MaaS・CASE関連の最新ニュース(3 / 65ページ目)

米UberはMaaSのお手本? レストランと移動をセットで予約可能に 他

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5月17日 ジェネクスト㈱は、2022年4月から日本郵便㈱とともに道路交通法違反検知アプリ「AI-Contact」を活用した安全運転教育の試行・検証を開始している。同アプリは、日本郵便㈱が開催するオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」をきっかけに、自動二輪車の交通事故削減を目的として両社が検討を行って来たものだ。日本郵便が開催する「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」とは、果たしてどのようなプログラムなのか?そのコンセプトや、募集テーマ、共創実績などを探ってみた。日本郵便は日本全国に郵便局および物流ネットワークを展開、地域や社会の暮らしを支えるサービスを、これまで約150年間に亘り届けて来た。日本郵政グループは、1871年(明治4年)に郵便を創業、東京と京都・大阪間に新式郵便の取り扱いを開始している、翌年には書留郵便の取り扱いとともに、郵便の全国ネットワークを完成させている。当初の郵便役所は3ヶ所、郵便取扱所は62ヶ所だった。郵便局の象徴とも言える円筒形の赤いポストは1901年に登場している。「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密(まえじまひそか)は、1835年に越後国頸城郡津有村下池部(現在の新潟県上越市)で、上野家の次男として生まれた。(父親は越後で300年続く豪農、上野助右衛門、母は高田藩士伊藤源之丞の妹のてい)*漢字は「貞」。1870年、前島が35歳の時、租税権正(従7位)となり、駅制改革のため、駅逓権正を兼任、東海道の宿駅を利用した新郵便制度を立案している。その後、大蔵大丞上野景範の差添として6月24日(新暦7月22日)に英国に赴任することとなった。その間、郵便事業などは、浦杉譲が後任に就いている。英国に渡った前島は余暇に郵便事業を学んだと言われる。この翌年となる1871年3月1日(新暦4月20日)に上記の通り、日本で郵便が創業した。前島は8月11日(新暦9月25日)に英国から帰国、17日に駅逓頭となった。*同年民部省が大蔵省に統合。8月に駅逓司から、駅逓寮に昇格した(1877年1月の寮→局制の移行に伴い、駅逓局と改称)。駅逓局は、1885年に逓信省として独立している。話は「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」に戻るが、現在、EC市場の急激な拡大による物量の増加、少子高齢化に伴う労働人口の減少など、物流業界の課題は少なくない。「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」は、これらの課題に対して郵便や物流を、パートナ企業とともに根幹から変革してゆくプログラムとされ、2017年から3期に亘り実施されて来た。過去のプログラムでは、選ばれたパートナー企業とともに現場での検証や実証実験を行い、集配を担当する約200の郵便局において、AIを活用した配達ルートの最適化の試行導入や集中仕分けを担当する郵便局でのロボティクスによる荷物の積み下ろし自動化の実証実験などの事例を積み重ねて来た。このプログラムを通じて、日本郵便は郵便や物流業界にイノベーションを起こし、新たな郵便・物流インフラの創出を可能とする「パートナー」を募集している。「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」において、現在募集されているテーマは、①郵便・物流ネットワーク全体の最適化、②郵便・物流オペレーションの再構築、③郵便・物流のリソースを活用した新たなサービスの創出だ。①では、業界全体のトラック・ドライバーの人手不足による拠点間の物流プロセスでは、シェアリングが加速している。また、現場が取り扱う物量は日ごとに大きく変動するため、リソースの過不足が生じがちであるという。引受・集荷・仕分・輸送・配達をシームレスに連携、無駄やムラを解消できるネットワーク最適化が求められている。ここで日本郵便が求めるものは、郵便物や荷物の引受から配達までを一気通貫で追跡できるアイデア・ソリューション。また、郵便物や荷物の物量の予測・可視化による効率的な人員配置やトラック編成、さらに実際のサプライチェーンデータに基づいたトラック運送ルートの最適化などだ。これらを実現する上で、同社の持つリソースは、全国62ヶ所の大規模ハブ郵便局、約12万台の配達用車両、数十万台のパレット等のアセットや日々蓄積される「多種多様なサプライチェーンデータ」だとする。②では、同社の郵便・物流オペレーションには、全国に18万本ある郵便ポストからの郵便物等の取集、郵便局内における荷物等の仕分やデータ入力、ラストワンマイルの配達業務などに、人手を要するアナログな業務が残っているため、こうした個別作業の過程を、AIやロボティクス活用により、効率化するなどして、作業の再構築を図ることが求められている。パートナーには、ポスト取集の自動化やデジタル化(ポスト内の投函状況をリモートで把握できる仕組みなど)や、輸送時・郵便局内の作業時におけるパレット等の物流資材の位置や状況の把握、AIを活用した航空危険物検知などの技術やソリューションが求められている。これらに関わるリソースは、全国18万本のポスト、約1,100ヶ所の集配を担当する郵便局、3PL案件を取り扱う全国13ヶ所の営業倉庫拠点(物流ソリューションセンター)、国際郵便等を取り扱う全国6ヶ所の国際郵便局となる。*3PL=Third(3rd)Party Logisticsのこと。荷主に対し、物流改革を提案、包括して物流業務を受託し、遂行すること。③では、高齢化社会の到来や、地方における人口減少等の社会課題に加え、新型コロナウイルス感染症の流行により、大きな社会環境の変化に直面する今の日本。このような社会や生活環境の中で、誰もが安心・安全に暮らせるよう、全国を網羅する配送網や郵便局、顧客属性データなどのリソースを最大限活用し、配送に止まらない新たなサービス・価値を創出することで、様々な課題解決に挑戦するとしている。ここでは、前述したような同社のリソースを活用した既存ビジネスに止まらないサービス、郵便局の顧客接点を活かしたデジタルサービス、郵便局のネットワークを活かした、地域の安心・安全を守るサービスなどの領域で共創できるパートナーが求められている。この分野において関わる同社が保有するリソースは、約12万台の配達用車両等のアセット、多種多様なサプライチェーンデータ、顧客属性データ、そして全国に2万4千局の郵便局ネットワークだ。ちなみに、競争事例としてホームページに例示されているのは、日本郵便とオプティマインド、CBcloudが構築したルート最適化/システムによる配達業務支援(「Loogia」)だ(2017年度プログラムの最優秀賞/オプティマインド)。AIによる配達ルート最適化を目指し、提案されたこのプログラムは、日本郵政グループが出資するCBcloudが提供する宅配効率化ソリューションシステム(「SmaRyu Post」)と連携させ、実際に草加郵便局、名古屋北郵便局など複数の郵便局で実証実験が行われ、2020年6月から順次、全国約200局の郵便局で試行導入が始まっている。その他の事例では、Rapyuta Roboticsとの荷物積み降ろし業務の自動化/ロボット活用(2018年10月から実証実験、ロボットアームによる荷物の積み下ろしの自動化ソリューション)や、Yper(イーパー)と実証に取り組む、東京都杉並区1000世帯を対象にした「置き配バック™OKIPPA(オキッパ)」。同実証実験では、約61%の再配達削減に成功し、2019年6月にはこの取り組みを加速する目的で、日本郵便の置き配普及キャンペーンとして、OKIPPA10万個を無料配布するなど、正式なサービス直前に駒を進めたイノベーション・プログラムもある。また、2017年度に採用されたDrone Future Aviationとの取り組みでは、少子高齢化に伴う労働力確保難等に対応するため、配送ロボットによるラストワンマイル配送の実証実験などもある。2020年3月には、大手町プレイスウエストタワーの日本郵便オフィス内で、配送ロボットによる社内便配送試行を行い、配送ロボットの活用シナリオや必要となる機能を検証、配送の高度化を推進している。「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」では、提案するプログラムの着想の豊かさが求められる郵便・物流のリソースを活用した「新たなサービスの創出」の分野において、果敢に挑戦したのは「ecbo cloak」(ecbo株式会社)だ。同社は店舗などの空きスペースを活用を図り、空きスペース(店舗)オーナーが荷物預かりを行う(荷物置き場を貸し出す)等、ユニークなサービスを展開する企業で、日本郵便以外にもJR東日本や、JR西日本、mercari、ヤマト運輸、TSUTAYA、渋谷区、アパマンショップ等が導入や提携を行っている。同プログラムも2017年度に採択され、2018年2月から東京エリア、神奈川エリアの郵便局で荷物預かりの実証を実施。現在は旅行者、ビジネスパーソン、受験・就職活動中の学生などの「手荷物の悩み」を解消すべく、東京エリア、神奈川エリア、京都エリアでサービスを展開している(*ecbo社のホームページによれば、同社サービスとしては、上記以外にも大阪エリア、福岡エリア、名古屋エリア、札幌エリアなどにも預かり場所が展開している、利用者が預けたい荷物は、楽器やベビーカー、自転車など1人が持てる大きさの荷物であればO.K.とのこと)。「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2020」が提案するエントリー後の流れを拝見すると、エントリー開始→書類選考→面談選考→担当部署とのキックオフ→ブラッシュアップ期間→スタートアップ×担当部署によるプレゼンテーション(3ヶ月毎にチェックゲートが機能、実証実験実施の可否や実証実験にかかる費用の予算化を決定!)→実証実験→事業化検討とある。冒頭のジェネクスト社の道路交通法違反検知アプリ「AI-Contact」の実証は、2022年4月1日~9月30日まで、美浜郵便局および綱島郵便局の合計300名程度のドライバーを対象に行われる予定だ。業務中の走行データをアプリで取得し、当該データを利用して安全教育を行う。さらに実施期間終了後には、交通事故件数削減と「AI-Contact」で取得した安全運転教育の効果等について検証する予定だ。日本の近代史に名を刻んだ「日本近代郵便の父」も、同オープンイノベーションプログラムの「芽」が実用化される日を密かに楽しみにしているに違いない。

