エントリー - h.shiba

自動車業界を創造的破壊 米巨大ITの次の挑戦 他

3月16日 自動車産業におけるFAMGAの行方は如何に。(FAMGA=GAFA+Microsoft)米国第46代大統領ジョー・バイデン大統領がパリ協定(地球温暖化対策の国際的な枠組み)復帰の文書に署名したのは、この1月のことだ。国内では、菅首相が昨秋2050年にCO2など温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す「2050年カーボンニュートラル」の実現を掲げ、続けて1/18からの通常国会の施政方針演説内で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明している。国内でも自動車産業に異業種からの参入が続いている。佐川急便やヤマト運輸など流通大手における他社とのEV共同開発の動きや、出光などの超小型EVの開発などがこれに当たる動きと言えよう。豊田章男会長も急速なEVシフトによる同産業への影響を懸念する傍ら、カーボンニュートラルは、自動車業界だけで達成するものではなくエネルギーのグリーン化も必須と考えているようだ。車を作るライフサイクル(材料~廃棄まで)において、二酸化炭素の排出量と吸収量がプラスマイナス・ゼロ、という理解が必要と言える。それは、FAMGAの投資分野からも見て取れるのではないだろうか。米国IT5大企業の一角、Amazonはテスラの元CTOが創設したバッテリーリサイクル企業、Redwood Materialsに出資した。同社は、2020年にジェフ・ベゾスとビル・ゲイツが支援する環境特化型のファンドなどから4000万ドルの資金も獲得している。国内でこれに同調した動きを見せる企業は、パナソニックである。同社は前述のRedwood Materialsと、2019年に提携を開始、テスラのギガファクトリーから排出されるバッテリーのリサイクルに着手している。自動車産業界の広義のサプライチェーンに「リサイクルソリューションの供給」が組み込まれて久しいが、この分野に再び脚光が当たる時機が巡って来たと言えるのかも知れない。

自動運転、広島大で定期運行開始 買い物支援へ実証実験 他

3月15日 酒続きの話題で恐縮ですが、西条酒・安芸津の酒を擁する国内屈指の酒処、東広島市にある広島大学の東広島キャンパス内で小売りと自動運転サービスの融合を目指した実証実験が進んでいる。本実証実験には3つのフェーズが設定されており、既に運行していたオンデマンド型の「広島大学循環バス」が、令和2年11月~MONET Technologiesの「手動運転の」オンデマンドバスに変更となっている。今回は第2フェーズとなり、米May Mobility社製の自動運転シャトルが投入される。広島大学では、3/10にお披露目式を開催、越智光夫広島大学長や髙垣広徳市長らが出席した。同シャトルの利用は今のところ、同大学の学生と教職員が対象だ。第3フェーズでは、本年9月からこのシャトルを使用した送迎及び商品配送が広島大学と「ゆめタウン学園店」などの間で行われる予定だったが、このフェーズは、2/1~2/28に実施された模様だ。この「東広島市買い物支援プロジェクト実証実験」は中国経済産業局が支援するもので、東広島市Autono-MaaS推進コンソーシアムの取り組みの一環としてMONET Technologiesに委託され、(株)イズミ「ゆめタウン学園店」の協力もとに実施された。モニターを募り①電話注文した商品の店頭受け取り(店舗送迎あり)、②電話注文した商品をシャトルで指定場所まで配送するなど実際の利用に即したサービス設定が用意された。取扱対象品は食品、飲料、惣菜を含む生鮮、日用品、衣料品。今回は冷凍食品とアイス類は除外されている。同市の人口は令和2年から数年でピークを越え減少に転じる見込みで、令和12年には193,000人になると見込まれている(65歳以上の人口は25%以上)。マイカーへの依存度も高い(自動車分担率:7割)。ゆえに市内中心部や国道2号、国道375号、主要地方道東広島本郷忠海線における渋滞も問題となっている。これらをクリアしていくためには、点在する市内の各種施設を結んだり、中心市街地への来訪を確保したり、広島空港や東広島駅など広域交通拠点へ乗り換えなしで到達できる移動手段が求められる。公共交通の利用減少は、即ち行政負担(バス補助)の増加につながる。また移動手段の整備と共に環境への配慮、渋滞緩和などの措置が求められる。オンデマンドバスや買い物(移動)需要の創出、或いは食料品や日用雑貨の配送は、公共交通の利用頻度の確保(=持続可能性を高める)や移動需要の確保をしながら、一方で重複する移動を整理することにも貢献できる。酒蔵通りで贔屓の一本を手に入れ、鍋の具材とともにオンデマンドバスに揺られる日が来るのが待ち遠しい。

