1月6日 警視庁は昨年8月に東京オリンピック・パラリンピックの選手村で、トヨタの「e-Palette」が視覚障害のある選手に接触した件で、車両を操作していたトヨタ社員を自動車運転処罰法違反の疑いで、近く書類送検する方針を固めた。接触事故の当時「e-Palette」には「レベル4」相当の機能が搭載されていたが、実際の運行は「レベル2」で行われていた。現在、車両が「レベル2」で運行する場合、運行の責任主体はドライバーと定められている。事故当時、車両がT字路に右折進入する際「e-Palette」は交差点内の人を感知し、一旦停止した。その後オペレーター(前述の社員)は、車両周囲の安全を確認した上で車両を発進させ、交差点周辺状況を確認し、手動で減速を始めた。その際、さらに道路を横断してきた視覚障害のある歩行者(選手)を、センサーが再び検知して、自動ブレーキが作動、重ねてオペレーターも緊急ブレーキを作動させたが、車両停止前に歩行者と接触が起きている。車両周辺の状況は、信号機のない交差点内に二人の誘導員が配置されていたが、複数方向からの歩行者、車両の動向を確認出来なかったとのことだ。これに加えて、誘導員と車上オペレーターの連携も十分でなかった点も指摘されたようだ。あらためて、今回の接触事故を見直してみると「e-Palette」のセンサー類は正常に動作している様子が伺える一方、運行に携わる「ヒューマンエラー」が大きな要因となっていることが浮き彫りとなる。自動運転車両の社会実装が進んだ段階では、今回のように自動運転車以外の要因で発生する事故が増えるであろうことは容易に予想できる。今回の事故は数多ある事故の一例とも言える。本件については、予め人間の確認不足や同時処理能力の限界を織り込んだ、車両周辺の警戒システムの進化につながることを期待したい。今回の事故でもう一つ注目したい点は、視覚障害者であった選手が事故に遭っている点だ。オリンピック選手村や高速道路区間、工場の敷地など、限定された空間における自動運転車両の運用は(そのまま限定空間で利用される場合もあるが)、社会実装までの過渡期の運用に過ぎない。完全な社会実装に至るまでのロードマップを進めば進むほど、混在空間での運用は増える。自動運転車両を公共交通機関の一角として据えることを目的とする以上、システム開発や実証実験の段階から、常に社会の多様性を考慮したソフト・ハード設計が大前提とならなければならない。今後は、開発初期段階から、最終的な完成品の利用段階に至るまで、自動運転に関わる一人一人に、広く自動運転(車)の特性を啓蒙していく必要がある。警察や教習所、メーカーの社員教育機関、学校、自治体や安全関係の団体などの一層の連携や、安全教育メニューの進化・充実が期待される。彼らに必要となるのは、運輸安全委員会をはじめ、警察機関や保険会社などが持つ、自動運転関係を含む膨大な事故データだ。可能な限り自動運転に関する事故の低減を図るため、各所のデータを連携させ・活用できるプラットフォーム化が急がれることになるのではないか。
トヨタが自動運転対応の車載OS「プラットフォーム化」を検討 他
1月5日 ソニーグループ株式会社は、1/5に米国のラスベガスで開催された「CES 2022」にて、再び「VISION-S」を発表し、試作モデルとなる2モデルを展示した。発表されたのは既報のVISION-S 01(以下、01)と呼ばれるクーペと、VISION-S 02と呼ばれるSUVだ。同車は2020年1月のCESで初公開され、車上における新たなエンタテインメント、AIや通信、クラウドを活用した車載ソフトウェア制御、イメージ・センシングなどの技術の表現媒体として位置付けられ、展示されていた。その後、オーストリアのグラーツ(試作車の製作を担ったマグナ・シュタイア社の拠点が存在する)や東京などで開発が進められていたものだ。2020年12月からは、欧州で公道走行テストを開始、2021年4月からは5G走行試験などを行ってきた。同社のWebサイト(https://www.sony.com/ja/SonyInfo/vision-s/news.html#entry13)に拠ると、VISION-S 02(以下、02)のコンセプトムービーが視聴できる。02は、プロトタイプとなる01と共通のEV/クラウドプラットフォームを採用した7人乗りのSUVであることが分かっている。VISION-Sは、CMOSイメージセンサーやLiDARなどを搭載するとともに、緊急車両の走行など周辺環境の把握・判断を助ける車内の音響システムやHMIシステムと連動したドライバーインタラクションを持つ。