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5月16日 新年度がスタートし、2年ぶりに移動制限のないゴールデンウィークを過ごした。各地ではMaaS導入への取り組みが進む。岡山市は今、市役所新庁舎の2026年度完成に向け、市内で様々なイノベーションが進む。岡山電気軌道(東山線、清輝橋線)、岡電バス(市内バス、岡山空港リムジン)、わかやま電鉄貴志川線などを営み、アニメ「チャギトン」に登場する「ウィルソン」と「ブルースター」電車を実際の路面電車に再現して走らせる同社は、「岡山デンロケ」(岡山電気軌道電車ロケーションシステム)に新しいアプリ「MONO navi」を登場させた。便利な街情報や、路面電車の運行情報、市内で行われるイベント情報、市内の主な公共施設情報などが集約、四か国語(日本語、中国語、韓国語、英語)に対応させた。同社は昨年3月、それまで100m手前にあった岡山駅前電停(路面電車)から軌道の延伸を決定(2023年度開業予定)、JR岡山駅前に停留所を新設(岡山駅前電停も存続)、JR岡山駅と直結させることを決め、駅間にあった交差点横断をなくすことで乗客の安全性を高め、かつ駅前に乗場を有するバスやタクシーと比べ、分かりにくかった乗場を駅に直結させることで利用者の利便性向上も図る。また、岡電バスと両備バスの二社は、国交省に「市内乗合バスの重複路線の共同経営」を申請し、独占禁止法から除外された。熊本市に次いで2例目となる。(国交省は、2021年3月25日に岡山電気軌道・両備ホールディングスにより申請された「岡山駅・大東間共同経営計画」に基づく共同経営について、独占禁止法特例法に基づく認可を行っている)。乗合いバス事業者2社が共同して重複路線における運行回数や運行時刻の設定等を行うことで、岡山市中心部を走る(バス)路線の効率化や利便性の向上により、運送サービスの持続的な維持が図られている。同市では議会に対し、導入コスト面や路線設定の自由度から、BRT導入による地域公共交通の維持を推奨する陳情も提出されている。移動の利便性向上に費やすコストを市民の代表である市議会がどのように解釈するのかも注目されるところだ。金沢市では、令和3年8月に同市の広域的な移動を担う交通事業者(JR西日本、北陸鉄道、いしかわ鉄道、西日本JRバス)と「金沢MaaS推進協定」が締結され、金沢MaaSコンソーシアムが設立されている。コンソーシアムは「多様な移動手段による移動」と、移動目的となる買い物など「多」分野のサービスの環境整備、市民等が便利・自由・快適に移動できるまちづくりを官民連携で進めている。同市では、同コンソーシアムのプロジェクトの一環として、この4月に従来紙券で販売されていたバスの金沢市内1日フリー乗車券等のアプリ(販売)化による利便性向上を図るため、デジタル交通サービス「のりまっし金沢」の本格運営に乗り出した。ちなみに「~しまっし」は、金沢弁で「~しよう、~しなさい」を表す言葉で、「のりまっし金沢」は、気軽に公共交通に乗ってお出かけいただきたいという思いを込めて命名されたとのこと。デジタル交通サービス「のりまっし金沢」の主なサービス内容は、①バスの金沢市内1日フリー乗車券や鉄道の土日祝限定1日フリーエコきっぷ等を購入し、スマートフォンを提示することでチケットレス乗車が可能になる(購入はクレジットカード決済)、②いつでも・どこでもキャッシュレスで購入可能、③人数分の乗車券を一括購入し、利用が可能となることだ。金沢市では、現在新しい交通システム導入について委員会を設置して検討を進めている。金沢MaaSの特徴の一つには「買い物客の公共交通利用の促進」がある。同市がまちなかで買い物客に配布する「お帰り乗車券」は公共交通の利用促進やまちなかの回遊性の向上に一定の効果が見られることから、財源の確保に配慮しつつ、取り組みを継続する方針が打ち出されている(*「公共交通の持続可能性確保に関する有識者意見 中間とりまとめ」https://www4.city.kanazawa.lg.jp/material/files/group/8/tyukantorimatome.pdf より)。利用者アンケートでは、バスや電車で街中に来た理由として「乗車券がもらえる」との回答が理由の中で最も多いことが分かっている。その他の理由として、駐車場料金を気にしなくていい(100)、年末年始は渋滞するから(144)、エコだから(33)、車と比べて散策できる(44)、去年も利用したから(66)、たまたまバスを利用した(19)、いつもバスを利用している(152)、その他(22)などが挙がる(*カッコ内の数値はN=814に対し)。新し生活様式に対応した移動需要の獲得では、コロナ禍による通勤時間の減少・余暇の増加、場所を問わない働き方の登場など新しい生活様式に伴い生じる移動需要に公共共通が対応できるような取組を検討するなどの考え方も織り込まれている。新たな移動需要(を創出する場所)とは、レストランとワーケーション、自宅とワーケーション、自宅とコワーキングスペース・シェアオフィス、コワーキングスペース・シェアオフィスとカフェの移動など。これらのスポットとの連携が模索される。また、「カーフリーデー」や「トランジットモール」などの取組の継続、各種街中イベントでの公共交通利用促進など、「まちなかの活性化施策」との連携を図ることも検討されている。熊本市では、5月13日から「グリーンスローモビリティ社会実験」が始まった。時速20キロ未満で公道を走るゴルフカートの定員は4人から7人で、雨天でもビニールカバーを装着して走行させるため、ぬれずに移動できる。「グリスロ」は熊本市中央区の花畑広場~熊本城内の加藤神社までの区間を走行させる。熊本市には交通政策部の配下に「移動円滑推進課」が存在する。同課では、これまで①「みかんタクシー(天水・河内地域事前予約制乗合タクシー)」(*定められた運行ルート以外の場所への運行は行わない代わりに、複数の集落(https://www.city.kumamoto.jp/hpKiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=1895&class_set_id=3&class_id=665)をカバーし、路線バスとの乗換地点までのラストワンマイルを担う、地域に特化した運行形態を持つタクシー。本タクシーには「運行ダイヤ」が組まれており、地元の路線バスに乗り換えられるよう、路線バスが集落群の玄関口となるバス停の路線バス通過時刻に合わせてダイヤが設定されている)や、②「熊本版MaaSミライセミナー~熊本市のミライの移動を考える」、③「熊本市公共交通空白地域及び不便地域における乗合タクシー」(ほたる号、宝の湯号、やまびこ号、弓削乗合タクシー、サンサン号、2.7ふれあいタクシー、池辺寺号、大将陣タクシー、オレンジタクシー、芳野さくら乗合タクシー、沖新のり愛タクシー、みかんタクシー、釈迦堂号、ながなす号、西南号、さくら号、みどり号、杉上号、畠口乗合タクシー、てんめい乗合タクシー、中緑乗合タクシー)を市内で運行させている。乗合タクシーは電話予約し、最寄りの停留所から「目的の停留所」まで移動するルールだが、この「目的の停留所」はバス停や鉄道駅に接続している。降車後は、バスなどに乗り換えてさらに移動したり、近くの病院やスーパーなどに行くことが出来る仕組みだ。市内の各乗降場には「乗合タクシー」と書かれた氷柱やパネルが設置されており、市がホームページ上で配布する運行チラシのルート図(地図)には、乗降場が写真入りで掲載されている。同課はこれまで地域のニーズに合わせ、交通資源の利用を考え尽したAI顔負けの柔軟性のある政策を実施してきたが、2021年10月、ついにAIデマンドタクシーの実証実験に至っている。本タクシーは既存の公共交通を補完するドアツードアの移動手段を導入し、熊本市の公共交通の活性化を図るとともに、AIデマンドタクシー(相乗りタクシー)を市民の方々に体感してもらい、導入可能性について検討することを目的としているとしている。但しこの実証実験は、市の健軍電停や商店街、観光地である江津湖があり、中心市街から一定の距離があり、商業・医療。行政等の施設が集積する健軍地区で行われる。本実証実験の利用者像は、同地への通勤・通学者、通院や買物客、タクシーを利用したいが料金が高いと感じている人とされているので、中山間部への適用とは前提が異なっているようだ同市の同じ交通政策部の交通企画課では、平成30年10月から「バス待ち処」と称し、バスの待合環境改善のため、商業施設との連係を始めている。「バス待ち処」は主に同市の都心部・郊外部となるバス停に隣接したスーパーやコンビニなどに協力を仰ぎ、イートインスペースなどを活用した待合所やトイレの提供、時刻表の掲示や配布を行う場所を言う。現在の協力店はスーパー5店舗、コンビニ53店舗となる。まちの商業施設も交通計画に体系化され、交通利用者を維持するために協力している姿が認められる。MaaSの導入を進めるには各地域ごとに「まちの事情」が存在することは確かだ。だからこそ、交通事業者はもとより、自治体、地元経済界、市民が旧来の作法にの上に、新しく柔軟な「知」を受容し、まちが抱える課題を解決していく「まち全体の取組み」が大切になる。その先に皆で享受できる移動の利便性やまちの繫栄が待っているのではないか。

