ぶりのリアル開催となることもあり、出展者数も過去最多の225社を数える。展示されるのは、製品・サービス以外にも行政関連の動向、旧車市場や自動車販売戦略、地域連携やディテイリング(車両細部の美化・美装)、人材など多岐に渡るセミナーと(SDGsなどの環境課題に対応する)水性塗料の実演塗装、最新機器による「キャリブレーション」の実演なども実施される。後付けADAS(先進運転支援システム)装置を扱う丸紅オートモーティブ、(コロナによる車内の清浄化を念頭に置いた)エアコントータルソリューションのウルトジャパンなど注目の製品・サービスが展示される。このうち「キャリブレーション」実演セミナーでは、「特定整備制度の開始・点検基準改正」に伴い*、「エーミング作業」、最新機器・機材の「情報収集」を行える車両を使ったデモが行われる。電子制御装置整備時代に求められる(自動車整備工場などへの)入庫時の診断にもとづく整備、エーミング(衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全装置を正しく動作させるための「校正作業」のこと、事故による衝撃や飛び石などでフロントガラスの交換が発生する場合、ガラス上部に取り付けられているセンサーにズレが生じるため、ズレを修正する一連の作業を指す)、そして完成検査等についての実演セミナーが行われる。車両整備などの関係者以外は聞きなれない言葉だが「エーミング」とは、ASV(アドバンスド・セーフティ・ビークル/先進安全システムを搭載した車両)の先進安全システム(衝突被害軽減ブレーキの他、ふらつき注意喚起装置、車線逸脱警報装置、ACCと呼ばれる定速走行・車間距離制御装置など)には、安全運転をサポートするこれらの装置のコンディションを常に正常に保つ必要があり、そのための整備・調整作業を指す。「エーミング」を行うためには、ターゲット・リフレクター、スキャンツール(外部診断機)、水準機、角度計、整備書(各自動車メーカー)、アライメント測定器などが必要とされる。ターゲットやリフレクターは、カメラに読み込ませるための「標的」のことを指す。これらのうちスキャンツールは、車の車載診断機に繋ぐためのツールで、エーミング作業はこのスキャンツールから行う(参考:https://www.resolution.co.jp/archives/62505)。ASV(アドバンスド・セーフティ・ビークル)の自動ブレーキなど前方や周辺を常時監視する先進技術などにおいては、車両整備時や修理時や走行距離が累積するに従い、センサのズレや誤動作が生じる可能性がある。このため、センサの取付角度の点検や調整が必要とされる。特にカメラやミリ波レーダー等のセンサの点検・調整には、スキャンツールが不可欠であり、点検の結果、異常が認められた場合には、センサの取付角度を調整するエーミングを行う必要が生じる。(エーミング作業を行うためには、一般に床が平坦、かつ広い空間が求められる。エーミングでは自動車の前方の正確な位置にターゲット(センサ調整用の標的)を設置した状態でスキャンツールの「実行)を選択すると、自動(一部ミリ波レーダーのエーミングは手動)で調整される。このセンサの角度調整に当たるエーミングのうち、ターゲットを使用する作業をエーミングといい、使用しない作業を「キャリブレーション」と呼び分けている。「自動車特定整備制度」は、従来からの分解整備に加え、自動ブレーキなどに使用される前方を監視するカメラやレーダーなどの調整や自動運行装置の整備について「電子制御装置整備」と位置付け、その整備に必要な事業場(電子制御装置点検整備作業場)や従業員、工具(整備用スキャンツール等)などの要件を定めた制度(参考:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001332203.pdf)だ。*道路運送車両法の一部改正(令和元年5月24日法律第14号〔第2条〕公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行(※令和2年1月31日(政令第20号)において、令和2年4月1日からの施行)により、①自動車の保安基準(省令)の対象装置に「自動運行装置」が追加、②自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する事務を行わせる法人の整理、③分解整備の範囲の拡大及び点検整備に必要な技術情報の提供義務付け、④自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設などが行われるようになった。