またADAS(運転支援機能)Level2+の検証を欧州で行っているようだ。車内では、ToF方式の距離画像センサーを用いてドライバー認証や同乗者のモニタリングを提供するとともに、ジェスチャーコマンドや音声コマンド技術で「直感的なクルマのインターフェイス」の開発も続ける。また、車両のコクピット・パネル(パノラミックスクリーン)などにおいては、ディスプレイテーマや加減速音の設定機能を付加するなど、テクノロジーを咀嚼し「ソニーらしさ」を織り込むことも忘れない様だ。コネクティビティの面では、5Gを含むモバイル通信で車両とグラウ度を連携、車両設定、キー施錠、ユーザー設定などが同期され、アップデートはOTAで反映させ、セキュリティやサービス機能などを継続して提供して行く、としている。また、同グループとVordafone Germanyは、5G環境下における「リモート運転」の開発をドイツのアルデンホーフェン(ドイツのFEV*のテストコースがある)で実施してきた。東京と同地をVISION-Sのテレマティクスシステムを用いて、映像・制御信号を伝送、車両の操作に成功している。(https://www.sony.com/ja/SonyInfo/vision-s/news.html#entry15)また、車両には立体的な音場を実現するシートスピーカーが搭載され、「360 Reality Audio」に対応したストリーミングサービスなども楽しめるようだ。同社は今回のCESにおいて、2020年春に新事業会社「ソニーモビリティ株式会社」を設立し、「VISION-S」のEV市場投入を本格的に検討して行くとしている。新会社では、AI・ロボティクス技術を活用し、人とロボットの共生や社会貢献を目指すとしている。「VISION-S」には、今まで同社の培ってきた様々な技術と、市場の期待、ソニーを愛する人々の夢が詰まっている。SONYの進む「新たなフェーズ」に期待したい。*FEV(独)は、エンジンの設計・開発、従来型、電気式及びそれに代わる自動車運転方式の設計と開発、エネルギー技術などのサプライヤ。自動車メーカーに試験設備や計測装置などの提供も行う。1978年、アーヘン工科大学応用熱力学研究所所長を務めたフランツ・ピッシンガー教授の非公開会社として設立されている。
米中独、自動運転「レベル4」後押し 公道試験や法整備 他
1月4日 昨年度、自動運転「レベル3」で高速道路を走行するホンダレジェンドの、試験的とは言え、一般消費者へのリース販売を経て、今年度から業界が挑むステージは、いよいよ自動運転「レベル4」ということになった。国土交通省自動車局が発表した「自動運転車の安全技術ガイドライン」(平成30年9月)によれば、レベル4の定義概要は「システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において実行」とあり、安全運転に係る監視、対応主体においては、レベル3の場合の「システム(作動継続が困難な場合は運転者)」と大きく異なり、レベル4においては、シンプルに「システム」とされている。世界に目を向けると、物流トラック(FedEx、Aurora・Paccar、ダラス-ヒューストン間、試験プログラム)やレベル4による自動運転は、走行地域こそ限定されるものの営業走行(サービスカー)に向けた動きは、既に米国(Cruise・Waymo、カリフォルニア州自動車局、有償自動運転サービス認可*)や中国(百度、北京、ライドシェア)などで始まっている。*カリフォルニア州で有償ロボタクシーサービスを行うには、この後、更に公益事業委員会の許可が必要となる。国内においては、2021年2月に新東名高速道路において、後続車無人隊列走行技術が実現されている(車速80km/h、車間距離:9m)。「高速道路における隊列走行を含む高性能トラックの実用化に向けた取組」では、2025年以降に高速道路でのレベル4自動運転トラックやそれを活用した隊列走行を実現し、次段階として「混在空間でレベル4を展開するためのインフラ協調や車車間・歩車間連携などの取組」が、2025年頃までに協調型システムにより、様々な地域の混在交通下において、レベル4自動運転サービスを展開する。「レベル4」におけるサービスカーの現状はどうかというと、2022年度(本年度)を目途に限定エリア・車両での遠隔監視のみ(レベル4)で自動運転サービスを実現しようとしている(福井県吉田郡永平寺町、ラストマイル、レベル3:2021年3月認可)。