東京・池袋で自動運転サービスの実証実験…地域交通との接続やフードデリバリー ウィラー 他

3月12日 WILLERは、3/10(月)~3/16(火)まで豊島区にある「としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)」周辺の公道で東京都「令和2年度自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」による地域の公共交通やサービスと連携した自動運転の実証実験を実施している。本実験の舞台である池袋は、JR池袋駅東口をはじめ、東京メトロ副都心線の東池袋駅、都電荒川線の都電雑司ヶ谷~東池袋四丁目~向原などの公共交通に囲まれ、サンシャインシティも隣接する。周辺には立教大学、学習院大学、東京福祉大学、帝京平成大学、東京音楽大学、東京交通短期大学、東邦音楽短期大学などのキャンパスが控える。商業と文化、そして大手私鉄やJR、都電荒川線などが交錯する都市型MaaSの実証実験の適地と言えよう。実験では地域の回遊性の向上(公共交通「IKEBUS」との接続)とともに、自動運転を用いた生活サービス(飲食や物販のネット注文、宅配サービス、大学向けサービス)の実用性や事業性の向上を図る。都市において、自動運転車両を用いたデリバリーがどの程度実用性を発揮できるのか?興味深いところだ。WILLERにはこれまでに本業の「移動」の傍ら「食」を扱ってきた経験がある。大阪の「WILLERバスターミナル大阪梅田」に隣接する「WILLER EXPRESS CAFE」、食と観光を融合した「レストランバス」(東京・京都で運行、その他期間限定ではあるが北海道、仙台、愛知岐阜、東三河、長岡京、三豊、熊本、沖縄、島根、若狭路、金沢、軽井沢、佐渡など)、京都タンゴ鉄道丹後宮津駅の「丹鉄珈琲~114kmCafe」、同レストラン列車「丹後くろまつ号」・カフェ列車「あかまつ号」、えきべんサービス(前述の列車の利用者に沿線の駅弁を指定駅のホームまで届けるフード・デリバリーサービス)114km marche(WILLER TRAINS SHOP)などなど。WILLERを単なる観光・交通事業者と侮るなかれ。WILLERが「IKEBUS」と共に池袋の副都心で行うこの実証は「Uber Eats」やタクシーによる「フードデリバリーサービス」に次ぐ新たなデリバリーサービスを生み出すかもしれない。今回の実験ではイケ・サンパーク内のコト・ポートの飲食店に協力を仰ぎ、アプリ注文したフードを自動運転車両が配送する。ちなみにコト・ポートには①北海道食材をふんだんに使ったHIGUMA Doughnuts(ヒグマドーナッツ)と京都のフレッシュフルーツ専門店SOUR(サワー)の共同出店「HIGUMA Doughnuts x SOUR the park」、②東池袋の日本酒と料理の名店「稲水器 あわてらす」の公園出張所とでもいうべき「あわてらす」、③ベトナムコーヒーとベトナムサンドイッチ・バインミーの「Café Bamboo」、④オーナーの南米旅行から生まれたスパイスカレーの名店「プラマーナ・スパイス」などが軒を連ねる(どの店のどの商品がデリバリーされるのかは、実際に実証に参加してみてのお楽しみである)公園×回遊性向上×フードデリバリーは新たなMaaSビジネスを呼び起こせるのか期待したい。