現在、車両へのADAS(先進運転支援システム)の導入が進んだ結果、「道路運送車両法の一部改正」が公布・施行された経緯を契機に、2020年4月1日から「自動車特定整備制度」(OBD点検や検査など)が、全国に約10万ヵ所以上あるとされる「整備に必要な事業場」に導入されはじめ、各自動車整備事業所は、その対応に追われている。今後は、その産物(成果物とも)として冒頭の「不具合・故障データ」の蓄積が進むことになる。今回、国交省が「自動車の高度化に伴う安全確保策のあり方検討会(第4回)」において、検討される「データ群」に安全・安心を念頭に、自動車メーカー、部品メーカー、ユーザー、アフターマーケット等、幅広い関係者に資する様々な「価値」が見出されることを期待したい。
どこが一番進んでる? 本当の「自動運転」っていつ登場?? 何がハードル??? 先進運転支援システムの「いま」 他
3月2日 本日、株式会社KADOKAWAは、位置情報で読み解く交通・観光DX成果発表会~国土交通省「ビッグデータ活用による旅客流動分析 実証実験事業」~(主催:国土交通省)をオンライン配信(Zoomウェビナー方式)で一般公開すると発表した。携帯電話の位置情報データを活用した旅客流動分析により、地域の課題解決や、従来の交通調査では得られなかった知見の取得を目指す事業についての成果報告会を3/22(火)に開催するとしている(*角川アスキー総合研究所は、この事業の運営事務局を務めている)。なお、本成果発表会はオンライン配信(無料)となる。近年、観光客や生活者の動き(旅客流動)に関する様々なビッグデータが蓄積されるようになっており、中でも携帯電話など端末から収集される位置情報により、観光客や生活者の移動実態が詳細に把握できるため、地域課題の解決や、政策立案への利活用が考えられているとの流れを受けて行われる本発表会は、公募で採択されえた9つの事業主体から各々10分間のプレゼンテーションが行われ、内容に対し有識者からの講評を交えるかたちで行われる。本事業に採択され、今回発表を行うのは日野町、岡崎スマートコミュニティ推進協議会、ふじさんゼロアクション、一社)おしかの学校、茨城県境町、エリアポータル㈱、パシフィックコンサルタンツ㈱四国支社、須賀川南部地区エリアプラットフォーム、おおいたノースエリア観光推進協議会の9団体だ。日野町は「公共交通活性化に向けたマイカー通勤渋滞実態及び要因のビッグデータ活用分析・手法検証事業」、岡崎~は「ビッグデータで実現するEBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング/証拠に基づく政策立案)観光まちづくり」、ふじさん~は「富士山周辺によるビッグデータを活用したゼロゴミアクション」、おしか~は「牡鹿半島における観光ビッグデータ活用の実証実験」、境町は「ビッグデータ・自動運転バスを用いた地域経済活性化」、エリアポータル㈱は「山梨の観光地における群流解析実証実験」、パシフィック~四国支社は「携帯基地局データをベースとした新たな移動データの構築と、都市OSへの安定的なデータ供給および汎用性の高いシステム構築に向けた検討」、須賀川~は「ウォーカブルな中心市街地を形成するための人流分析および購買・消費分析」、おおいた~は「大分県北部地域の連携によるデータドリブン滞在型観光の実証分析」をそれぞれ発表する。どの団体も興味深いアプローチだが、各所のアプローチを掻い摘んでみると、愛知県岡崎市は岡崎スマートコミュニティ推進協議会が、対災害性の向上と岡崎市の魅力度アップ、更なる地域振興を目指し設立されている。協議会が目指す「スマートコミュニティ」は、電気の有効利用、熱や未利用エネルギーも含めたエネルギーの面的利用、地域の交通システム、市民のライフスタイルの変革などを組み合わせたまちづくりを目指すものだ。2023年にNHKの大河ドラマ「どうする家康」の放映を控える同市は、今回そのうちの旅客流動に関する岡崎市の魅力度アップや地域振興、地域の交通システムなどの観点からの取組を発表するものと予想される。「富士山周辺によるビッグデータを活用したゼロゴミアクション」は、富士山のゴミ(不法投棄、ポイ捨て等)問題を解決するために、富士山ガイドや地元アウトドア関係者を中心に発足した環境保護団体が、富士山麓から山頂までの調査活動や清掃活動、啓発活動を行っている。同団体のFacebookを拝見すると、今回は携帯電話の位置情報データを活用し、人の流れとゴミの増減を分析しようという試みを行っている。分析結果によって、効果的な啓発活動に繋げる目的での取組みとなる。