この次段階として、対象エリアや車両が拡大され、事業性を向上するための取り組みがなされ、2025年度まで多様なエリアで、多様な車両を用いたレベル4無人運転サービスを40カ所以上実現する、としている(経産省「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト(RoAD to the L4)」)。様々な資料の情報の軸が一様ではないので、整合性が取れた情報とは言い難い部分もあるが、おおよそ2025年頃、国内においてもMade in Japanで、高速道路や廃線跡、といった限定空間から離れ、移動サービスの提供が可能な水準にある「レベル4」が社会実装されそうだ。報道される「自動運転技術」の周辺において、同時に進展が求められるニッチな分野が幾つかある。評価面では、AIが運転する自動車の安全規格や、評価・認証方法、製造面では、AIが運転する自動車を評価するために必要な、製造データの収集方法、保険においてはAIが運転する自動車が事故を起こした場合の補償の方法などの進化などが待たれる。公的機関による事故調査や保険調査などの面では、近年、事実究明のため「フォレンジック」技術が用いられる場面(参考:https://www.fss.jp/case_ncs/)も増えている。これらの分野に基づくサービスも「レベル4」の社会実装により、需要は高まって行くものと思われる。
最先端を行く伊那市のDX、Maasで診察する「モバイルクリニック」 他
12月28日 長野県伊那市で進むデジタルトランスフォーメーション(DX)の主な取組みには、「モバイルクリニック」「ぐるっとタクシー」「ゆうあいマーケット」がある。このうち「モバイルクリニック」は、移動する診療室として、遠隔診療と服薬指導などを、自宅付近まで移動して来る診療車に同乗する看護師のサポートで、移動が困難な高齢者などが安心して医療を受けられる仕組みだ。日本のMaaS実証実験期の比較的早い時期から行われたため、先進事例としてメディアにも頻繁に取り挙げられている事例だ。異なる組織である自治体と医療が、鉄道で言うところの上下分離方式(インフラは自治体持ち、モビリティ運行は公共交通事業者が担う方式)により進められており、伊那市はモバイルクリニックを運営し、医療機関が実際の在宅医療部分を担う。医師は保険診療と、自由診療(自費診療)を問わず、自由に活用できる。モビリティ運行部分に関しては、自治体予算でバス事業者に委託して運行する。サービス内容は、看護師による医師と患者双方のスケジュール予約、サービスの核である「Zoomを用いたオンライン診療」、車載される診察機器(血圧計、パルスオキシメーター、血糖値計、心電図モニター、AEDなど)の利用、医療・健康情報共有クラウドシステムの利用などだ。最近では、検体検査なども採用されていると聞く。クラウドシステムは、車内PCで患者のカルテの共有(医師や看護師、薬剤師などが利用)、受信履歴の入力や管理が出来る(IIJ電子@連絡帳サービス)。この仕組みは厚労省や総務省、経産省などの「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(厚労省)や「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」(経済産業省・総務省)に準拠している。同事業は実証で終わらず、今後も範囲を拡大しながら継続して市民に提供される。新たな取り組みで特筆すべきは、看護師の他、介護を必要とする患者のため、ケアマネージャーの同乗が追加されたことだ。「ぐるっとタクシー」は、この10月から同市の竜東・美篶・手良地区及び高遠町地区で運行する、AIで配車手配を行う乗り合いタクシー事業だ。65歳以上の方、運転免許返納者、障害者手帳所持者、特定医療費(指定難病)受給者証をお持ちの方、持病により運転が出来ないなど、移動が困難な事情がある方が対象で、利用するには同乗者も含め、事前に登録が必要となる。利用料金は今のところ現金払いとなる。「ゆうあいマーケット」は、中山間地域(対象は長谷地域の非持・溝口・黒河内・中尾の4地区)の移動困難者のいわゆる買い物弱者の支援サービスとして、伊那ケーブルテレビの「ライフ・サポート・チャンネル」で、利用者が注文した商品をドローンによる空輸(配送)で近隣の公民館まで届ける。