7月15日 産総研が2019年度の公募により選定した5つの地域で、中型自動運転バスによる実証実験を開始すると発表した(7月10日)。従来は実証実験に小型バス(福岡県北九州市・苅田町地域)を使用して来たが、今回はバスモデルの事業性の向上させるため、昨年度より開発してきた中型バスを用いる。この実験を実施するバス運行事業者は、京阪バス株式会社(滋賀県大津市)、神姫バス株式会社(兵庫県三田市)、西日本鉄道株式会社(福岡県北九州市、苅田町)、茨城交通株式会社(茨城県日立市)、神奈川中央交通株式会社(神奈川県横浜市)の5社となる。本実証実験は実際に乗客を乗せて(安全のため、着座のみ)行われる。また実証実験に伴い、各社では出発式を開催する。このうち京阪バスでは出発式を7月11日(土)にJR大津駅北口(びわこ口)駅前広場にて10:00~開催予定、神姫バスは7月19日(日)にウッディタウン市民センター芝生広場にて10:00~開催予定だ(*コロナウイルス感染拡大の影響などにより変更となる場合があります)。
「MaaSのデータ連携」方向性の周知図る 有識者がフォーラム開催 他
7月14日 MaaSの実現に不可欠となるデータ連携が円滑に行われるため、国交省はこの3月にデータ連携の為のガイドラインである「MaaS関連データの連携に関するガイドラインVer.1.0」を発表している。ガイドラインの作成に参画したみずほ総研がこの6月にオンライン上で「Mobility in a New Era:変革期を迎える移動 MaaSによる新たな社会」を開催した。MaaSのデータ連携は、簡単にはMaaSプラットフォーマーの有するMaaSプラットフォームをAPI等により連携させるイメージだ。ガイドラインは、各ポジションから連携を行う際の留意点を整理しているが義務付けはない。留意点として今回は災害時や非常時の運用は想定されていない。昨今の種々の災害などの状況を鑑みても早急な整備が求められる分野だ。また構築したプラットフォームを軸に、医療や福祉、警察・消防、農業、商業、運送業、飲食業など、さまざまな近接分野の移動やサービスとの連携が期待される。連携するデータの範囲の広さから、改めてMaaSの経済・社会への影響の大きさを感じる機会となった。
車載ディスプレイ部材世界市場、コロナ禍で減速も2021年には回復 矢野経済予測 他
7月13日 久々にタクシーに乗車した。車内の搭載機器の数や変化に目を見張るものがある。一昔前にはカーナビが装備されていれば目新しさを感じたものだ。取り分けディスプレイの多さには目を見張るものがある。2020年の世界の自動車生産台数は凡そ8900万台といわれるが、2020年はコロナウイルスの影響により大幅な縮小が見込まれる。これに紐づいて車載ディスプレイ市場も減産を余儀なくされるが、一方で今後CASE対応する車両は増えることから、統合コックピットやヘッドアップディスプレイやミラーなどの新たな分野へのディスプレイの活用も見込まれるため、早期の生産量の回復も期待されている。今後、コロナ禍の影響は復調するディスプレイの機能や市場戦略にも微妙な影響を与えそうだ。従来車載ディスプレイはタッチパネルが主流だったが、今後は可視化したい広告情報などは非接触方式のディスプレイ、副次的に可視化すればよい良い情報は、個人が所有するスマホのディスプレイに委ねるなど、その用途は分かれる可能性がある。その意味ではディスプレイ市場とNFC市場、ジェスチャー入力などとの技術的な融合や協業が進んでゆくのかも知れない。
KDDI、3密を避けた「相乗り通勤タクシー」。新たな通勤スタイル実証実験 他
7月10日 KDDIと国際自動車(km)未来シェアの3社はオンデマンド相乗り通勤タクシーサービスの実証実験を実施する。実験では、通勤の混雑緩和、移動時の感染防止、渋滞の回避、ユーザー受容性の把握などを検証する。使用される車両では、3密対策として、相乗りながら少人数での移動、ソーシャルディスタンスを考慮した座席設定、常時換気、送迎後の車内アルコール消毒、ドライバーおよび乗客の事前検温、マスク着用、飛沫防止カーテンなどの対策が行われる。実験に参加する株式会社未来シェアは函館市の公共交通の課題を解決するために「SAVS」(スマートデバイスとアプリの通信を利用、タクシーや路線バスの走行ルートをAIがリアルタイムに決定する)と呼ばれるサービスを、公立はこだて未来大学、名古屋大学、産業技術総合研究所と共に開発、全国各地で実証実験の実績を積み重ねている。サービスとしては2017年に名古屋のつばめタクシーの運行するエアポートリムジンの配車システムとして採用された。