本活動は河口湖町が協力しており、国土交通省の助成事業(「ビッグデータを活用した実証実験事業」)ともなっている。パシフィックコンサルタンツはソフトバンクとの共創により、「全国うごき統計」という人流統計データサービスを行っている。同社が保有する都市計画や交通計画などの社会インフラに関する知見やノウハウと、ソフトバンクの携帯基地局から得られる数千万台の(匿名化した)携帯端末の位置データを融合、位置情報から推定される各種交通手段の利用状況と、人口などの統計データを掛け合わせることで、全国1.2億人の人口に拡大推計した移動に関するデータを高い精度で提供する。人の移動の可視化により、都市計画・開発などのまちづくりや災害対策、飲食店などの出店計画、観光地の活性化、自動運転バスなどの新たなモビリティサービス導入の支援などを通し、社会課題の解決や産業の活性化に貢献するとしている。現在、全国ではデータ取集する環境整備が進みビッグデータを収集する取り組みがなされており、MaaSアプリなどの端末、車の自動運転車両、街灯のスマートポールや監視カメラ等より、日々膨大なデータが収集・蓄積されている。収集したデータの「上手な使い方」については、ビッグデータによる地域振興を図る各自治体がまさに試行錯誤している状況だ。その中で国土交通省によりパイロット事業として採択された各自治体の取組み結果だからこそ、「交通・観光DX成果発表会」となるのかも知れない。地域振興・経済に直接結び付き、防災や環境問題解決の糸口としても利用可能な情報(ビッグデータ)の活用事例だけに、自治体と協業する各方面からも注目度の高い発表会となるのではないか。*写真提供:岡崎市
ウェイモや自動車メーカーはレベル5に達しない?…独自アプローチで自動運転をめざすチューリング 他
3月1日 いすゞ自動車、日野自動車、トヨタ自動車は、2050年のカーボンニュートラルに向け、路線バスの電動化を加速させる。CASE技術をトヨタが提供し、CASE技術の社会実装やサービスの企画を事業内容とする「Commercial Japan Partnership Technologies株式会社」と連携し、ラインナップの拡充により顧客の選択肢を広げ、車両コストの低減を図るとともに実用的かつ持続的な電動車の普及に取り組む。商用事業プロジェクト「Commercial Japan Partnership」は、前述の3社で2021年4月に立ち上げたプロジェクトで、その後スズキとダイハツの軽自動車メーカーが2021年7月に加わっている。いすゞと日野は、BEV(バッテリー式電気自動車)フルフラット路線バスを両社の合弁会社であるジェイ・バス㈱にて2024年度から生産開始する。両社は2002年よりバス事業で協業してきたが、昨今のカーボンニュートラルへの対応や、路線バスのゼロエミッション化への顧客ニーズに伴うアクションとなる。BEVフルフラット路線バスは、いすゞが開発を担当することとなる。また、いすゞ、日野、トヨタの3社は、次世代FCEV(燃料電池自動車)路線バスの企画・開発に向けた検討を開始する。2024年度中に投入予定のBEVフルフラット路線バスをベースとした、次世代のFCEVの企画・開発を並行して進める。ちなみにトヨタ自動車のFC(燃料電池バス)の現行バスとなる「SORA」は2018年3月7日より販売開始となっており、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京を中心に100台以上導入され、その後も各地で普及が進む。災害時には、電源として利用できる「トヨタフューエルセルシステム」を搭載している。同じく次世代FCEVバスの技術ベースとなる「MIRAI」は、FCEV(燃料電池自動車)として、初代が2014年に販売され、現行は2020年モデルと言える。トヨタの燃料電池技術とハイブリッド技術を融合させた高級セダン型燃料電池自動車だ。「SORA」同様、フューエルセルシステムを搭載。次世代FCEV(燃料電池自動車)路線バスは、BEVとFCEVの部品共通化による大幅なコスト削減を図るとともに、新世代のFCスタックを採用、トヨタ・日野で培われたFCEVバスの開発ノウハウなども活用、より長寿命で付加価値の高い電動車の提供を目指すとしている。これまでも、いすゞは2050年に向け「いすゞ環境長期ビジョン」、日野は「日野環境2030マイルストーン」、トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」をそれぞれ策定してきており、SDGs、脱炭素化への貢献を具体化している。