慣れ親しんだテレビリモコンを使い、日用品などを注文できるので、高齢者にも使いやすいサービスだ。サービスは今年の8月から本格運用されている。こちらの利用料金は、テレビ受信料とサービス料金を口座振替する方式だ。伊那市の医療を基軸としたMaaSは、地域交通の運転手を地域訪問医療車両の運転手に転換、新たに雇用を生み出し、全国の公共交通事業者に新たな収入の道を提供している。また、同市は従来クリニックに所属する看護師を、専任看護師として採用することも検討している。また、新たなケアマネージャーの活躍の場も創出している。全国の自治体には伊那市のDXが生む医療効果だけでなく、同時に創出される「雇用」にも目を向けていただきたい。伊那市には、今後とも事業継続に頭を悩ませるMaaS事業者を意識し、情報発信していただくことをお願いしたい。以下はご参考まで。AOSデータでは AOS iDX.jp(https://www.aosidx.jp/)において、医療DXを進める医療従事者、医療機関システム関係者、外部の行政・医療提携機関に必要とされる「紙のデジタル化」「異なる組織における業務データの共有・保管」「病院のバックオフィスデータ共有・管理の効率化」を支援する「AOS MedDX」というソリューションを提供している。
実はテスラより上!? 国産メーカーの自動運転 どう違う? 「運転手主体」の裏にある安全と哲学
12月27日 カーナビやドライブレコーダー、カーオーディオのメーカーであるデンソーテン(旧:富士通テン)は、新領域として人・クルマなどモビリティのデータを集約・活用し、移動におけるお困りごとを解決する「モビリティソリューションパートナー」を謳い、将来のモビリティ社会に必要不可欠な製品や・サービス提供の道を模索している。これまで培った車載機器を通じた「車の価値向上」に加え、移動課題の解決を通じて人々の生活を豊かにする「生活の価値向上」に貢献すべく、MaaS事業化に向け、機能開発やブラッシュアップに取り組む。デンソーテンは、地域の交通事業者と連携し、バス事業者向けの顔認証技術を活用した属性別の乗降分析・マスク着用啓蒙、車内混雑の見える化に取り組む。また、最近よくメディアで聞かれる「観光MaaS」分野においても、レンタカー事業者と連携し、レンタカーの無人受付化と交通事故低減を目指した実証実験を行っている。レンタカーの予約者にスマホを活用した顔認証技術による受付および、車両の解錠・施錠、ドライブレコーダーを活用し、運転マナー動画の配布、走行中の安全運転支援のための音声ガイダンス、旅行者の行動分析、危険運転多発エリア抽出、渋滞分析、訪問先分析なども行っている。その他の地域では、ドライブレコーダーを高齢者に貸与して、安全運転の支援システムを提供しつつ、運転する車の挙動レポートを提示し、免許返納をするか否かの判断に役立ててもらうなどの取り組みも検討している。そのような流れの中で、同社は今本社のある 神戸市兵庫区にあるヴィッセル神戸の拠点ノエビアスタジアム神戸近辺で「地域活性化MaaS」に取り組む。同スタジアムはこれまで多くの大規模イベントやJリーグの試合を開催してきたが、イベント修了時に観客が帰路につく際など、周辺の交通網に一時的に大規模な混雑を引き起こすことが課題となっている。この課題に対して同社と神戸大学、楽天モバイルが連携、MaaSアプリを利用し、ポイント付与に拠る「混雑緩和・移動需要の平準化」を試みている。帰宅者の「時間」と「場所」を分散させ、混雑の緩和を促しつつ、地元経済の活性化も図る試みだ。同社はこの試みを「困ってMaaS」と命名、スマホアプリをして、利用者への提供を始めた。アプリでは移動需要の平準化を目的とし、①付近の交通状況を可視化し、②クーポンによる施設内・周辺店舗への誘導、③効率的な移動手段の提供機能を用意した。スタジアムではユーザーに分散退場を促すとともに周辺交通の混雑情報を配信、予測待ち時間なども提供、ユーザに待機を促す。また会場敷地内では、スマホを利用し映像で混雑状況を確認できる仕組みも用意した。試合終了後、利用者は指定エリアに待機することでポイントが付与される。待機時間が長ければその分、余計にポイントが付与され、貯まったポイントは施設内や周辺の飲食店でクーポンとして利用してもらうことで、地元飲食店約150店舗の利用も促進する。効率的な移動の面では、従来会場周辺では、禁止されていたタクシー乗車をスタジアムから少し離れた場所に仮設したタクシー乗り場まで誘導するとともに、アプリ上での配車手配を可能にしている。