刑事事件において被告人に有利な証拠を復元した事例

被告人が有利なデータを削除していた場合にはどうすべきか

モバイル調査 証拠復元

財産犯として起訴された被告人の量刑判断には被害額が大きく関わります。しかし、公訴事実の被害額は実際の金額より大きい場合があり、その場合には被告人は実際の被害額を主張するとともに、その裏付けとなる証拠を収集する必要があります。詐欺財、恐喝罪、横領罪及び背任罪の場合、犯行過程で被害者とやり取りをする場合が多いため、証拠はスマホのメッセージやEメールに残されているケースが少なくありません。もっとも、通常、被告人はこのようなデータを逮捕前に削除しており、公判段階で実際の被害金額を基礎づける証拠を収集するのは非常に困難です。

被告人のスマホにつき専門家によるフォレンジック調査を行い、メッセージやEメールなどのやりとりのデータを抽出・復元することが重要

いじめ調査(LINE、メッセージ)画像

このような場合には、被害者のスマホにつき直ちにフォレンジック調査を行い、被害者とのやりとりを証拠として確保しなければなりません。この際に注意すべきは、機種によっては調査の過程で端末の解体を行う場合があり、端末が押収されていない場合には捜査機関が解析していない証拠を隠滅する行為と認定されうる点です。(解体の主体は被告人であるため、証拠隠滅罪には該当しません(※)が、刑法から離れた意味での「証拠隠滅行為」と認定されてしまう可能性は十分にあり、この場合は情状の点で非常に不利になります。)そのため、調査については妥当性・客観性等が厳格に求められるため、十分に信頼できる専門家が行うことが不可欠です。

(※)自分の犯罪の証拠を隠滅しても刑法上の証拠隠滅罪には当たりません。この犯罪は他人の刑事事件に関連する証拠を隠滅した場合に成立します。

フォレンジック調査の内容

スマホのメモリチップを剥がし、データ読み出しツールを用いて、データを抽出します。
その後、抽出したデータを元に復元作業を行います。

いじめ調査(LINE、メッセージ)画像

調査の結果

フォレンジック調査の結果、メッセージを復元することができました。その結果、被害額算定に関する被告人の主張が認められました。

いじめ調査(LINE、メッセージ)画像

直ちにスマホの使用を中止することが不可欠

上記のようなフォレンジック調査によって証拠を確保する場合には、まずデータを保全する必要があります。「保全」とは、調査対象のオリジナルのデータと(完全に)同一内容のデータを複製することを言います。フォレンジック調査では、オリジナルのデータではなく、複製したデータを解析します。これによりオリジナルのデータの書換えを防いで調査をすることが可能になります。保全を行わずにオリジナルのデータを解析した場合、データの書換えが生じ、書き換えられたデータが証拠となってしまうため、証拠価値が大きく損なわれてしまいます。

ファイナルフォレンジックとは

ファイナルフォレンジックは、強力なデータ復元機能を持っており、消されてしまったデータを復元して、証拠データを抽出します。
全国の検察機関がフォレンジック調査ツールとしてファイナルフォレンジックを採用し、全国の検事がこのツールを使って、デジタルデータの証拠調査を行うようになりました。

FinalForensics画面

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デジタル証拠を扱うためには、フォレジックの基本からツールの使用方法、実践における様々なテクニックを学ぶ必要があります。これを効率よく学習するため、コンピュータ・フォレンジック完全辞典を出版しました。

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