今回の「路線バスの電動化」を通して、国内のバス事業者や自治体の環境ニーズにも応えて行くものとみられる。日本の水素ステーションは、2021年11月現在、全国で156ヵ所であった。経産省は、水素ステーションを設置するための規制緩和方針を打ち出しており、水素タンクをより安価なクロムモリブデンで建設することを認めるとともに、水素タンクの設置場所を「公道から8m以上離れた位置」から、「公道から4m以上離れた位置」に緩和するなどして、建設費用を2014年の5億円から、昨年までに2.5億円に半減させるとしている。JXTGエネルギーは、2020年までに国内10拠点で水素を生産、販売面では主要な約2,000店舗を対象に順次、水素スタンドを導入すると2014年に発表している。近年では、2018年2月にトヨタ、ホンダ、日産など11社が「日本水素ステーションネットワーク合同会社(JHyM)」が設立されている。経済産業省「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(2016年6月)のFCVと水素ステーションの普及目標に拠れば、2030年のFCV累計販売台数は、800,000台とされ、水素ステーションは900ヵ所が整備される見通しだ。ゆえにJHyMは、水素ステーションの効率的な運営に貢献し、FCVユーザーの利便性向上、水素ステーションのコストダウンや規制見直しへの対応などをそのミッションとしている。参画企業は、トヨタ、日産、ホンダ、ENEOS、出光、イワタニ、東京ガス、東邦ガス、AirLiquide、根本通商、SEIRYU、TOYAMA HYDROGEN、福岡酸素、丸伊運輸、多摩興運、南国殖産、光南工業、東亜合成、佐藤燃料、DT、豊田通商、日本政策投資銀行、JA三井リース、損保ジャパン、三井住友ファイナンス&リース、NECキャピタルソリューション、スパークス・グループ等だ。バスメーカーにおける、BEVとFCEVの選択は、背後にあるエネルギー産業の今後にも、大きな影響を与えることになるのかも知れない。
自動運転車、米での公道試験の距離が倍増…25社の車が1年で「地球160周分」走る 他
2月28日 先日述べた「鉄道に並走する高速や専用自動車道が排出する年間の規制物資の測定」について少し掘り下げてみた。規制物質の測定は、①複数の定点観測で(環境的な視点から)大気の測定を行う方法、②通行した車種と通行車両数を計測、車に搭載される排気系の排出値*車両数から測定する方法等があると考えられる。②は自動車走行データ(*参考1:国土技術政策総合研究所)や、排気系装置のメーカー(*出典1:マークラインズ)に協力を仰ぎ、車両や年式、車両に搭載される排気系等のデータベースが必要となるかも知れない。非コネクティッド化車両における車両計測は、料金所などで画像解析の活用が想定される。首都高速道路㈱には、羽田(*高速大師橋更新工事のため、測定休止)、護国寺、錦糸町など全部で18局の環境監視局がある。また首都高速道路沿道には、自治体が管理する環境監視局(17局)も存在する。これらが相俟って首都高の測定ネットワークを構築している。NO2、SPM(浮遊粒子状物質)、PM2.5(微小粒子状物質)や経年変化などの測定結果も公表されている(*参考2:首都高速道路株式会社)。別な話題だが、ジオテクノロジーズ(デジタル地図)とHERE Japan(位置情報基盤)は、2017年から戦略的パートナーとして提携、「OneMap Alliance」を結成している。プラットフォーム的性質の地図情報と、プラットフォームに付加価値的な情報を与える位置情報(ロケーション・サービス)の親和性の高さは、比較的以前から自動車業界、通信業界、飲食や小売、IT業界等、さまざまな産業に周知・注目されて来た。両社の情報・サービスは主に自動車産業、とりわけナビゲーションシステムに焦点を当て、開発されて来た。今後は、両社は培ってきたデータやサービスを、自動車業界の世界標準化に向け整備、グローバル向けに用意したサービスを、日本(ローカル)に落とし込んで行くとする。同時にこれまで集積してきたデータなどを、自動車製造以外の産業にも反映させていく意向だ。その中には、車両や運行管理に当たるフリートマネジメントや流通の最適化などが挙がる。また、その視野には「メタバース」も含まれる。両社のプラットフォーム役割は、メタバース(現実世界とは異なる3次元の仮想空間やそのサービス)における、縁の下の力持ち的存在になるという。メタバースの領域内で、地図・位置情報がどのように利用されるのか?