自動運転支援システム、正面衝突回避に難あり=米AAA 他

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5月13日 5月12日にロイター通信から配信された「自動運転システム、正面衝突に難あり=AAA」(*AAAは、日本でいうJAFのようなロードサービス)は、米国自動車協会(AAA)がテスラの「モデル3」と現代の「サンタフェ」、SUBARUの「フォレスター」の自動運転支援システムを調査したところ、いずれも正面衝突事故を避けられなかったという結果を公表した。AAAが行った調査(テストのシナリオ)は、①テスト車両と同方向に走行するダミー車両の追い越し、②同じ方向に向かうダミーの自転車の追い越し、③正面衝突コースを互いに時速25マイルで走行させたダミー車両と対峙させ、衝突を回避させる。④ダミーの自転車がテストカーの進路を横切ることを回避させる、の4つだ。AAAは、①②のテストについては3車種とも、同時に同じ方向に走る車との衝突は避けることが出来たとしている。③についてAAAは「モデル3」は自動的にブレーキをかけ、衝突する前に時速3.2マイル(歩行速度)まで減速したが、現代「サンタフェ」とSUBARU「フォレスター」は衝突を回避するため、物体を検出したり、減速したりするようには見えなかったとしている。また、④について「モデル3」と「サンタフェ」は道路を横切る自転車を検知してブレーキをかけたが、SUBARUは5回の試験で自転車を認識できなかったとした。AAAは、現在の運転支援システムや自動ブレーキシステムは完全自動運転には程遠く、運転手が車両を制御する必要があると結論付けている。今回の結果について、SUBARUは、「方法論を理解するため、AAAのテストを検討しており、現時点では詳細な回答はない」とコメント、「フォレスター」の2022年モデルはEyeSight支援運転システム(アイサイト)を改善したと付け加えているようだ。テスラはコメントしておらず、現代は「顧客の安全に対する継続的な取組の一環として、AAAの報告書の調査結果を検討している」としているようだ。「時速25マイル(約40キロ)」で正面から向かって来る車を「サンタフェ」と「フォレスター」は検知出来ず、衝突を回避するために減速することはなかった。ロイターの記事には、幾分の「物言い」したい気持ちがなくもない。同記事は、AAAがどのような調査を行ったのか?各自動車メーカーの発表している比較したモデルの基本性能、公表されている安全性能値に対する言及を欠いており、④調査についても「モデル3」と「サンタフェ」は道路を横切る自転車を検知してブレーキをかけた結果、自転車との接触を回避できたのか?まで明らかに書き出されていない。(結果として消費者に、現行の運転支援システムが完全ではないことを啓発するAAAの主旨には沿っているが)参考までに以下を調べてみた。SUBARU「フォレスター」のWebページを閲覧すると(https://www.subaru.jp/forester/forester/safety/safety2)、「ぶつからない」をサポートする機能として、交差点における衝突回避のサポートも行う「プリクラッシュブレーキ」についての記載が目に入る。この部分には「衝突の危険があるとシステムが判断した場合、ドライバーに注意を喚起。回避操作がない場合はブレーキ制御を行い、衝突回避をサポートします。さらにフォレスターでは作動領域が広がったことにより、交差点にも対応。右左折時の直進対向車や、右左折時の歩行者、また横断する自転車への衝突回避もサポートします。」と書かれている。さらに、同ページ最下段の注意書き部分には、「*1:制御対象との速度差が約60km/h(右左折時は自車速約20km/h、横断自転車は自車速約50km/h)を超える場合は、アイサイトの性能限界から衝突を回避することはできません。また、制御対象との速度差が約60km/h(右左折時は自車速約20km/h、横断自転車は自車速約50km/h)以下であっても、状況によっては衝突が回避できないことやプリクラッシュブレーキが作動しない場合があります。」と明示されている。また、ステアリングを制御し、衝突回避をサポートする「緊急時プリクラッシュステアリング」は、プリクラッシュブレーキの制御だけでは衝突回避が困難な場合、システムが周囲に「回避スペースがある」と判断すると、ステアリング制御も併せて行い衝突回避をサポートします、と記載されており、同じくページの最下段の注意書きの部分にも、「*2:回避するための十分なスペースがない場合や、回避先に物体などがある場合は作動しません。また、回避対象物が、自動車、自転車、歩行者以外の場合も作動しません。」とある。*ロイターの記事には、AAA検査時に車両の車両周囲の状況がどうだったのか?についても言及して欲しかった。ここでも、SUBARUは「緊急時プリクラッシュステアリング」が作動しないケースを明確に書き出している。テスラの「モデル3」のホームページを確認すると、同車のリア、サイド、フォワードフェイシングカメラは最大の視野を確保、360度とある。また、前方については「最大250m先まで協力にビジュアル処理」と謳われていた。ちなみに、https://www.moodyonthemarket.com/aaa-testing-finds-inconsistencies-with-driving-assistance-systems/ によると、今回実験に使われた車両は、「オートパイロット」を備えた2020テスラ「モデル3」、2021年の現代「サンタフェ」と「ハイウェイドライビングアシスト」、2021年「EyeSight®」を搭載したSUBARU「フォレスター」である。AAAが今回の調査について発表を行った狙いは、AAAオートクラブグループの広報担当者の「運転支援技術は安全性を向上させるため大きな進歩を遂げましたが、それでも完ぺきではありません。だからこそ、ドライバーは自分の車の限界を理解し、ハンドルを握っている間は完全に従事し続けることが重要です。」というコメント内容に尽きる。AAAは、自動車メーカー向けの推奨事項として、メーカーが既存のアクティブ運転支援システムを改善し、より高度な自動運転オプションに焦点を当てる前に、より一貫して(これらのシステムが)機能する必要があると考えている。メーカーは、継続的なドライバーの関与を促し、気を散らすことを思いとどまらせる、ドライバーに焦点を合わせたカメラ監視システムを実装する必要ありとしている。またドライバーに向けた推奨事項として、①通常の運転に統合する前に、これらのシステムがどのように機能するのかを明確に理解すること、ディーラーにデモを依頼し、自動車メーカーがオンラインで提供する車両取扱説明書やその他の情報をよく読むこと、②(現時点で)完全に自立している車はないことを理解し、(何かが起こった場合)これらのシステムは、介入するが準備できているドライバーからの絶え間ない監視なしには実行出来ないこと、を挙げている。AAAが行った新しい調査(2022年1月13日~16日)では、完全自動運転車に対する消費者の不信感が依然として高いことが明らかになっているが、消費者は自動緊急ブレーキや車線維持支援など既存の車両安全システムに強い関心を示していることも分かっている。AAAの広報担当者は「消費者が現在(の技術)を信頼しなければ、将来の技術を消費者に売り込むのは難しい」とし、「ドライバーは現在の運転支援技術が常に安全に機能することを期待している、しかし残念ながらAAAの調査では、(これらのシステムは、自動車メーカーごとに)ムラのある仕上がりとなっている現状がある」としている。AAAは教育と経験が自動運転車の受入れを拡大するための鍵であると考えているという。この目標を達成するため、AAAは自動車メーカーに対し、既存の車両安全技術を改善して、メーカー問わずこれらのシステムが一貫して確実に機能するよう促している。moodyonthemarket.comには、今回のAAAの車両試験について、多少とはなるが情報が記載されていた。クローズドコーステストと呼ばれるテストは、カリフォルニア州コンコードのAAA北カリフォルニア、ネバダ州、およびユタ州のGoMentumステーション試験場で行われたとのこと。定義された一連の基準を使用して、AAAはテスト用に上記の3車両を選択。試験装置およびクローズドコース試験シナリオに関する特定の方法論については、(おそらくAAAの)「完全なレポート」を参照して欲しいとある。消費者の立場から考えるに、今回のAAAの調査内容の公表は、自動運転以前に現行の「運転支援システムへの信頼性」に大きな波紋を投げかける結果となった。AAAが投げかけた課題に対し、自動運転車メーカーがどのような解決策を提示し、自動車業界が連携を見せるのか、今後も引き続き注目が高まるのではないだろうか。*参考:https://newsroom.aaa.com/2022/05/consumer-skepticism-toward-active-driving-features-justified/