阪急阪神HD、西宮市で都市型MaaSの実証実験 他

3月11日 阪急阪神ホールディングスが三菱総研と共に西宮市でMaaSの実証実験を始める。その名も「maruGOTにしのみや」。実証は4/21~7/20までの3ヶ月間、西宮市在住の阪急阪神グループカード「STACIA PiTaPaカード」会員の中から約1000名をモニターとして募集して行うが、一部の機能やサービスを除き、モニター以外の方にもアプリを利用してもらう予定だ。アプリは4/8からダウンロード開始となる。アプリでは西宮市域におけるリアルタイムの経路検索や施設検索が可能だ。*リアルタイム情報の提供が可能なエリア・区間等は各移動手段により異なる。移動手段には鉄道(阪急・阪神・JR神戸線・宝塚線の一部区間)・バス(さくらやまなみバスを含む阪急バス全線)・タクシー及びシェアサイクル、また車やウォーキングも含まれる。家族などグループ単位での交通費総額(概算)が提示できるほか、経路検索時のルートの保存も可能だ。また西宮市域の施設「おすすめ100スポット」やスポットを目的地とした経路検索も可能。移動手段を介し、市内各施設のアクセス性の向上を図る。「ぐるなびサービス」では飲食店の予約、「バカン社サービス」では飲食店の混雑情報確認や予約も出来る。各々の交通サービス、タクシー配車(阪急タクシーアプリ・タクシーアプリ「GO」)をはじめ、シェアサイクル(HELLO CYCLINGアプリ)、カーシェア(タイムズカー Webサイト)、駐車場(タイムズの駐車場検索Webサイト)などとを通じて、予約や決済も可能だ。実験の期間中、対象施設や店舗利用したり、イベント参加を通じ、モニターにポイントが付与される。取得したポイントは西宮市域(一部市域外を含む)の実験協力店・施設で利用できる。また本アプリ限定のデジタル1日乗車券(阪急バス(西宮市内線)・さくらやまなみバス1日乗車券)との引き換えも可能だ。デジタルスタンプラリーでは、西宮市と有馬温泉エリアなどで、観光・飲食・ショッピングをセットにした3つのコースを設定、各コースのラリーを達成すると、嬉しいボーナスポイントが付与される。また、プロ野球開催時(特定試合日)に阪神電車の甲子園駅以外の駅周辺の駐車場(タイムズ及び同グループが管理する駐車場)に駐車し、その後公共交通機関を利用して甲子園球場を訪れたモニターにも、ポイントが付与される。ランドスケープとなる甲子園球場や有馬温泉、また並走する鉄道各社と市域の小売や飲食・観光・スポーツ経済を巧みに織り込んだ実証実験が展開される。清酒のスタンダードを築き上げた銘醸地の酒造家の子孫たちも、やはり進取の気風に富むようだ。

期間限定!「水が磨く郷」日田1日乗車券 他

3月10日 JTBでは大分県日田市でこの3/16(火)~3/22(月)まで、期間限定!「水が磨く郷」日田1日乗車券を販売する。この企画はJTBが行う観光型MaaSの実証実験でもある。折しも日田の春の訪れを告げる「天領日田おひなまつり」が開催されている。市内10数か所の旧家や資料館で全国的にも珍しい雛人形から紙と布で作る「おきあげ雛」などが公開される。実証では市内周遊の足となるAIタクシーが乗り放題となる「日田1日乗車券」をスマホアプリ上で販売(大人:500円)、温泉入浴券などの特典を提供する。大分県内での有名観光地(県内で立ち寄った市町村)と言えば、別府(24.4%)と湯布(20.7%)が二強と言える。ちなみに3位以下は宇佐市(12.6%)、大分市(11.9%)、豊後高田市(10.0%)となる。しかし、海外居住者の立ち寄り市町村を見ると、日田市(17.5%)が第3位にランクインする。ユネスコ無形文化遺産に登録された「日田祇園祭」や、小鹿田皿山地区にある「小鹿田焼(おんたやき)の里」など、日本の魅力が凝縮されているからなのかもしれない。日田の魅力に惹かれ、県外からの移住者も少なくないと聞く(県内で4年連続1位)。そのうちの約半数を20-30代が占め、九州や東京からの移住者が空き家に移り住み、水郷の町で子育てに勤しむ。三隈側や花月川に囲まれ、外国人や若い子育て層に好まれる水辺の街には、サッポロビール九州日田工場や「いいちこ」日田蒸留所、清酒「薫長」の蔵元などもあり、玖珠川沿いに足を延ばせば天ケ瀬温泉などもある。今回の実証実験はなんとも贅沢な実験環境となったようだ。日田市は、令和2年年7月豪雨によって甚大な被害を受けた。久大本線は、3/1(月)に8ヶ月ぶりに全線で念願の運行再開を果たした。博多と同地を結ぶ優等列車「ゆふ」「ゆふいんの森」も息を吹き返したばかりだ。新緑の季節、実験は終わってもぜひ訪れてみたい観光地だ。

