自動運転バスは雪道を走れるか? 北海道で実験、見えた期待と課題

MaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、運営主体を問わず通信技術の活用により、マイカー以外の交通手段による移動を1サービスとして捉えシームレスにつなぐ新たな移動手段の概念です。AOSデータ社は、MaaSをより安心して利用できるよう、リーガルテクノロジー(自動車フォレンジック)で貢献します。

自動運転バスは雪道を走れるか? 北海道で実験、見えた期待と課題


自動車フォレンジック関連サービス(Related forensics services)


AOSデータ社の自動車フォレンジック関連サービスは、予期せぬインシデントが起きてしまった場合、事後対策として車載デバイスやメディアなどから、お客様の必要とされるデータの抽出・解析調査・レポーティングを迅速に行うサービスです。

関連記事

2028年に869.1億米ドルに達する世界の自動車データ収益化市場規模 他
inadani-spring2_w150.png

3月8日 3/3に株式会社HYAKUSHOは、長野県飯島町にてスマートモビリティシステムの企画・開発・製造・販売を手掛けるZenmov株式会社と共同実証実験として「二次交通用のEVカーシェアリング実証実験」を始めた。同町は長野県の南部、伊那谷のほぼ中央に位置する。東に南アルプス、西に中央アルプスを望む位置にある。町内の交通は、中央自動車道、JR飯田線、国道153号線となり […]

風雲児テスラ、ソフトを主役に 「進化する車」で自動車業界揺さぶる 他
Charging-stand_w150.png

3月7日 この3/3にデロイトトーマツグループは、全世界25か国以上の消費者を対象に自動車産業に影響を与える様々な課題に関して調査した結果をもとに、日本や米国を含む13か国の地域の消費者意識を考察しまとめた「2022年 デロイトグローバル自動車消費者調査」を発表した。※本調査は2021年9月~10月に実施され(コロナ禍における生活環境の影響を受けた調査結果であると考えられ […]

自動運転本格化を見据え、クルマを走るエンタメ空間として再定義 他
odakyu_rommance-car_w150.png

3月4日 MaaSアプリの普及に伴い、MaaS運営主体ではアプリの「使い方」に知恵を絞っている。2022現在のMaaSアプリをいくつか挙げるなら、小田急のEMot(エモット)、西武のSeMo(セーモ)、沖縄MaaS、仙台MaaS、広島電鉄のMOBIRY、京王のTAMa-GO(タマ・ゴー)、トヨタのmy route、MaaSアプリの元祖とも言えるフィンランドのマースグローバル […]