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5月12日 昨日、5月11日トヨタ自動車㈱の2022年3月期(2021年4月1日~2022年3月31日まで)の決算が発表された。結果は増収増益となった。営業収益は2021年3月期の27,214,594百万円に比べ、今期は31,379,507百万円(15.3%)、今期の営業利益は2,995,697百万円(36.3%)、営業利益は2016年3月期の2兆8539億円を上回り、6年ぶりに最高を更新、同社自身の記録を更新し、国内企業においても過去最高となった。同じく今期の税引前利益は3,990,532百万円(36.1%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,850,110百万円(26.9%)であった。*百万円未満は四捨五入、カッコ内は対前期増減率を示す。経営成績等の概況における業界の状況は、2022年3月期の世界経済は、各国の財政・金融政策に下支えされたこと、新型コロナウイルスの影響による制限が段階的に緩和されたことにより、持ち直しに向かった。自動車市場においては、「半導体の需給のひっ迫」や「新型コロナウイルスの影響による部品供給の不足」「資材・物流費の高騰」など、グローバルで生産の制約を受けた。米国や中国、日本などでは底堅い需要が続き、前年より回復した。足元では、2022年2月以降に高まった地政学的な緊張による影響(ウクライナ情勢を指すものと思われる)が、商品価格の高騰などを通じ世界に波及、先行きが見通しにくい状況となった。このような状況の中で、当連結会計年度における日本、海外を合わせた自動車の連結販売台数は、823万台と、前連結会計年度に比べ、58万4千台(7.6%)増加となった。日本での販売台数は、192万4千台と前連結会計年度に比べ、20万1千台(9.5%)減少した。一方、海外のすべての地域では販売台数が増加、630万6千台と、前連結会計年度に比べ、78万5千台(14.2%)の増加となっている。事業別セグメントの状況では、自動車事業の営業収益は28兆6,057億円と前連結会計年度に比べ、3兆9,541億円(16.0%)の増収、営業利益は2兆2,842億円、前連結会計年度に比べ、6,771億円(42.1%)の増益となった。金融事業においては、営業収益は2兆3,240億円、前年と比べて1,617億円(7.5%)の増収、営業利益は6,570億円、前連結会計年度に比べ、1,614億円(32.6%)の増益となった。その他事業では、営業収益は1兆1,298億円、前連結会計年度に比べ、775億円(7.4%)の増収となったが、営業利益は423億円と前連結会計年度に比べ、430億円(50.4%)の減益となっている。所在地別の状況を見ると、日本は15兆9,914億円と、前連結会計年度に比べ、1兆425億円(7.0%)の増収となり、営業利益は1兆4,234億円と前連結会計年度に比べ、2,742億円(23.9%)の増益となった。北米での営業収益は11兆1,664億円、前連結会計年度に比べ、1兆6,746億円(17.6%)の増益となっている。欧州での営業収益は3兆8,678億円、前年比7,333億円(23.4%)の増収、営業利益は1,629億円、前連結会計年度に比べ、550億円(50.9%)の増益となっている。アジアでは、営業収益は6兆5,305億円、前連結会計年度に比べ、1兆4,852億円(29.4%)の増収となり、営業利益は6,723億円、前年と比べ2,364億円(54.2%)の増益となっている。その他地域(中南米、オセアニア、アフリカ、中近東)での営業収益は、2,381億円、前連結会計年度に比べ、1,783億円(298.0%)の増益となっている。次期業績の見通しについては、自動車産業が100年に一度の大変革期を迎え、正解がわからない時代とした上で、「自分以外の誰かのために」という創業からの精神で「幸せの量産」に向け、ステークホルダーとともに行動していくとし、「トヨタらしさ」を大切にする経営は、「誰ひとり取り残さない」という国際社会の取り組み(SDGs)に持続的に繋がるとしている。トヨタは「もっといいクルマづくり」による商品を軸にした経営や、カーボンニュートラル実現への取組み、ソフトウェアやコネクテッドによる人々に必要とされる技術などへの対応を加速するとしている。現時点における2023年3月期の連結業績の見通しとしては、営業収益33兆円(5.2%)、営業利益は2兆4,000億円(△19.9%)税引前利益3兆1,300億円(△21.6%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2兆2,600億円(△20.7%)としている。これらの値を見通すにあたっての不確定性および変動可能性を有する要素には、日本、北米、欧州、アジアおよびトヨタが営業活動を行っているその他の国の自動車市場に影響を与える経済情勢、市場の需要ならびにそれらにおける競争環境をはじめ、様々な要因が挙がっているが、その中にはトヨタが営業活動を行っている市場内における「政治的および経済的な不安定さ」や仕入れ先への部品供給の依存、原材料価格の上昇、「デジタル情報技術への依存」、同社が材料、部品、資材を調達し、自社製品を製造、流通、販売する主な市場における「燃料供給の不足」、「電力・交通機能のマヒ」、ストライキ、作業の中断、または労働力確保が中断されたり、困難である状況、生産及び販売面への影響を含む、自然災害および「感染症の発生・蔓延による様々な影響」といった記述もみられる。また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によるトヨタへの悪影響については、政府からの要請や自動車需要の落ち込みなどの理由により、トヨタの国内および海外の一部一部の工場で自動車及び部品の生産を一時的に停止しているか、今後そのような措置を講じることがあるとし、新型コロナウイルスの影響は、ディーラーや販売代理店、一部の仕入れ先及び取引先の事業にも及んでおり、今後も継続することが見込まれるとしている。また同ウイルスの感染拡大及び関連する問題は、トヨタの自動車および金融サービスの需要にネガティブな影響を与えているとしている。また同ウイルスの収束時期や将来的影響は依然として不透明としながら、本報告書に記載されていない影響、コロナウイルスの最終的な影響は予測しがたいものとしており、同社の財政状態や経営成績およびキャッシュ・フローに悪影響が及ぶリスクを指摘している(*参考:トヨタ自動車株式会社「2022年3月期決算要旨」https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2022_4q_summary_jp.pdf)。これらの状況を踏まえた上で、同社は収益構造の変化を説いている。13年前となる2009年3月期は、リーマン・ショックの直後であり、販売台数は2008年3月期の891.3万台から、2009年3月期には、756.7万台(△15%)に落ち込んだ。2008年3月期の営業利益は22,703億円だが、2009年3月期には△4,610億円となり、大幅減益し、結果は赤字転落となった。コロナ発生後の2021年3月期も販売台数は、同様に△15%を記録している。2020年3月期の連結販売台数は895.5万台だったが、2021年3月期には764.6万台(△15%)となるも、営業利益は2020年3月の23,992億円から、2021年3月期は21,977億円と、減益はしたものの黒字は確保している。トヨタ自動車は、この違いを13年間に亘る「体質改善」によるものとし、損益分岐台数の変化がそれを示しているとした。13年前に就任した豊田章男社長は「まず私が社内に徹底したいことは"もっといいクルマをつくろうよ"というブレない軸を定め、"商品を軸とした経営"を行う」というものだった。トヨタの社内では(或いは社外も巻き込みつつ)2009年以降、この方針のもと様々な取組みが進められて来た。体制面では地域に寄り添う「地域CEO」の導入、機能軸でなく、商品軸で組織を再構築した「カンパニー制」を導入している。開発の現場では、Toyota new global architecture(TNGA)を通じ、高い基本性能と賢い部品の共用化を両立させて来た。生産現場では、仕入れ先と一体となった価値分析(Value Analysis:図面や仕様書の変更、製造方法の能率化などを行い、コストを低減する活動)や、つくり方の改善など「1円1秒」にこだわって原価を改善してきた。これらの取り組みにより「各地域のクルマの使われ方にあったラインナップの充実」「個々のクルマの基本性能の向上」が進んだとし、また顧客にも商品の価値向上を認めてもらった結果、販売価格の改定、販売費の抑制、金融事業の収益改善などが進み、結果として台数・為替に左右されない収益構造に変化したと結論付けている。これらの積み重ねを数字で語るなら、カンパニー制を開始した2016年3月期の連結販売台数は868万台、2020年3月現在では、823万台に減少しているが、営業利益は、2016年3月期の28,539億円から、29,956億円(+1,416億円)に改善されている。今後2023年3月期の見通しについては、トヨタ・レクサス販売は990万台(前年比104.1%)を掲げた。原価改善や販売増を見込むも、かつてない資材価格の高騰(△1兆4,500億円)で減益の見通しとなる。同期の営業利益の見通しは、2022年3月期実績29,956億円(台数は951,2万台)に対し、2023年3月期の見通しは24,000億円としている。

ゼンリンとMoT 3万台のドライブレコーダー映像を活用した地図情報メンテナンス 全国の高速道路にて試験運用開始 他

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5月11日 佐賀県江北町(こうほくまち)にレスキューコンテナホテル「HOTEL R9 The Yard 江北」がオープンする。佐賀県では、昨年、令和3年8月11日から19日にかけて記録的な大雨を経験した。8月11日から19日にかけ、前線が九州付近に停滞、前線に向かい太平洋高気圧の周辺から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、九州北部地方では大気の状態が非常に不安定となった。特に12日明け方~15日明け方にかけ、断続的に「激しい雨」や、「非常に激しい雨」が降り、九州北部地方で記録的な大雨となった。佐賀県では、8月11日朝から大雨となり、夕方にかけて「激しい雨」が降り、1日の降水量が100ミリを超えたところもあった。翌日12日~19日未明にかけて、局地的に「猛烈な雨」や「非常に激しい雨」が降った。県内では、14日の2時15分には大雨特別警報を武雄市と嬉野市に発表、その後14市町に追加および継続して発表した。14日夜のはじめ頃からは雨が小康状態となったため、15日6時10分には大雨特別警報を大雨警報に切り替えた。日降水量は、13日に鳥栖で332.5ミリ、14日に嬉野で439.5ミリ、唐津264.0ミリで観測史上1位の値を更新した。なおその他の観測所でも、8月として多い方から1位~2位の記録的な大雨となった。この大雨で、8月11日から19日の24時までの期間降水量は、嬉野、白石、佐賀では8月の平年の降水量の4倍、その他多くの観測点でも3倍となった。被災の状況は言うまでもないが、人的被害軽傷4名、住家被害:全壊1棟、半壊1棟、床上浸水:1637棟、床下浸水:1742棟、その他被害:道路(土砂災害)65個所と、人命こそ最小限の被害に食い止められたものの、県内の多くの住家に甚大な被害が出ている。参考までに①「激しい雨」とは、バケツをひっくり返したように降る雨を言い、②「非常に激しい雨」とは滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)雨を言い、③「猛烈な雨」とは息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感じる雨ということになるらしい。②③のケースでは傘は役に立たず、①②③は、夜中に寝ている人の半数くらいが雨に気が付く状況だという。①では道路が川のようになり、②③の場合は、水しぶきであたり一面白っぽくなり、視界が悪くなる。①では車に乗っていて、高速走行時には車輪と路面の間に水膜が生じ、ブレーキが利かなくなるハイドロプレーニング現象が起こる場合もある。②③の場合、車の運転は「危険」とされる。話は冒頭の佐賀県江北町に戻るが、同町にレスキューコンテナホテルが開業したのは、そのような経験があるからなのかもしれない。このコンテナホテルを設置したのは、株式会社デベロップ(本社:千葉県市川市)建築・不動産事業、エネルギー事業、ホテル事業、施設管理事業、資産運用代行事業を主な事業とする。レスキューコンテナホテルは、平時はホテルとして運営、災害などの有事には被災地に「移設」し、避難所等として用いることが出来る。災害における救助活動などが終われば、コンテナは再び移動(撤収)し、元の場所でホテルとして営業に就く。コンテナのタイプは床下に車輪を設けた「車両型」と、純粋なコンテナ部分だけの「建築型」がある。移設の際は、「車両型」の場合は、牽引用のトレーラーヘッド、「建築型」コンテナ型の場合は、クレーン車及びコンテナを積載するトレーラーが必要となる。コンテナの特性を活かし、離島などへの船舶による輸送も可能だ。2022年5月現在、レスキューコンテナホテルは、全国に49拠点、1,648客室が展開し、自治体との災害協定締結数は96件となる。ちなみに出動コストは、1~60日で30,000/日・室、61日~90日で9,000円/日・室、91~120日で8,000円/日・室、121日~は7,000円/日・室となり災害支援・復興などが長期化する場合は、良心的な価格設定と言える(*税別、標準仕様の場合。オプションにより価格変動有、詳細は https://www.dvlp.jp/lp/rescue_hotel/)。基本仕様はコンテナモジュール(13㎡)1台を1客室とした独立型。ダブルとツインが設定されている。室内設備は、ユニットバス、ベッド、冷凍冷蔵庫、電子レンジ、空気清浄機。*用途に合わせベッド等を撤去、休息所や診療所、会議室など多目的に利用できる。利用目的に合わせ、照明や空調の電気工事、上下水道工事、プロパンガス設置などが別途必要になる。特筆すべきは、国土交通省関東地方整備局を始めとする、全国自治体との災害協定締結数の多さだ。全国で96件ある。うち最多は同社の本社が位置する千葉県。30市町が契約を締結している。次いで埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県の順となる。この3月にも千葉県(流山市/15室)、東京都(6室/立川市、中央区)ではコロナウイルス感染症対策に関わる臨時医療施設の付帯施設として利用されている。今年の1月には栃木県で計4施設(臨時医療施設、コンテナホテル)、126台を提供している。また権を跨ぐ事例もある。2021年2月には、栃木県足利市のコンテナホテル2室を、東京都内の民間病院に移設してPCR検査施設として稼働させた実績などもある。遡ると、2020年4月末に長崎クルーズ船の件でも、千葉県成田市と栃木県足利市のコンテナを長崎県に計50室を移送している。この際は、4月26日に要請を受け、翌27日と翌々日の28日に両市を出発、4月29日から長崎市の三菱重工業造船所の敷地内で設置工事を開始している。同社の瞬発力や機動力も高く評価されよう。コンテナは、空気感染防止策を施した、移動式の陰圧診察室としても利用できるよう開発が進められているようだ。その他の用途としては、テレワーク室や会議室、オフグリッド化*も進められている。*この場合のオフグリッドとは、公共のインフラ設備に依存せず、独立した方法ないし設備により設計されたホテルを意味する。MaaS(Mobility as a Service)が叫ばれて久しいが、災害対応できる「コンテナ」も移動可能なモビリティと捉えるなら、医療MaaS(伊那市の事例のような)などに次ぐ、公共性の高いサービスの一つとなり、今後も続けて利用・発展していくと予想される。*アイコン画像はコンテナのイメージです。