WILLER、モービルアイ:日本・台湾・ASEANにおける自動運転ソリューションの提供に向け協業 他
7月9日 WILLERとモービルアイ(Mobileye)が協業を決めた(日本・台湾・及びASEANにおける自動運転ソリューションの提供)。両社は2021年に日本の公道でロボタクシーのテストを開始することを目指し、2023年には完全自動運転によるライドヘイル(配車サービス)及びライドシェアリングサービスを開始したい計画だ。WILLERはHDと傘下に子会社としてバス・鉄道会社を持ち、これまでもASEAN地域(シンガポール、台湾、ベトナム)において、各地域の交通課題を新たなモビリティーサービスによるソリューションを提供し、その解決を試みて来た。WILLERの村瀬氏は、国内で課題とされる乗合いバスや地方鉄道会社の利用者減少や赤字に対して、国内とASEANで培ったノウハウを相互に供給し合い、国内の安心・効率・快適を地方交通に反映したいと考えている。自動運転については技術開発ではなく、運行管理や高い付加価値を持つサービスの創出を立脚点とするようだ。ある大手のタクシー会社は広告を生業に、WILLERはITを使ったマーケティングを取り込んでいる。交通事業者のMaaSビジネスへの関わり方の共通点として、本業を持続させるための、近接領域の取り込みというアプローチの仕方が垣間見える。
国内MaaSにおける協調領域の創出を。JCoMaaS総会・シンポ開催 他
7月8日 この6月にJCoMaaSの総会がオンライン上で開催された。同団体は2018年からデジタル技術と交通サービスの融合によるイノベーションを実現するため、地域社会や交通業界、産業界と連携しつつ、多岐に亘る研究活動や成果の公開(講演・研究会活動等)や発信(通信教育の開発・出版物発行・調査研究・政策提言・助成・内外の公的機関、諸団体との連携)を通じ、MaaS推進・社会貢献を行っている。実証実験に明け暮れた2019年を経て、日本は技術成果や運用の為の知見の整理・統合ステージにいる。本年度の総会には計53団体(6/22時点)が参加していることからも、本活動への関心の高さを伺い知ることが出来る。コロナウイルスの影響により、MaaSに関わる全ての領域に想定外の対応が求められる事態となり状況は複雑化した。MaaSの本質的需要とコロナ社会が求める過渡的ニーズを上手に区分・包括しながら、日本版MaaSの目利きとして一翼を担っていただきたい。
「Web MaaS」は回遊経済の真骨頂となるか?——アクアビットスパイラルズ、非接触技術「スマプレ」で大津の自動運転バス実証実験に参加へ 他
7月7日 Near field communication、略語はNFC。スマホなどに搭載されている近距離無線通信のことを言う。NFCを搭載した機器同士の通信ができる。代表例は毎日通勤でも使うSuicaやコンビニ決済だ。国内ではSONYのFelica(フェリカ)が有名だ。iPhoneでは「Apple Pay」に使われる。滋賀県大津市で実施される自動運転バスの実証実験では、アクアビットスパイラルズ(東京都港区)がQRコードとNFCを使い、バスの乗降時に必要とされるorigin-destination情報の取得を日本ユニシスが、利用者の乗車認証と料金徴収やMaaS連携機能を同社が提供する。交通事業者にとって耳寄りなのは、同社の「PayChoiice(ペイチョイス)」を使うことで、NFCチップの入ったQRコード入りのステッカーを貼るだけで、バスの出入口付近に読取り端末を設置せず「非接触決済」可能な環境を導入できることだ。長い目で見れば、NFCリーダーやライターなどの設備投資や運用コストの削減は、サービス自体の持続可能性を高められると思う。