周辺地域には赤外線センサーを設置し、人流データ(5分ごと通過人数の計測)を蓄積している。2020年後半から蓄積された本データを活用し、混雑状況のシミュレーションモデルを構築し試合当日の交通情報や観客数、勝敗などの情報を組合せリアルタイムで混雑状況を予測するなどしている。同社では2022年より「困ってMaaS」の実践投入し、2023年からは様々なイベントで「混雑する」地域に横展開を図るとしている。会場周辺に流れる「兵庫運河」はかつて船舶の航行に難のあった和田岬の水上迂回路として、また兵庫港周辺の経済活動を活性化させる目的で、1874年(明治7年)に神戸の商人、神田兵右衛門により計画され開削された。その恩恵で周辺は大正から昭和初期にかけ、一大商工業地域として栄えたという。現代の「運河」はアプリ上を流れるデータに姿を変えたが、再び神戸や各地の経済を繁栄させられるだろうか。成功を祈りたい。
自動運転レベル4、法制化で独に並ぶ 22年度にも実用化 他
12月24日 国土交通省は12/20に、無人航空機(ドローン、マルチコプター、ラジコン機など)の登録制度の創設(航空法の一部改正/令和2年6月24日 公布/令和4年6月20日 施行)に基づき、本制度の手続きの詳細を規定、事前登録の受付を開始した。所有者等の把握、危険性を有する期待の排除等を通じ、無人航空機の飛行の安全の更なる向上を図るとした。実際の義務化は、令和4年6月20日となる。手続きは、登録申請所有者が「対象となる100kg以上の機体」の機体情報(種類、製造者、形式、製造番号等)と所有者・使用者情報(氏名・名称、住所等)をオンライン(https://www.mlit.go.jp/koku/drone/)か郵送で、国土交通大臣宛に申請する。同省で申請内容をチェック後、登録申請所有者に「登録記号通知」が送られる。登録申請所有者は、登録記号を対象となる機体に表示(機体に直接記載または貼付け、登録記号を含む機体識別情報を発信(リモートID機能))するの3ステップとなる。新設されるのは①登録義務関係、②表示義務関係、③その他。本制度により無人航空機は、登録を受けなければ「航空の用」に供してはならないとされ、安全上問題のある無人航空機の登録は拒否され、また3年ごとの更新登録/変更届出/抹消登録が必要となる。不正が発覚した場合は、登録が取り消される。また、無人航空機は、登録記号の表示等の措置を講じなければ、同じく「航空の用」に供してはならないとされた。安全上問題がある機体や表示義務違反に対しては、国土交通大臣の是正命令が出される。同省が取りまとめた「令和3年度 無人航空機に係る事故トラブル等の一覧(国土交通省に報告のあったもの)」を見ると、令和3年に起きた事故は86件。飛行させたのは、個人を含め事業者、農業関連事業者、行政機関、研究機関など。事故の概要を見ると、インフラ点検、空撮、農薬散布、飛行訓練など、業務上と思われるシチュエーションが多い。特に電線、電話線、鉄塔などに接触したり、風でコントロールが出来なくなる、GPSなど通信の途絶などが目立つ。このような状況を鑑み、無人航空機メーカーも手を拱いているわけではない。無人航空機の内、ドローンについてとはなるが、事故を未然に防ぐため様々な警報や緊急時対策が施されている。操縦者にバッテリー残量を知らせる警告は、残量10%以下になると強制的に機体を着陸させる。ジオフェンスは、仮想的な境界線で囲まれた空域を逸脱しないための機能だ。フライト中、飛行制御装置が太陽光などで熱暴走するのを避けるため、警告を行う。GO HOME(ゴーホーム/自動帰還装置)機能は、記憶した離着陸点まで期待を誘導し、自動で着陸させ、モーターを停止させる。本機能は、まだ障害物回避を伴わない場合があるので注意が必要だ。障害物センサーは航路上の障害物との接触・衝突を避ける機能。GPSが届きにくい空間においても、安定した飛行を期待できる。電波障害などにより、機体との通信が途絶した際には、安全装置が働き、自動帰還モードか自動着陸モードに入る。また、飛行中、操作不能となる場合は緊急停止操作を行うが、その際でも機体の損傷を軽減させるため、パラシュートが装備されている機体もある。国交省では、現在、今後の無人航空機に関する制度の検討を行う上の参考として、無人航空機による事故等の情報提供を呼び掛けている。*弊社サービスの宣伝となり恐縮ですが、万が一、事故時の原因究明についてはドローンフォレンジック(https://www.fss.jp/drone/)と呼ばれる専門的な事故調査サービスがあります。あわせて、ご記憶いただければ幸いです。