「赤信号」を「青信号」だと錯覚させる自動運転車へのサイバー攻撃 中国などの研究チームが脆弱性指摘 他

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5月10日 先日はあいおいニッセイ同和損保㈱の「交通安全 EBPM 支援サービス」の話題に触れた。保険続きの話題となるが、同じ主要大手代理店型損保の自動車保険シェア2位の損害保険ジャパン㈱においては、レベル4自動運転サービス向け「自動運転システム提供者専用保険」の開発が進む。ちなみに日本損害保険協会によると、損害保険業界全体の令和2年度の正味収入保険料は、約8兆6,927億円、うち自動車保険の正味収入保険料は、約4兆1,880億円となり、損害保険業界全体における自動車保険の正味収入保険料の割合は、およそ50%と言える。自動車保険は、その販路の観点から大別すると代理店型と通販型の二つとなる。同じく令和2年度の代理店型損保における自動車保険の正味収入保険料ランキングの1位は、東京海上日動火災、続いて損保ジャパン、あいおいニッセイ同和損保、三井住友海上火災の順となる。これを同年の通販型損保に置き換えた場合、ランキングの1位はソニー損保、続いてチューリッヒ保険会社、三井ダイレクト損保、アクサダイレクト、SBI損保、セゾン自動車火災、イーデザイン損保、セコム損保の順となる。通販型(正味収入保険料合計:3,437億円)は代理店型(正味収入保険料合計:3兆6,081億円)と比較し、認知度は向上して来たものの、まだ業界シェアは小さいと言える。別な(自動車保険ではなく、損害保険業界全体の)集計となるが、損害保険業界の2020年~2021年の業界規模(主要対象企業7社の保険料収入の合計)は、10兆6,917億円となる。2008年~2017年頃までは順調に増加するも、2018年~2020年は小幅な増加は見られるものの、近年は横ばいとなっているということだ。2020年の保険料収入はコロナ禍においても前年比増だが、保険の利用機会となる交通事故の支払いは縮小している。損保大手3社の保険料収入の推移(2011年~2020年)をみると、全体的には上昇傾向で、2020年における1位は東京海上HD、2位はMS&AD、3位がSOMPO HDとなる。新型コロナの感染拡大に伴い、海外旅行需要や新車購入率が低下したが、外出自粛による交通量の減少で自動車事故は減少したため、自動車保険金の支払額が抑制された結果、保険料収入は前年比プラスとなっている。業界では少子高齢化や人口減少による国内市場の縮小が課題とされ、アジア、インド、中東、アフリカなど海外展開が加速する。損害保険業界の中で直近(2018年~2022年)は、自動車の安全性能の向上(CASEの発達)に伴う事故減少によって、自動車保険料が引き下げられている。加えて、自動運転技術の完全普及までは時間を要するとされるが、今後「自動車保険市場は緩やかな縮小」が予想される。自動車保険料は、損害保険会社にとっての主要な収入源であるため、今後の影響(収入の減少)が気になるところだが、各社は既に「脱自動車保険」に向けて自転車保険や特約、新商品の販売や開発に注力しているところと聞く。このような流れの中で、この2月に損害保険ジャパン㈱、㈱ティアフォー、アイサンテクノロジー㈱は、国立大学法人東京大学(大学院情報理工学系研究科 加藤 真平准教授研究室)とともに、自動運転システムにより自律走行するレベル4以上に対応した「自動運転システム提供者専用保険」を開発したと発表している。同保険は、自動運転車を導入する企業ではなく、自動運転システムを提供するベンダーが加入するためのものである点が、これまでの自動車保険と大きく異なる。本保険の保険の導入事例となったのは、㈱ティアフォーとヤマハ発動機の合弁会社である「eve autonomy 」(イブオートノミー)の自動搬送サービス「eve auto」が、ヤマハ発動機の複数の向上や、千葉県市原市のプライムポリマー姉ヶ崎工場に試験導入された案件だ。本案件においては、自動運転システムを提供するベンダーとなる㈱ティアフォーが、自動運転導入事業者が事業に活用する自動運転車(自動搬送サービス「eve auto」)に対して、保険を付保(*保険契約を締結)する形としている。㈱ティアフォーとヤマハ発動機は、「自動運転サービスの実装」とともに、レベル4自動運転向けの「保険・サービスの検証」を行い、その後、多方面への展開を目指すとしている。当初、自動運転技術は自動車関連の事故回避に有用な技術であるため、事故自体が減少し、保険料は引き下げは避けられないと考えられたため、保険会社にとっては保険料収入を減少させる「脅威」と捉えられていたようだ。しかし、損害保険ジャパン㈱は独自に自動車メーカーやスタートアップに接触し、ヒアリングや自動運転技術についての情報のやり取りを始め「自動運転技術が普及した時代の保険のあり方」を模索するうち、「自動運転技術は、社会やユーザーに事故を起こさない車であることを期待され、事故を低減させる技術であることも確かだが、事故が起こる可能性をゼロにすることは出来ない」事実を見極め、レベル4自動運転サービス向け「自動運転システム提供者専用保険」の開発に至っている。ちなみに東京海上ホールディングス㈱は、May Mobility, Inc.(米)と2022年1月26日に自動運転の社会実装を見据え、自動運転向け運行管理管理サービスの共同開発や保険商品の共同研究を目的とする資本業務提携契約を締結している。同社は自動運転分野において「被害者救済費用等保障特約(2017年4月)」、「自動運転中事故のノーカウント化(2021年4月)」など、の保険商品の提供を行い、自動運転社会に向けたセーフティーネットの構築を行って来た。同社とMay Mobilityは、2021年3月に東広島市で開始した自動運転の実証実験への参画を通じ、それぞれが保有するノウハウやリソースを活用した協業を進めており、更なる協業推進のため資本業務提携を締結している。今後は、自治体や交通事業者等と連携し、地域・エリアでの自動運転プロジェクトに参画し、①自動運転向け運行管理サービスや、②事故対応サービス、③リスクコンサルティングサービスの共同開発、および④保険商品の共同研究などを進めるとしている。May Mobilityは、自動運転システムや自動運転車の運行管理システムなどを保有している。SONYの「VISION-S」は、2020年1月のCESで発表され、同じく2022年1月のCESでも試作モデル2モデルが展示された。ソニーグループの金融の一角を担う、ソニー損保保険㈱の動きはどうだろうか?今のところ(2022年5月10日 現在)Webサイト上では、自動運転車や自動運転システムベンダー、運行管理者などを対象にした保険商品は検索出来ない。しかし、1月31日には運転特性連動型自動車保険の契約者向けに提供している「GOOD DRIVEアプリ」を、ソニー損保の自動車保険の契約の有無にかかわらず、すべてのドライバー向けに無償提供を開始している。同社はこのアプリをできるだけ多くのドライバーに広めることが、交通事故の少ない社会の実現につながるものと考え、提供を始めたとして、自社保険の契約者以外にも、広く「運転特性データ」(「アクセル、ブレーキ、ハンドル、スマートフォンの操作状況」)を蓄積しようとの姿勢を見せている。同社にとって「運転特性データ」は、契約者の事故リスクの指標となると同時に、今のところ保険料キャッシュバックの基礎データとしても活用されるものと思われる。ソニー損保が今後どのように「運転特性データ」を活用していくのか?「VISION-S」の市場投入の時期を見ながら、損害保険ジャパン㈱式に「自動運転システム提供者専用保険」方向に舵を切るかについても、興味は尽きない。損保各社の自動運転関連の保険商品の開発の動向や取組みとともに注目して行きたい。