仮想世界で行われるショッピングやビジネスユースにより、現実の移動が削減されれば、CO2削減にもつながる可能性があるという。また別な方面からのアプローチとなるが、地図情報をCO2が多く排出される地域や、反対に酸素が産出される地域をプロット(観測値を把握、グラフ化)出来れば、「排出権やオフセット分の売買」を実現出来ると考えている。環境省の「温室効果ガス排出の現状等」では、我が国の温室効果ガス排出量(2019年度速報値)は、総排出量:12億1,300万トン、前年度比:-2.7%、2013年度比:-14.0%、2005年度比:-12.2%であり、温室効果ガスの総排出量は、2014年度以降6年連続で減少し、排出量の算定が始まった1990年度以降、前年度に続き最少を更新している。排出量減少の要因としては、エネルギー消費量の減少(省エネ等)や、電力の低炭素化(再エネ拡大、原発再稼働)等により、エネルギー期限のCO2排出量が減少したことなどが挙げられる(一方で、冷媒におけるオゾン層破壊物質からの代替に伴う、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量は年々増加している)。ちなみに、エネルギー起源CO2排出量(10億2,900万トン*2019年度速報値)の部門別内訳は、電気・熱配分前排出量では、エネルギー転換部門(42%)が最も多く、次いで産業部門(27%)、運輸部門(20%)と続く。電気・熱配分後排出量では、産業部門(38%)、運輸部門(20%)、業務その他部門(19%)の順となる。産業部門別のエネルギー起源CO2排出量3億8,600万トン(*2019年度速報値)の排出量トップは、鉄鋼業(40%)。次いで化学工業(14%、含石炭石油製品)、機械製造業(11%、輸送用機械器具製造業4%、電子部品デバイス電子回路製造業3%、その他4%)、窯業・土石製品製造業(8%)、パルプ・紙・紙加工製造業(5%)、食品飲料製造業(5%)、プラスチック・ゴム・皮革製品製造業(3%)、繊維工業(2%)、他製造業(6%)、非製造業(6%)の順だ。業務その他部門からのエネルギー起源CO2排出量の内訳は、業種別排出量では卸売業・小売業(21%)、宿泊業・飲食サービス業(13%)、医療福祉(11%)、生活関連サービス業・娯楽業(9%)、教育・学習支援業(8%)、廃棄物処理業(7%)、電気ガス熱供給水道業(5%)、運輸業・郵便業(4%)、その他(14%)、分類不能・内訳推計誤差(8%)となる。環境省の定義によると「カーボン・オフセット」とは、日常生活や経済活動において避けることのできないCO2等の温室効果ガスの排出について、先ずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方を言う。紆余曲折があったが、現在日本では「J-クレジット制度」(*参考3:J-クレジット制度)という仕組みが作られ、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証するという制度がある。同サイトでは、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用により、ランニングコストの低減や、クレジットの売却益、温暖化対策のPR効果をアピールしつつ、排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法等を規定(該当する方法論がない事業については、新たに登録することが可能な場合もある)、同時にクレジットの売買を行っている。鉄道事業者が、CASEや地図・位置情報、コネクテッドカーの走行情報を利用し、高速道路や専用自動車道を含めた沿線の温暖化ガスを排出する企業等とカーボン・オフセットの取引を行うことで、車両や設備更新や路線維持に資する自助努力は可能だ。その先に路線維持による地元経済との協業を据えれば、鉄路にもより良い未来が見えてくるのではないか。売買に必要となるノウハウは国交省・環境省が持ち合わせている。*参考1 http://www.nilim.go.jp/japanese/organization/k_honbu/kankyosymposium/13-08.pdf、*出展1 https://www.marklines.com/ja/report_all/wsw0022_201608、*参考2 https://www.shutoko.co.jp/efforts/environment/review/air/、*参考3 https://japancredit.go.jp/