お花のサブスクリプションサービス「ハナノヒ」を 小田急電鉄のMaaSアプリ「EMot」向けに カスタマイズして3月8日(月)から提供開始 他

3月9日 小田急「EMot」(https://www.emot.jp)が3/8から「EMotパスポート」を発売。駅構内や近隣の飲食店や生花店など40店舗以上でサブスクリプションサービスの利用が可能になった。小田急線のターミナル駅を中心とするそば、おむすび、ベーカリー、カフェ飲食、フラワーショップでの買い物に利用できる30日間の定額制チケットだ。都度決済の際の非接触化やキャッシュレス化を図る。「お花見自粛」が叫ばれる今日この頃、せめて玄関や食卓に花を飾って季節を愉しみたい、無駄足せずに。ならば!と日比谷花壇では「#うち花見」キャンペーンや「ハナノヒ365days」をおすすめしているが、今回の「EMotパスポート」サブスクリプションサービスを使えば、日比谷花壇の「ハナノヒ」がお勤め帰りでも、気軽に利用出来てしまう(*利用対象店舗は13店舗)。また「EMot」サイトではチケットインフォメーションページにエリア選択(東京、神奈川、静岡)とカテゴリ選択(旅行に便利なチケット、体験を楽しむチケット、日常で役立つチケット、乗物で使えるチケット)が設置された。Webサービス内の商品充実に伴い、ユーザーインターフェイスも進化を余儀なくされる。「EMotパスポート」は1回券が500円、10回券は3500円、通常は7800円で、飲食は利用し放題、「ハナノヒ」は5回利用できる*。現「EMot」は神奈川県と静岡県西部に「跨る」サービス提供エリアを持つ。経路検索は全国路線に拡大、利用できる経済圏(サービス)も拡大してきた。他社と歩調を合わせる必要があるが引き続きサービス提供エリアも拡大させたい。コロナ禍が過ぎた暁には「Izuko」やJR東日本の「TOHOKU MaaS」や「ググっとぐんMaaS」、JR東海の「エクスプレス予約」や「スマートEX」、JR西日本の「setowa」と連携し、利用者を本物の「お花見」に誘っていただきたいと願う。*https://www.emot.jp/service/detail/emotpassport.html

トラックの隊列走行運転に成功 運転者不足解決に期待 他

3月8日 経済産業省は3/5、高速道路におけるトラックの「後続車無人隊列走行技術」を実現したと発表した。「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:トラックの隊列走行の社会実装に向けた実証」は豊田通商に委託している。同社はトヨタグループ唯一の商社で、主要事業7つの一角に当たるグローバル部品・ロジスティクスや自動車事業、化学品・エレクトロニクス分野(システム・車載エレクトロニクス)などの事業を展開している。実験は省人化による経営効率化、CO2削減(燃費改善)、ドライバー不足への対応、安全性向上を図り、快適なモビリティ社会の実現を目指すものだ。同社はトラック隊列走行の他にもCASE対応として、量子コンピューティングや高精度衛星測位、ライドシェア、バーチャルパワープラント、リチウム資源開発等に取り組む。本実証の技術開発は、新東名高速の長泉沼津IC~浜松いなさIC間の約140kmで行われてきたが、今回の実験では、2/22に新東名高速の遠州森町PA~浜松SA間の約15㎞で、3台隊列の後続の2台を無人走行させている。トラックの時速は80km、車間距離9mを保ち走行した(浜松SA内では、車間5mまで狭め走行)。実験の様子はYoutube 経済産業省 metichannelで閲覧できる。「後続車無人隊列走行」とは「ドライバーが運転する先頭車トラック」が通信で連結された「運転席無人の複数台の後続トラック」を電子的に牽引する隊列走行のこと。主に有人の先頭車の走行軌跡を後続車が無人で自動追従する「①先頭車トラッキング制御」と、隊列内に一般車が容易に割り込めないよう車間距離を常に5-10m以内に制御する「②車間距離制御」により実現される。①では、後続車両にLiDARをはじめステレオカメラ、RTK-GPSを搭載、先頭車を認識させ、先頭車との横ずれを左右±50cm以内で追従させるとともに、先頭車両のLiDERから出たレーザー光の反射データを用い横位置ずれを検知、先頭車に追従するよう自動でハンドル操作を行う。また②では、隊列を組むトラックの間に他車に割り込まれないよう、時速80kmであっても常に隊列内の車間距離が10m以内になるように制御、従来の車間距離センサーだけでは、急ブレーキの際にトラック同士が衝突する恐れもあったが「後続車無人システム」では、車両間を通信で繋ぎ、先頭車両がアクセルやブレーキペダルを踏んでいる状態を、後続車に直ちに伝えて速度を制御できる。テストコース上では、時速80kmから、先頭車ドライバーによるフルブレーキ操作を行った際も、トラック同士の車間距離は約2m程度しか縮まらなかったとの結果を得ている。「③先頭車ドライバー支援技術」は、長さ約60mの隊列の中間車の側方と後方に取り付けられたカメラやミリ波レーダーを使い、先頭車ドライバーの隊列の側方や後方の周辺環境確認を支援、車線変更時にシステムが危険と判断する場合はドライバーに警報を鳴らす。今後の課題は、自然環境の変化(現状は雪や霧では走行できない)、装置故障への対応(一部の装置故障により速度50kmに減速させる縮退運転モード/隊列走行が継続困難な場合に、後続車を安全に車両を停止させるミニマル・リスク・マヌーバー)、割り込みへの対応(停車中の人の立ち入り:外部の表示器で注意を喚起、発進不能に/走行中の割込みの場合:LEDが割り込み危険の文字を表示、無理に割り込みを継続すると先に説明したMRMが作動、後続車はハザードを点滅、減速し安全に停止)など。経産省は今後の取り組みとして2025年度以降の高速道路におけるレベル4自動運転トラックの実現を目指し、高性能トラックの運行管理システムについて検討を行うとしている。