「事故シーン9割以上をカバー」、日産が開発した事故を自動回避する運転支援技術の全容 他

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5月9日 あいおいニッセイ同和損保㈱は、4月28日に自動車の走行データを活用した「交通安全 EBPM 支援サービス」を2022年5月より提供を始める。*EBPMとは、Evidence-Based Policy Making (証拠に基づく政策立案)の略で、政策効果の測定に重要な関連を持つ情報や統計等のデータの活用が、政府により推進されている。テレマティクス自動車保険契約を通して蓄積してきた地球約138万周分の自動車走行データを活用し、地方公共団体の交通安全対策の立案・効果検証を支援する。同社は、テレマティクス保険(テレコミュニケーション(通信)とインフォマティクス(情報工学)を組み合わせた造語)のパイオニアで、2018年~同保険の販売を開始、2022年3月に140万台の契約実績を持つ。このテレマティクスの普及とともに契約車の走行データの蓄積を進めて来た。同社は「社会との共通化地の創造(CSV)」と、「(DX)=データやデジタルを活用し、価値提供を変革させること」を通じて、保険契約者、地域、社会の未来を支え続けることを目指すとともに、三者のリスク軽減、社会や地域課題の解決に資する商品・サービスの開発を進めて来た。「交通安全 EBPM 支援サービス」は、この地域の課題解決に向けた価値提供として、地域の危険個所を可視化する「交通安全マップ」を開発、今年4月から全国の地方公共団体に提供しているという。また「交通安全マップ」による現状把握だけに終始するのではなく、危険個所の分析、具体的な交通安全対策の「立案」と「効果検証」が可能な、「交通安全EBPM支援サービス」の提供に繋げている。この「交通安全マップ」は、同社がテレマティクス自動車保険契約車に提供する(ドライブレコーダーなどの?リリースでは「自動車保険のデバイス」との表現になっている)車載機器から取得した「走行データ」を活用し、交通量に対して急ブレーキなど危険な運転挙動の発生頻度が高い地点を、最少約120mメッシュで、地図上に分かりやすく表すものとしている。「交通安全マップ」上では、120mメッシュが赤、橙、薄い橙、黄色、薄い黄色、緑などに色別に分けされ、地図の倍率が拡大・縮小された場合にも、危険個所が分かりやすいように表現されている。しかし、「危険挙動の発生件数」のみでは、幹線道路と生活道路などの規模の異なるエリア間の比較は困難であることから、「発生件数」に加え、「交通量」も加味(データ活用)した「危険挙動発生率」による危険個所候補の判別を行うことで、道路の規模に拠らない評価を可能としている。走行データは約1秒間に一度の頻度でデータ取得を行い、契約車の挙動を詳細に分析している。「支援サービス」の内容は、「交通安全マップ」から①選定した危険個所の②詳細分析を通じ、最適な③安全対策メニューを提案するものとなっている。さらに④対策メニューの「効果検証」を通じ、政策の継続・見直し等を提案し、運用する地方公共団体などを支援、政策の有効性を向上させるとしている。4月から提供されるのは、①となり、②~④は、この5月からの提供としている。同社は今後、事故データの活用、新たな危険運転挙動の定義化、国立大学法人埼玉大学との産学連携等を通じて、本サービスの更なる高度化を図って行くとしている。またサービスを提供する領域を地方公共団体から、交通安全対策(標識設置等)に関連する事業者との協業も進めてゆくとしている。また、本サービスを通じて引き続き、同社の顧客や地域・社会とともに共通価値を創造し、社会・地域の交通安全に関する課題解決への貢献を目指すとしている。また、同社の4月28日に中国子会社である愛和誼日生同和財産保険有限公司(ADIC)は、交通事故低減並びに自動運転対応の強化を目的に、自動運転分野で独自の強みを持つMomentaと戦略提携契約を締結、5月24日に提携セレモニーを開催する予定だ。世界各国では特定条件下において、自動運転が可能になる「レベル4」の実用化に向け、開発研究が進む。中国では、政府主導で自動運転技術の成長を促す政策が進む。一部地域において自動運転タクシーの実証実験や自動運転サービスの提供が始まっている。またライドシェアサービスや、商業トラック・その他業務用車両等の台数が増加した結果、交通事故も増加傾向にあるという。このため、ADICとMomentaは、車両安全サービス、リスク管理・低減の両面における好循環サイクルの創出を目指し、Momentaの「自動運転技術とモビリティサービス」、ADICの「テレマティクス領域における経験と事故低減のノウハウ」を活用したモビリティサービスの安全性向上、並びに保険商品・サービスの研究・開発に取り組むため、今般、戦略提携を締結したとの背景があるとのことだ。中国の自動運転技術を持つユニコーン「Momenta」は、中国北京に本社を置く。2021年11月にシリーズCの追加ラウンドで5億ドル(約570億円)を調達し、シリーズCにおける全体の資金調達額は10億ドル(約1140億円)を突破したと伝えられる。リード投資家には、中国の上海汽車集団、米国のGM、日本のトヨタ自動車、ドイツの自動車部品大手ボッシュなど、著名企業が名を連ねる。初期の投資家には、メルセデス・ベンツや、中国の小米(シャオミ)創業者が率いる投資会社などの名もある。同社は自動運転技術開発(量産自動運転向けソリューション「Mpilot」、完全自動運転向けソリューション「MSD」、車載器+クラウド+運行管理のフリート向けソリューション「AutoRing」などの運転支援関連製品の提供)に特化し、提携先となる自動車会社に技術を提供している。同社の技術は、無人自動運転と自動運転補助システム開発の両面を行く戦略を取っている。この両面作戦が、自動車大手や部品大手の投資を呼び込むことに成功しているとの評がある。今後両社は、ADICの安全運転評価ノウハウとMoment独自開発の車載機器と運行管理システムを組み合わせることで、法人向けの事故低減に取り組むとしている。また個人向けには、安全運転促進、走行データを活用した事故検知、Momenta社の自動運転技術を用いた事故対応システムの研究開発などを共同で進めるとしている。国内外の動きを俯瞰すると、あいおいニッセイ同和損保㈱は、自動運転領域を軸として、地方公共団体向け、法人向け、個人向け、さまざまなユーザーに向けた保険商品のラインナップを開発・構築している様子が伺えるのではないだろうか。

東京都 新築のビルや住宅に “EV充電設備義務づけ” 検討 他

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5月6日 列島では自動運転サービスやEV、MaaSなどの普及に向け、様々な動きが展開している。Community Mobility㈱は、4月1日より自宅から半径2kmの生活圏の移動を支援する「人とひと、人とまちをつなぐ、新たなモビリティサービス」の展開を開始している。Community Mobility㈱は、2022年1月にWILLER㈱とKDDI㈱が設立した相乗りオンデマンド交通サービスの運営や同交通に関するコンサルティングなどを行う会社だ。現在、同社の提供する「mobi」は、アプリや電話で予約することが出来、30日間5,000円/1人目(同居家族は6人まで登録可能、2人目からは500円)でエリア乗り放題の相乗り移動サービスとして展開に力を入れている。すでにサービスが展開され、利用可能となっているエリア(同社ホームページ上)は、国内では東京都の渋谷区エリアおよび、豊島区エリア、名古屋市の千種区エリア、大阪市の北区・福島区エリア、京都府の京丹後市エリアとなっている。これまでの地域内の移動の主な足であった自転車やマイカーからの乗り換えを目指す「ちょいのりサービス」だ。「mobi」は呼出し後、自宅付近に設定された乗降ポイント(配車依頼をした後、アプリ内で案内される)から乗車できること、相乗りサービスである為、目的地へ直行する経路を辿らない点、エリア内に限定した運行形態などが、タクシーなどとは異なる。また路線バスのように、営業車両が決まった運行ダイヤに基づき走行するのでなく、営業時間内であれば、利用者のニーズに合わせ呼出しが出来るため、より利用者の生活のリズムに沿った移動サービスを提供できる。*但し、コールセンター:050-2018-0107 の営業時間は、平日9:00~19:00、土日祝は10:00~19:00 となる。同社は今後、①生活圏における課題解決や必要なサービス、小さなエリアごとにフィットしたサービスを目指し、まず22エリアでそれぞれの地域課題とニーズの調査を行い、サービス化の検討を行う。②移動とエンタメ・スポーツ・教育・医療・介護を始めとする他業種とのコラボレーションを行い、「移動目的」の創造(吉本興業/住みます芸人、イオンタウン/ショッピング、イーオン/英会話教室への通学)と、「移動総量」の増加に取り組む。③キャンペーン設定により、利用開始より30日間は無料、次の30日間は1,980円で乗り放題となる生活応援キャンペーンを5/31まで実施(*先着1,000名、4/21~5/31まで、渋谷区、豊島区、千種区、北区・福島区、京丹後市が対象エリアで実施中)、などの施策を実施していく。同サービスの展開予定とされる提供・エリア(プレスリリース/2022年4月21日)には、根室市(2.3万)、室蘭市(7.9万)、大館市(6.8万)、佐渡市(5.1万)、渋谷区(22.8万)、豊島区(28.3万)、東京都港区(25.8万)、旭市(6.3万)、千種区(16.3万)、三重県明和町(2.2万)、京丹後市(2.2万)、大阪市北区(14.1万)、大阪市福島区(7.9万)、富田林市(10.8万)、奈良県(なら歴史芸術文化村~奈良公園周辺観光施設~天理駅 / *参考:天理市:2.9万 / 奈良市:35.2万)、三豊市(6.0万)、琴平町(0.8万)などが挙がる。人口ベースで、このラストワンマイルに向けたMaaS(Mobility as a Service )に設定された22エリアを読み解くなら、大都市型、近郊型、地方都市型、地方郊外・過疎型、観光地型と読み解くことが出来る。このうち、同社サービスの今後の展開において注目したいのは、サービス成立の判断基準となるであろう採算の観点から、三重県明和町や京丹後市、琴平町などだ。ただこれらのエリアは、人口ベースで捉えれば、22エリア中においては上位ではないものの、何れも地域活性化の切り札とも言える「交流人口」を創出する「観光スポット」を擁するエリアとも言える。通信事業者である、KDDI㈱の目にこのサービスはどのように映るのだろうか?同社の高橋 誠社長は、「コミュニケーションを担うからこそ、できることがある」「コミュニケーションをお客様にお届けしている私たちが、人の移動についてもできることがあるのではないか」と発言しており、また同社では、4月26日に発表したニュースリリース「~mobi事業のさらなる拡大と新たな移動体験価値を創出し、地域共創を実現~」においては、KDDIは「移動を、感動に変えてゆく」のコンセプトのもと、本提携を通じてWILLERと交通業界のDXや新たな移動サービスの創出に取組み、地域共創の実現を目指していきます、としている。このときの提携内容を振り返ると、①mobi事業の更なる高度化と、mobi事業を活用した新たなビジネスモデルの構築や地域共創の実現、②人流データを始めとするビックデータ分析による、WILLERのサービスおよび交通業界のDX、③5Gや自動運転などの先端テクノロジーを活用した地域価値向上に向けた移動サービスの創出、④WILLERの会員基盤および移動サービスとau経済圏の連携による両社の事業拡大、とされている。通信が主体となるKDDI(通信事業者)にとって、WILLERのような地域の移動サービスの実施主体は、サービス展開地域において、自社のインフラを潤す継続的な(人流)データの源泉とも言える。そして、蓄積されるビックデータを解析することによる、新たなビジネスモデルの創出(移動解析結果のマネタイズ)が、その先に置かれる課題となるものと思われる。そのうち、解析された人流データについては、移動サービス主体となるWILLERが地域創生を課題とする自治体に、自社サービス展開していく上で、直接的に必要な情報となり、乗合いバスなどのうち路線設定(バーチャルバス停)が必要とされるケースでは有用なデータとなる。このためKDDIは、WILLERと乗合いサービス展開しながら、コミュニティ内の移動を掘り起こし、この解析結果の利用を考えて行くことになろう。人流データの活用は、政府の掲げるSociety5.0そのものとされる。「サブスクリプション」と「リカーリング」という言葉が思い浮かぶ。リカーリングとは、「繰り返される」「循環する」という意味を持つ。単体の製品などの販売で終わるのではなく、販売後も顧客から継続的に収益を上げるビジネスモデルを言う。KDDI㈱の高橋社長は、この30日間5,000円/1人目(同居家族は6人まで登録可能、2人目からは500円)でエリア乗り放題の相乗りサービス「mobi」は、2kmの生活圏内で「どのようなライフスタイルを提案できるか?」が大切な点だという。一方「サブスクリプション」は「定期購読」「会費」の意味で、IT業界などでは、アプリ購入やサービス契約の際に耳にする言葉だ。契約期間内であれば、アプリなどは無償でアップデートを受けることが出来る。リカーリングは継続した支払い形態でありつつも、料金は一定ではなく、時々の使用料(相乗りサービスで言えば利用料)によって異なる。サブスクリプションは、一定期間サービスや商品を利用するのに、決められた額を月払いあるいは年払いで支払う。KDDIの高橋社長は、「契約していただくだけではなく、契約からどれだけ深くお付き合いできるか」が課題とする。WILLER㈱とKDDI㈱の共通課題は、Community Mobility㈱の立ち上げにより、人流データの解析によって、今後どれだけ利用者の移動動機を維持し続けるコンテンツ(2kmの生活圏内で、ユーザーにどのような移動サービスとよきライフスタイル)を構築・開発して行くことが出来るか?ということになるのかも知れない。2社は目指したい世界を「健康的で豊かな暮らし、コミュニティができ、人とひと、人とまちがつながる」としている。自治体主導のサービスの場合、このような移動サービスの展開は「三重県広域連携スーパーシティ構想」のように、あらかじめ広域連携の合意が取れている場合以外は、あくまで管轄となる地域内に留まることになるが、民間が提供主体となる移動サービスなら、自治体の枠を超えていくという点では、ハードルは低くなる可能性もある。WILLER㈱がKDDI㈱と新会社を設立する意味も、通信インフラ確保の必要や、全国市町村への展開をよりスムーズに行うためとの考えからではないかと思われる。Community Mobility㈱は、今夏に秋田県大館市においても実証実験を展開する予定だ。同市は「先導的共生社会ホストタウン」として、すべての人の移動と生活を支える「バリアフリー基本構想」策定を契機に、既存の公共交通に加え、相乗り移動サービス「mobi」を導入し、移動総量拡大による市民や利用者の幸福度向上と地域再生につなぐ。「mobi」は、地域の住民にとっても、自治体にとっても、移動サービス主体にとっても、三方良しを形成していると言えよう。地域経済に溶け込むという意味では、地域交通体系の中でいかに他の交通サービスと連携できるのか?や、観光スポットを持たず、移動総量も少ない、移動距離も2㎞以上となる山間部などへの展開が可能か?という点などについても、採算の合う2km圏、合わない2km圏を組み合わせサービスを成り立たせることが出来ないか?など、この22地域へのサービス提供事例を通して、地域ごとに違ってくる様々な"解"を創出していただきたいと思う。