記事一覧へ 〉

Impressions:3月9日 2021年の12/15~19まで、に北海道の上士幌町で、ボードリー(BOLDLY/ソフトバンクの子会社)が自動運転バスの冬季運行の実証実験を行った。同社の発表によれば、氷点下となることが予測される環境下で、行政と連携し除雪や凍結防止の道路環境整備を施した上で、自動運転バスを走らせ、積雪による周辺環境の変化や、ぼたん雪などが各種センサーにどのような影響を与えるのか、また氷点下の環境における車両の走破性、路面凍結への対策の有効性などを確認するための実験とのことだ。実験では、フランスのNavya社の「NAVYA ARMA」と呼ばれる自動運転車両に、スタッドレスタイヤをはかせて走行を試みた。ボードリーは過去にも、上士幌町で自動運転バスを走行させた実績がある。ボードリーの自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher」を使い、遠隔からリアルタイムに自動運転バスの運行状況の記録や把握を行い、運休や再開などの運行情報を利用者などに報せることで、利用者の利便性向上、サービスの品質向上にも役立てる。上士幌町では、本冬季運行試験について試験中の乗車を「どなたでも」(但し予約者優先)として町民の利用を促進している。コース上の停車場所の一部は、十勝バス、北海道拓殖バスのバス停やタクシー乗り場と共用することとしている。また、町内の停車場所には「道の駅かみしほろ」や「かみしほろ情報館前」「カミシホロランドリー」「カミシホロホテル」「上士幌町交通ターミナル」「かみしほろシェアオフィス」など、何れも上士幌町の活性化のため近年整備されたと思われる施設を選定しており、新たな公共交通の利用と同時に、これらの施設の利用・活性化も垣間見られる。バスは実証実験期間中、一日20便が設定されており、朝8時台から、夕方18台までほぼ1時間おきに運行される。上士幌町では、町役場から半径1km以内に主要施設や住宅が密集しており、コンパクトなまちづくりが進む。18時台は日没後となるため、自動運転車両はヘッドライトを点灯し、走行する夜間走行もこなすことになる。今回のルートは、町のブロードウェイとも言える337号線にほぼ並行して設定され、上士幌町交通ターミナルの部分だけ、337号線にアクセスすることとなる。言うなれば町域の全てから、新ブロードウェイ沿いの新たな施設に、自家用車ではなく公共交通を利用して足を運んでもらうお試しコースとも読める。新たな足が定着するなら、カミシホロホテルや道の駅かみしほろ等は、観光客用のプチ観光ルートを想定しているのかも知れない。しかし、これらの期待も冬季に自動運転バスが少なくとも足と言える頻度で運行できなければ、元も子もなくなってしまう。このため、今回の実験では冬季に積雪が予想される当地において、自動運転バスが安全に走行できる環境を整えるため、除雪車を動員し、自動運転バスの走行路の路肩白線まで除雪作業を行ったり、交差点や停止線付近に凍結防止剤を散布するなど、車両側だけでなくインフラ側にも雪や氷点下などの環境にも対応できるよう配慮している。これらの対策を施した上で、積雪時の自動運転バスの運行を前提とした適切な除雪作業の実現、積雪などによる周辺環境の変化が、自動運転バスのセンサーによる自己位置推定機能に与える影響度合いを把握したり、降雪時にぼたん雪などが自動運転バスのセンサーにより障害物として検知される度合いの把握、氷点下における車両の基本的な動作性能の確認(「NAVYA ARMA」の動作保証条件は気温が氷点下10度以上、上士幌町の12月平均気温は氷点下4.8度)、路面凍結においては、スタッドレスタイヤの走破性、凍結防止剤によるスリップ防止の有効性などが確認されることとなった。この他にも様々な国や団体において、雪道での走行を実現させるための取り組みが行われている。雪道において技術的なハードルが上がると言われるのは、自動運転に必要とされる「認知」や「判断」機能に天候や走行環境の影響があるからと言われる。具体的には車両に搭載されているカメラやセンサー等の認知機能の低下などが課題となる。これにより影響を受けるのは、車載カメラで車線の白線を認識し、車線逸脱を防ぐレーン・キープ・アシスト機能である。また、車両周辺の物体との距離や位置を測定するLiDARも、降雨や降雪の影響を受ける。またLiDARなどの情報をもとに生成される、高精度3次元地図なども、除雪された雪山や雪に埋もれ標識が認識できなくなる等、既に登録された位置情報との差異が大きくなるため、正常な判断ができなくなる。しかし、北米、アジア、欧州などの市場において、雪道の走行はほぼ必須条件となる。このためフォードなどは、豪雪地帯となるミシガン州の大学などと雪道走行の実験を重ね、積雪により車載カメラやセンサーなどが路面の表示を読み取れない状況においては、解像度の高い3Dマッピング技術と高精度のLiDARの組み合わせ、これらにESC(横滑り防止機能)やトラクションコントロール(エンジン出力の調整)を連動させることで安全な雪道走行の実現を目指しているという。「宇宙のまちづくり」を目指し、1980年代に「航空宇宙産業基地」の候補地とされた北海道の大樹町では、航空や宇宙分野での実験や飛行試験の誘致に積極的だ。「大樹町多目的航空公園」では、JAXAを始めとする民間企業や大学により様々な実験が行われており、2021年4月より宇宙港「北海道スペースポート」(HOSPO)を本格稼働させている。同町では、2017年12月に20人乗りのマイクロバスを使用し、衛星から送られる測位情報や道路に敷設した磁気マーカーを利用した雪道の走行実験が行われている。2021年2月には、中小企業庁の「サポインマッチナビ」(ものづくり中小企業のビジネスマッチングサイト)において、㈱ヴィッツ、アーク・システム・ソリューションズ㈱が「AIやセンサーを活用した状況確認技術を積雪環境に対応させ、積雪寒冷地域での自動運転技術を開発」プロジェクトへの参加を募っている。同社では、寒冷地域での自動運転には、積雪により車両周囲の状況認識が困難になることを技術課題と捉え、「状況認識技術」を積雪環境に対応させ、雪道走行が可能な自動運転車の開発を加速させ、地域が抱える交通弱者の課題解消に貢献することを目的に開発に取り組んでいる。同社はこれまで、積雪環境で機能する自己位置推定技術の開発(ダイナミックマップを利用しない「Snow-SLAM」方式)や、積雪環境の仮想シミュレータ開発、グローバル経路計画との連携技術開発などの開発成果を上げている。実験のアドバイザーには、トヨタ、アイシン精機、日本自動車研究所、情報処理推進機構、北海道立総合研究機構などが名を連ねる。フィンランドのSensible4(センシブルフォー)は、フィンランドのエスポ―市発のスタートアップだ、同市はフィンランドの南部都市だが、冬季には、平均気温2℃未満の日が続く。2月の平均は-8℃にもなる。同社は、このような都市で全天候型自動運転ソフトウェアの開発を続ける。ちなみに同社の自動運転ソフト「DAWN」を搭載して、同地で走行するのは日本の無印良品の「GACHA」だ。バスの自動運転化が先か、除雪車の自動運転化が先となるかは、まだわからないが、極寒の地を自動運転バスをはじめとして多様なサービスカーが生き生きと走る日を楽しみに待ちたい。

(※)上記記事の閲覧は各社の利用規約等に従うものとします。リンク先が各WebサイトのTopページに遷移する場合や、全文を閲覧するためには、ご覧になりたいサイトに会員登録が必要となる場合などがあります。予めご了承ください。