あいおいニッセイ同和損保とMS&ADインターリスク総研、「舞鶴市共生型MaaS」に参画 他
7月6日 京都の舞鶴市にて「共生型MaaS」の実証実験が始まった。実験は舞鶴市と住民同士の送迎とバス・タクシー(公共交通事業者)が利用者の移動手段の最適化を図るもの。地方社会における移動課題の解決と持続可能な移動システムの実現を目指す。国内の実証においても、当初ライドシェアと公共交通事業者の共生は難しいとされて来た。ライドシェアを拒絶した根本的な理由には交通事業者の台所事情もあろうかと思う。ドライバーの高齢化や人手不足などに重ねて、事業領域が侵食されるのは辛いことだ。だが最近、多少風向きが変わって来たようにも思える。公共交通事業者が、自社で配車アプリ運営や広告配信事業などを手掛けることで新たな収益源を獲得できる可能性が出て来た。しかしながら、そのような手法を取り得るのは、全国展開の大手事業者に限られるのかも知れない。自治体や地方運輸局などはJAなどのイメージで、地方の零細事業者向けにアプリや広告配信システム、決済システムなどを一元化し(交通事業者への保険提供などと併せ)運用コストを低減した形で、システムの貸与か提供し、共生を後押し出来ないか。
MaaS事業開発を推進する「MONETコンソーシアム」に参画します 他
7月2日 損害保険大手3社における次世代モビリティサービス向け保険の商品開発も盛んだ。①損保ジャパン日本興亜ホールディングス、②MS&ADインシュアランスホールディングス(三井住友海上HD、ニッセイ同和損害保険、あいおい損害保険が経営統合)、③東京海上ホールディングスの導入状況を調べた。①の損保ジャパンは愛知県の2020年度「自動運転社会実装プロジェクト推進事業」に参画。2019年2月からアイサンテクノロジーやティアフォーと業務提携し、自動運転サービス実証向けにインシュアテックソリューション「Level Ⅳ Discovery」の開発を進めている。②(三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険、インターリスク総研)は、2017年11月に「不正アクセス・車両の欠陥等による事故の被害者救済費用特約」等の販売(2018年1月~)を発表している。同グループの三井ダイレクト損害保険は、この度、MONET Technologiesに参加、プラットフォーマーと連携、MaaSやCASEに関する情報収集に乗り出した。③の東京海上日動火災保険は、この6月にMaaS Tech Japanと業務提携を行い、MaaSサービス及び保険商品(被害者救済費用等補償特約)の開発を始めている。ちなみに名古屋銀行は2019年10に「自動車産業サポート室」を営業企画部内に新設、産業分析や業界動向についての情報収集、定性分析を活かした情報や知見を本部・営業店への情報発信、自動車業界のサプライチェーンに対しては各種のソリューションの提案を開始している。
「未来の都市で人々の行動はどう変わるのか」アフターコロナのまちと賑わいを考える対談 他
7月1日 アフターコロナのまちづくりについて考える。MaaSによって蓄積されたデータがもたらすのは何か?MaaSはアプリ上で移動の利便性を上げるだけでなく、本当にまちづくりに影響を与えて行くことが出来るのか?よく話題に上がるのは、公共交通の利便性の向上、人流の可視化や新サービスの創出だ。コロナ禍は人の集合に立脚した経済に向かって「非接触やソーシャルディスタンス(人の分散と経済の両立)」の必要性を迫った。少々広い視野で見るなら、これまで聖域と言えた「都市中心の経済」は「地方分散型の経済」の創成というニューノーマルを迫られているとも考えられる。とは言え、昨今地方だって豊かさばかりとは言えない。社会はどちらに向かうのか?その答えは未知数だが、MaaSが双方のメリットやデメリットをこれまでになかった精度で可視化できることは確かだ。人の分散した社会において、従来と同様の経済を成り立たせることが出来る可能性を持つのは、MaaSにより蓄積されるデータだ。