複数の自律運転建機を遠隔操作、大林組が実証を始めた! 他

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5月2日 4月22日から、福島県相馬郡飯舘村で大林組が環境省福島地方環境事務所より受注した「令和2・3・4・5年度飯舘村長泥地区環境再生事業盛土等工事」において、複数の建設機械の遠隔操作、自動・自律運転を行う実証実験を始めた。飯舘村は、東京電力福島第一原発から西北に30~50kmに位置する。2011年3月11日の震災発生後に同原発で起きた原発事故の後、同村の上空を放射性物質を含んだ雲が通過したことにより、村の全域が放射線量が年間積算20ミリシーベルトに達するおそれがあるとする「計画的避難区域」に指定された。ちなみに20ミリシーベルトとは、一般公衆の線量限度(年間)は1mSv/y(※医療は除く)なので、その20倍の線量ということになる。一人当たりの自然放射線(年間・世界平均)は2.4mSv/yとされている。放射能業務従事者及び防災に係る警察官・消防従事者に認められている上限は50mSv/yだ(参考:https://www.r-info-miyagi.jp/r-info/column/add_calc/)。「計画的避難区域」とは、事故後、住民の生命・身体への危険を防ぐため、或いは避難に混乱が生じないように、1ヶ月以内にすべての住民が避難を完了させる区域を指す。事故の後、この指定を受けた地域は、葛尾村、浪江町、飯舘村、川俣町の一部、南相馬市の一部であった。実際、その後、飯舘村は2017年3月31日まで「計画的避難区域」の対象となり、同村の長泥地区はその後も避難指示が解除されなかった。環境省の除染情報サイトを拝見すると、飯舘村の除染実施計画は2012年5月に策定され、対象区域の人口は、約6,000人、除染実施対象面積は、約5,600haとされている。うち、宅地は約2,100件、農地は約2,400ha、森林は約2,100ha、道路は約330haとの内訳だ。飯舘村の「特定復興再生拠点区域復興再生計画」(平成30年3月27日)の計画の意義・目標によれば、平成29年3月31日に避難指示解除となった同村において、長泥地区だけが帰還困難区域のため避難指示が解除されておらず、村内全域において村民が帰還・居住できる環境を整備することが村の復興にとって重要であり、長泥地区においても、村民の帰還意向等を踏まえ適切な区域の範囲を設定しながら、村民が生き生きと暮らすことのできる復興拠点の整備を行うとしている。具体的には、村の掲げる「ネットワーク型の新しいむらづくり」の理念を踏まえ、以下の目標のもと「地域住民が生き生きと暮らし、絆をつなげる拠点」、「次世代に長泥の歴史をつなげる拠点」を目指す。以下の目標とは、帰還して居住する住民に加えて、当面避難先との二地域で生活する住民のための住環境等の整備による地区の再生、地域とのつながりの深い方、地域を応援してくれる方などとの交流促進による地域コミュニティの再生、農の再生に向けた取り組みや、復興拠点を活用した観光・交流の創出に向けた取組みのことである。冒頭に戻るが、現在大林組が取り組む「令和2・3・4・5年度飯舘村長泥地区環境再生事業盛土等工事」の現場実証の背景(一部だが)は上記のようなものとなる。大林組は建設DXの一環として、「ロボティクスコンストラクション」を提唱、作業環境の劇的な改善や建設機械との接触などによる事故撲滅を目的として、技術開発を行ってきた。今回の現場での試験運用を通して、これまで培ってきた建設機械の遠隔操作や自動・自律運転の技術を集約することで、安全性と生産性の向上や大規模土木工事の「無人施工」が可能であることを実証している。実証の内容は、①高度な遠隔操作、自動・自律運転の技術を有する建設機械の運用、②複数の建設機械の運用管理、③工事に関する詳細なデータの活用だ。①は土砂の積み込みは、トンネル工事現場で運用してきたバックボウ遠隔運転システムの適用範囲を盛土現場に拡張、場内運搬は、キャリアダンプの自律運転を適用、土砂敷き均しおよび転圧は、ブルドーザの自動運転を適用するとしており、いずれの建設機械も遠隔操作への切り替えが可能としている。②は一人のシステム管理者が、複数の自動・自律運転が可能な建設機械を効率よく運用できるプラットフォームで、システム管理者は、このプラットフォームを利用し、建設機械に作業内容を入力することで、一連の工程で複数の建設機械が連動し、運転するよう制御、施工状況の確認もできる。また、当日の作業条件に合わせ、作業場所や立ち入り禁止区域をシステム上で設定、建設機械同士、あるいは作業員との接触を予防することを可能としている。③はGNSSによる建設機械の位置情報と、3Dレーザースキャナーによる周辺地形データ及びマシンコントロール*機能を活用して施工を行い、施工の各段階における運行履歴データや、出来形データを自動取得する。これらのデータは継続的に取得、施工の進捗や機械の稼働状態の管理、施工計画の最適化に活用して行くとする。* マシンコントロールは、自動追尾式のトータルステーションやGNSSなどの位置測定装置を用いて、建設機械の位置情報を計測、施工箇所の三次元設計データと現地盤データとの差分に基づき、排土板の高さ・勾配を自動制御するシステムのこと。これらの自動化施工の取り組み概要によると、工事概要は、盛土工313,000立方メートル(うち自律・自動化施工予定数量は、20,000立法メートル)、試験施工期間は、2021年10月~2022年6月の9ヵ月としている。本日実証での施工範囲は限られるが、その後も回復を待つ地域の途方もない量の盛土を遠隔操作自動・自律運転化の技術が制し、再び飯舘村の村民の方々が望む環境に回復させるためには、まだ相応の時間が必要と思われるが、これらの技術は次世代に引き継ぐべき飯舘の姿を確実に手繰り寄せる力になることは間違いない。