「第14回 オートモーティブワールド」に車のAIシステム用シンセティックデータサービス、AIデータアノテーションサービス、自動車フォレジックを出展
2021年12月23日AOSデータ株式会社 「第14回 オートモーティブワールド」に車のAIシステム用シンセティックデータサービス、AIデータアノテーションサービス、自動車フォレジックを出展 クラウドデータ、システムデー・・・
自動運転「レベル4」実現へ 警察庁、許可制度を創設 他
12月23日 警視庁は12/23に、公共交通事業者が、乗客を運ぶ「自動運転サービス」において、自動運転「レベル4」で実施する場合、都道府県公安委員会で許可制とする方針を明らかにした。この発表は庁内の有識者検討会議により、12/23報告書としてまとめられた内容に基づく。続く道路交通法改正案は2022年の通常国会に提出される予定のようだ。「レベル4」による移動サービスが想定されるのは、公共交通の担い手不足や高齢化でサービスの維持が難しくなって来ている地域だ。鉄道の廃線跡、過疎地での地域巡回バスなどだ。レベル4は、レベル3(特定条件下で自動運転、継続困難な場合はドライバーに運転を引き継ぐ)と異なり、システムによる運転継続が困難となる場合(天候の悪化、緊急車両の接近時の一連の退避動作など)でも、自動運転システムが車を安全に停止させることが求められる(参考YouTube「Car Watch Channel」:https://youtu.be/TzHfJ-yDz0c)。警視庁の「令和3年度 自動運転御実現に向けた調査研究について」によると、官民ITS構想・ロードマップ(2020.7.17 ITS総合戦略本部)では、2022年度頃、限定地域での遠隔監視のみの無人自動運転移動サービスの実現と、2025年を目途に限定地域での同サービスの全国普及が目標とされている。このための実行計画(2020.12.1 成長戦略会議)では、1人の遠隔監視者が3台以上の車両を同時に走行させる形態(参考:YouTube「毎日新聞」https://youtu.be/1oR2z_usvuQ)を可能とするため、引き続き技術開発・実証を行うとともに、必要な制度整備についての検討を加速するとされている。令和2年度調査検討委員会における検討結果の概要を拝見すると、①レベル4の自動運転に関する交通ルールの履行の在り方、②自動運転システムが故障等により作動継続困難となった時の在り方、③自動運行に関与する者の在り方、④運行主体の適格性の審査等の在り方について検討され、①では主に自動運転車の運行を支配し、管理するものに対し、不適格な自動運転システムを使用しない義務、技術開発の状況や交通環境が個別のケースによって異なることを踏まえ、ルールを柔軟に定める、②では、交差点等の駐停車禁止場所で作動継続困難となった場合には、自動運転システムの性能に応じて、安全な場所に停車するために必要な限度で走行の継続を許容、③では、個別のケース毎の技術開発の状況や交通環境等によって関与者の役割は異なり得るため、道路交通法上、関与者に一律の義務を負わせることとする必要はなく、存在を一律に定める必要もない、安全確認や運転操作は基本的に自動運転システムが行うため、関与者は運転免許を受けている必要はない、④では個別のケースごとに異なる技術開発の状況、交通環境、地域との連携、関与者の役割等を組み合わせて従来と同等以上の道路交通の安全と円滑を図ることを目的として、運行主体の適格性について事前に審査し、適格性に問題が生じた場合に排除するための枠組みが必要。また、自動運転による新たな安全リスク等を踏まえ、地域の理解と協力を得ておくことが不可欠となっている。この適格性の審査については、前述の通り都道府県公安委員会で許可制とした。警察庁の今回の発表は、自動運転レベル4における技術的要件、システムによる運転継続が困難となる場合、自動運転システムが車を安全に停止させることや、1人の遠隔監視者が3台以上の車両を同時に走行させる(遠隔運行監視)形態という技術的な土台の上に、許可制度などを整備し、道路交通法の詳細ルールを定めることで、自動運転「レベル4」の実用化を加速させることとなった。来年行われる道路交通法改正案が無事に通常国会で成立し、全国に「自動運転サービス」の恩恵が広まることを期待したい。