活力ある地域づくりはMaaSで 幕張メッセで「地方創生EXPO」開催 他

3月5日 地方自治体による「MaaS」への取り組みが活発化してきている。2020年12月7日から、先日2月28日まで山口県と山口市が「やまぐちMaaS・ぶらやま」を実施した。専用のWebアプリ「ぶらやま」を開発するとともに、新幹線の新山口駅から、白狐が見つけた美白の湯と謳われる湯田温泉まで「ぶらやま限定!!ゆけむり直行便」(乗合タクシー)の運行を行い、訪れる観光客に前述のアプリで利用者にタクシーチケットを購入や乗車日時の予約、乗車や「ゆけむり手形」を使い、周遊先となる観光施設や飲食施設113店舗でお得な特典を利用してもらった。料金は片道\1800(タクシー運賃/ゆけむり手形料金/消費税)。タクシーの到着地となる湯田温泉観光案内所からは、超小型モビリティ(タジマ・ジャイアン:2人乗り/カツラダモータースのBIRO:1人乗り)の無料貸し出しを行い、JR湯田温泉駅や山口駅を挟む、矢原駅~宮野駅間の範囲で市内観光の足とした。山口市の将来推計人口を見ると、2015年に197,422人だった人口は、2060年には160,018人となる。県全体でも、2015年には約140万人だった人口が、2045年には約104万人(-36万人、-26%)となる計算だ。山口県では山口県央連携都市圏域を「山口ゆめ回廊」と名付け、山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町と共に国全体の成長エンジンとなる都市圏づくりを推進する。山口版の地方創生においては「重層的コンパクトシティ(各地域がその特徴を高め合い、更なる価値創造や経済循環を生み出す)」を目指している。「第2期山口市まち・ひと・しごと創生総合戦略の取り組みの視点」には未来技術(AI・IoT・5G)を活用したSociety5.0への対応、人材の掘り起こしや育成、新たな都市基盤や既存公共施設などの有効活用による都市の生産性の向上が謳われている。未来技術導入の項目にはMaaSや自動運転車両など次世代交通サービスの導入も念頭に置かれている。その意味では「やまぐちMaaS・ぶらやま」は単なる交通政策の枠を超え、圏域全体の経済をけん引するための重要な仕掛けの一つとして位置付けられているようだ。「第2期山口県央連携都市圏域ビジョンにおける主な取組の方向性について」を見ると、第1期ビジョン「山口ゆめ回廊博覧会」(2021.7.1-12.31)では、コロナ禍を鑑みメインターゲットを国内観光客としてマイクロツーリズムを促進、圏域内を周遊する仕組みの構築を行い、第2期ビジョンとして、関西・中部・広島・岡山・福岡・北九州の各空港から2025年に開催される大阪・関西万博などに来日する欧米豪の観光客の取り込みを狙う。昨年12月17日に行われた「やまぐちMaaS・ぶらやま」の説明会場に足を運んだ、村岡嗣政知事の「山口は到着してから交通が不便なのが弱点。MaaSを活用し、さまざまな課題を解決していきたい」の言葉の所以だ。