自動配送ロボットが次のフェーズへ!2022年4月の自動運転ラボ10大ニュース 他

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4月29日 神奈川県藤沢市に「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」という街がある。1961年に松下電器産業が初めて関東に進出した際、建設した藤沢工場の跡地を活用した新たなまちづくりとなる。スマートタウンという領域では、先行して静岡県裾野市に建設中のトヨタ自動車(ウーブン・プラネット・ホールディングスグループ)の「Woven City」(ウーヴン・シティ)を起草するが、生い立ちが松下電器産業であるPanasonicは、藤沢の地でどのような「まち」を実現しようとしているのか?調べてみた。かつて冷蔵庫の専門工場としてその名を馳せたFujisawa工場。その環境は自然に恵まれ、公園工場としてもよく知られていたという。2008年当時、パナソニックは宇都宮工場(液晶テレビの生産拠点)に車載用ディスプレイなどの工場を拡充し、藤沢工場の生産を取り込むことが決まった。工場撤退後もパナソニックと藤沢市の双方は、パートナーシップを実現できる方法を模索、結果多くの人々が居住でき、様々な施設を誘致、藤沢を再び活性化出来る可能性を持つ「まちづくり」という道を選択することとなった。2010年11月には、藤沢市と同社は基本構想で合意し、環境やエネルギー、安心・安全に関する街の目標を掲げ、約19haの広大な土地の新たな街づくりに取組むこととなった。藤沢市も環境行動都市のモデルプロジェクトとしてグローバルに発進すべく、地域連携を含むプロジェクトの推進に協力。9社と1市のパートナーシップの下、2013年のまち開きを目指し(実際は2014年4月)、新しいまちの開発に向け開発事業者、メーカー、サービス事業者が一体となり、マスタープラン段階から開発後の運用までを見据えた、総事業費約600億円、1,000世帯規模の街づくりが推進された。「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」の用地は、大きく高齢者施設、公園・道路、集合住宅、戸建住宅、商業施設に分かれる。パナソニックの先端技術を起点に、パートナー企業と8つのサービスが展開されることとなった。このプロジェクトのオーナーはパナソニックと、パナホームである。地域連携推進役には、藤沢市が腰を据えた。タウンコンセプトは「生きるエネルギーが生まれる街」。2013年3月には、タウンマネジメント会社「Fujisawa SSTマネジメント株式会社」が設立されており、17社1協会(2014年時点)によるFujisawa SST協議会を中心にスマートタウン・サービスの開発が進められた。町の住民向けに提供されたサービスは8分野、エネルギー(エネマネにより、町全体の創エネ・省エネ・蓄エネのベストミックスを提案)、モビリティ(環境に優しい交通手段をコミュニティ全体で共有)、セキュリティ(街丸ごとでさりげない防犯や見守りサービスを提供)、ヘルスケア(日々の健康管理から理美容までをサポート)、コミュニティ・プラットフォーム(通信サービスと住民向けサービスポータルを提供)、ファイナンス(不動産から環境設備の購入まで家計を支援)、アセットマネジメント(緑や公園や街路灯を管理し、資産を維持・向上する)、クラブサービス(*エコライフを啓発・促進するため住民交流の場を提供する)となった。プロジェクトオーナー以外に参画した企業は、アクセン、オリックス、住友信託、東京ガス、日本設計、三井不動産、三井物産となる。街には、様々な施設も建てられていく。街づくり拠点「Fujisawa SST SQUARE」、商業施設「湘南T-SITE」、健康・福祉・教育施設「Wellness SQUARE南館」、次世代物流センター「Next Delivery SQUARE、」」、健康・福祉・教育施設「Wellness SQUARE北館」などが建設されていく。街のコンセプトである「生きるエネルギーが生まれる街」には、様々なエネルギーが含まれる。「太陽という生きるエネルギー」「安心という生きるエネルギー」「行動というエネルギー」「健康という生きるエネルギー」「つながるという生きるエネルギー」がそれである。どれも大切だが、本稿では、先に上げた「Woven City」(ウーヴン・シティ)との違いを際立たせるため、「太陽というエネルギー」、自然エネルギーと「創エネ・蓄エネ・省エネ」などの先進技術のハイブリッドによって自産自消のエネルギーマネジメントに注目してみたい。藤沢市は東京から約50キロの地点に位置し、神奈川県においては県の中央南部に位置する。横浜市、鎌倉市、茅ヶ崎市、大和市、綾瀬市、海老名市、寒川町に囲まれ、南は相模湾に面する。土地柄はおおむね平地と言ってよい。東海道線に乗れば、東京まで約50分、横浜市までは約20分だ。「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」は、災害に強く環境負荷の少ない再生エネルギーを、暮らしの主役に据える。太陽光発電等を最大限活用し、自産自消(自分たちで使うエネルギーは、可能な限り自分たちの家でつくる)をキーワードとしたエネルギーサービスを提供するとしている。街の戸建住宅は約600世帯。すべての家に①太陽光発電システム、②蓄電池ユニットを配している。さらに家庭内のエネルギーをマネジメントする③「スマートHEMS」(*HEMS:ホームエネルギーマネジメントシステム)で、自産自消を実現している。目指すのは、エネルギー効率を最大限高めた「自立共生型のエネルギーマネジメント」だ。戸建住宅は、オール電化タイプと燃料電池タイプが用意され、暮らしに合わせたエネルギーニーズに対応する。戸建住宅には「創蓄連携システム」も導入され、太陽光発電システムや、蓄電池、家庭用燃料電池を「エネファーム」が連携させる。家でつくったそれぞれの電気を使い分けし、なおかつ余剰電力を売電に回すことも出来る。各家庭の「創蓄連携システム」は、将来的には「個」が「共生」し、町の各施設の「BEMS」(ビルエネルギーマネジメントシステム)とも連携させる。この「群」はやがて街全体の「CEMS」(地域エネルギーマネジメントシステム)と接続され、「自立共生型のエネルギーマネジメント」を成す。これらのシステムを活用することで、街と住民が一体となり、節電に取組むことが出来るという次世代のエネルギーライフを実現する。また、街には相模湾からの海風や太陽光を街の隅々に行き渡らせる「パッシブ設計」が採り入れられている。この「パッシブ設計」によって、風や光、水や熱などの自然の恩恵を無理なく取り入れる。この考え方は古くからある日本家屋の藁ぶき屋根の知恵に倣ったものだ。街の構築物(街路樹やガーデンパスと呼ばれる家々の間の生活道路)のレイアウトは、「風の通り道」を考慮して設計されている。住戸同士は、「タウンデザイン・ガイドライン」により、互いに太陽の光を遮らない街づくりがなされている。これにより太陽エネルギーがベースとなった創電・蓄電・省エネ機器による、アクティブ(積極的)なエネルギーマネジメントの効率を最大化している。そしてパッシブ(自然の恩恵の享受)とアクティブ(積極的なエネマネ)が、互いの性能を高め合い、街の住民に快適でエコな生活を提供している。この街では、見えないものが見える(と言っても、超自然現象のことではない)。むしろ極めて科学的に考えられた「スマートHEMS」や「BEMS」によって、個×の住宅はもちろん、街の全ての電気を「見える化」している。これらを家族構成や電気の使用状況などの情報をもとに、エネルギーに関するアドバイスを行うサービスも実施されており、電機の使い過ぎを抑制したり、売電したい家庭にも役に立ち、環境と家計の双方に貢献している。スマートハウスHEMSにより、住宅の家歴情報、家電機器情報、住人属性情報などがエネルギ情報(HEMS)を介して、街全体の「見える化」サーバに集約される。これらの情報は、住宅購入の動機付けや、入居後のライフスタイルの提案により、スマート機器の更新(買い替え)・賢い使い方の浸透を継続して行ってゆく。ハードウェア更新の促進により、常にスマートな家・設備・暮らしの状態が持続されるという。また東日本大震災の経験から、被災時の電力の重要性が見直され、被災時であっても電力供給を止めない仕組みづくりが行われている。「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」では、非常時でも明かりが灯る家で生活を営むことができる。携帯電話やタブレットなどの情報ライフラインや、EV、電動アシスト自転車といったモビリティに関する電力の確保も可能だ。これにより電力が街の復旧までの活力源となることが想定されている。街の戸建住宅には、太陽光発電システムと、蓄電池だけでなく「エネファーム」*も制御できる「創蓄連携システム」を導入するとしており、停電時でも太陽光で作られた電力と「エネファーム」が発電する電力の両方を活用できるため、より安定した電力の供給が受けられる。これにより給湯も利用できるようになる。その他にも、エネルギーマネジメントによって、あらかじめ設定された照明や冷蔵庫、テレビなど必要最低限の設備機器に電力を供給し続け、非常時にもエネルギーを絶やすことがない。*エネファームは、パナソニックの家庭用燃料電池の名称。エネルギーをつくるファーム(農場)という意味の造語。水素と酸素でエネルギー(電気とお湯)を同時に作ることが出来る。暮らしに必要なエネルギーを、効率よくおトクに「自産自消」できる。また、この街の公共用地には「コミュニティソーラー」が設置され、非常時は電力系統に電力を供給を支援させ、平時には地域全体の低炭素化に貢献させる仕組みだ。この設備は街の住人だけでなく、非常時には周辺地域の住民の「非常用コンセント」として開放するとしている。また太陽光発電を備えたユニット・システムは、移動が簡単にできるため、将来体には分散型の再生エネルギーとして多方面での活躍も期待される。街のセントラルパークに建設された「コミッティーセンター」には、太陽光発電システムや蓄電池も整備されており、電線の地中化や、耐震性に優れた中圧ガス導管を使用する等、街全体に災害時を想定したハード面の備えを構築している。これらのハードを非常時に有効活用できるよう、住民は10世帯~20世帯ごとに一つの共助グループをつくり、タウンマネジメント会社が、企画する季節のイベントや、防災イベントに参加し、交流を深めながら結束力や連携力を高めるといったソフト面での取組みも見逃せない。「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」では、パナソニックが4月15日に「保安要員なし」の小型低速ロボットを使用した自動配送サービスの道路許可を取得したと発表、今後街以外への展開も想定し、自動配送サービスの実用化に向け、取組みを進めてゆく。近い未来、この街にさらに新しい風景が加わりそうだ。街では、「Fujisawa SST見学ツアー」も開催している。JR藤沢駅よりタクシーで約15分、バスなら藤沢駅北口の2番バス乗り場から、約15分程度とのこと。藤沢市にお立ち寄りの際には、心地よい海風に吹かれながら、このスマートタウンを散策してみるのもおススメだ。*アイコン画像は宅配ロボットのイメージです。

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