万博にらみ関西版「MaaS」 来年度にアプリ運用開始 他
12月22日 国土交通省の近畿運輸局交通政策部は、11/29に「関西MaaS推進連絡協議会の設置について」を発表した。2025年に控える大阪・関西万博に向け、域内にある豊富な観光資源を「観光MaaS」を用いて周遊してもらう仕組みを整え、全体の経済効果に繋ぐ目論見だ。交通や観光を始めとする幅広い業種間での連携を促進、この取り組みを協同で実施していく。第一回目の会議は12/21に大阪市中央区内のホテルで行われた。会議の構成は観光・万博関係者として一財)関西観光本部、大阪観光局、公社)2025年日本国際博覧会協会、交通関係は関西鉄道協会、関西MaaS検討会(大阪市高速電気軌道㈱、近鉄グループHD㈱、京阪HD㈱、南海電気鉄道㈱、西日本旅客鉄道㈱、阪急電鉄㈱および阪神電気鉄道㈱の7社)、近畿バス団体協議会、近畿ハイヤータクシー協議会、阪神高速道路㈱、経済界からは、公社)関西経済連合会、大阪商工会議所、自治体としては、関西広域連合、大阪府、大阪市だ。ここに国から近畿運輸局、近畿地方整備局、近畿経済産業局、近畿総合通信局が加わり、観光・交通分野での関西MaaSの実現を目指す。課題として、日常の競合各社の利害の調整(データ利用、開発費の分担など)、自社アプリとの棲み分けなどが浮き彫りとなるとの論もあるが、JR西の「WESTER」「setowa」のエリア拡大の話題が出た際、同社はこれらのアプリを他社との「デジタル接点」と位置付け、ホワイトレーベル化を検討していた経緯がある。同アプリの設計に反映されていれば、既存プラットフォームを利用し改修を行い、各社からはデータ部分の提供を受けられれば、開発コストの削減と時間短縮に繋ぐことも考えられ、プラットフォーム完成後、旅行商品(デジタルチケットやクーポン、スタンプラリーなど)の充実に、貴重な時間を割り当てられる。広域で利用できる本格的なMaaSアプリの実現に期待したい。また、鳥取県ではこの度「MaaS」導入に向け、来年4月に交通機関や観光事業者、飲食店などが連携し、新たなコンソーシアムを設立することが決まった。2030年までに、スマホアプリにより交通機関の乗換え検索、予約・決済までを一括して行えるサービスの実現を目指す。飲食店などとも連携し、利用者への飲食費、運賃割引きなどのサービスの導入も検討する。コンソーシアム立ち上げの理由には地域の交通問題を解決するため、交通事業者単体でなく地域経済との連携が必要との意味がある。移動と目的をセットとすることで、公共交通の利用促進を図りたい考えだ。コンソーシアムの活動は、会員によるMaaS実現のための情報共有とディスカッション、実証実験やビジネスモデルの立案や提案、会員同士の連携やマッチング支援、セミナー・講演会、研修会、勉強会開催、先進事例調査、コンソーシアムの活動成果の展開、交流会など。会員には、MaaSに取組みたい事業者、業界団体、試験研究機関、教育・行政機関、これらに所属する個人を募る。12/21には、県と鳥取大学工学部附属地域安全工学センターの共催で「令和3年度第1回鳥取県MaaS研究会セミナー」が開催された。余談だが、鳥取県バスフェスタ実行委員会は路線バス利用促進のため、新たな取り組みを始めた。県東部の路線バスに乗り、協賛ラーメン店(29店舗)を訪ねるとトッピング追加などの特典が受けられる。路線バスと店舗案内を記した「麺財布(めんざいふ)」付きラーメンマップを、鳥取市内の東品治町(ひがしほんじちょう)にあるJR鳥取駅前のバスターミナルで配架した。移動手段以外の利用目的を路線バスに見出してもらうため、県とも連携してマップを作成した。一見アナログだが、デジタルに置き換え可能で話題性のある「奇策」だ。今後も、硬軟織り交ぜた豊かなアイデアで「鳥取MaaS」が持続的に地域の足を支えて行くことを期待したい。
ドローンと地上走るロボット組み合わせ 無人配送実験 他
12月21日 日本郵便が東京都の西奥多摩郡奥多摩町にある奥多摩郵便局の配達区内で、12/1から、ドローン及び配送ロボットの連携による配送試行を実施している。本実験で施行されるのは、対象地区においてドローンから配送ロボットへ郵便物などを受け渡し、配送ロボットが受取人の自宅などへ配送する仕組みだ。中山間地域における省人化配送モデルの検証を行う。本取り組みには、株式会社ACSLと株式会社ZMP、奥多摩町が参画、国土交通省における「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に基づき、補助者を配置せずにドローンを目視外飛行させる承認を得て行われた。株式会社ACSLは2013年に創業し、ドローン開発(自律制御ソフトウェア開発)を行い、ロボティクス技術の社会インフラ化を目指している。事業としては、商業用ドローンの製造販売及び自律制御技術を用いた無人化・IoT化に係るソリューションサービスの提供を行っている。2016年9月に「PF1」と呼ばれる機体を発表し、2018年11月には早くも国内初の「レベル3」飛行を実現している。日本郵便との協力関係は、この年から始まったようだ。2021年6月には「レベル4」に対応したドローンの開発及びドローン配送の実用化に向け、日本郵便と日本郵政キャピタルと資本業務提携を締結している。同社はドローンの自律飛行(制御技術)を、ヒトの「小脳」と「大脳」とに分け説明する。「小脳」はフライトコントローラを担う。飛行中、風が吹いた際、自分が傾いたと認識し、姿勢を戻すために必要なプロペラの回転数を演算し、回転させる。市場に投入されている期待の大部分は、一定条件下での飛行を前提とするPID制御と呼ばれる技術が用いられるが、同社はモデルベースの非線形制御を開発、あらゆる条件下での飛行に対応させる。また「小脳」機能のみで自律飛行させることは難しいため、「大脳」は人間の目や耳の役割を果たす画像やAI、LiDARなどのセンサー情報を融合させ、機体に周辺環境をリアルタイムに与える。これにより煙突やトンネル、屋内など、複雑な環境下での飛行が可能となる。またACSLでは、これらドローンの「小脳」と「大脳」の双方をソースコードレベルから独自開発し、幅広い拡張性を持たせることを可能にし、同時にセキュリティ面も担保する。奥多摩町には多摩川を堰き止めた小河内ダムによる奥多摩湖の湖面が横たわり、町の大部分は山林に囲まれ、東京都としては急峻な地形を擁する。このため、冬は寒さが厳しく-5℃を下回る日も多い。積雪量に関しては50cm程度、場所により1m程以上になることもある。大雪や台風による道路の崩落や路面凍結により孤立する状況となる集落が出た経験もある。今回の実験では、災害に向けた配備ではないが、物流を補完する意味でドローンが用いられる。奥多摩郵便局から奥多摩湖沿いに設けられた中継地点までは配送車両が配送物を運搬し、中継地点から設定された配送エリアまでドローンで約2㎞を空輸し、空中のドローンから荷物を受け取る連携機構と呼ばれる受取台経由で、ZMPの宅配ロボ「DeliRo」が配送物を受取り、ラストマイルとなる約0.2kmを配送、届け先の玄関に置き配する。今回使用されるドローンは、ACSL製の「PF2」で、外寸は1173mm×1067mm×654mm(プロペラ含む)、最大離陸重量は9.80kg、最高速度は水平状態で10m/s(36km/h)、上昇:3m/s、下降:2m/s。地上局となるPC画面上で挙動を監視し、異常時には警報が表示され、緊急着陸等の指示に対応する。機体には非常時用のパラシュートが搭載され、運航時に積載できる荷物は最大1.7kg、風速10m/s、降水10mm/hまで運航可能だ(YouTube「ANNnewsCH」 https://youtu.be/Zu17BYXO7NA)。ドローンの社会実装は本格化しており、消防庁でも災害時の被害状況の確認に活用するため、全国の消防本部にドローンを配備する方針を固めている。同庁の令和3年度消防庁予算(案)では、一般会計にドローン運用推進事業0.1億円(令和2年度 0.1億円)が割り当てられ、災害時の効果的・効率的な情報収集に資するドローンの運用に関する「アドバイザーの育成研修」及び「啓発の実施」を進める。同時に地域防災力の中核となる消防団及び自主防災組織等の充実強化では、補助対象資器材等にもドローンが含まれる。ドローンは災害時以外にも、石油コンビナート等の大型タンク内部の点検などへの利用を見込む。NHKの「NEWS WEB」(参考 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211220/k10013396021000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001)によれば、1機350万円(消防本部に配備する撮影機能などを備えるドローン)程度の購入を想定しており、1消防本部については、点検時などに備え、2機以上配備する体制を構築する予定だ。