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持ち主か、開発者か、メーカーか…自動運転の責任は誰? 法整備進まず導入足踏み 他

8月10日 ここ数年、国内の主要紙や経済誌が継続して、自動運転中に起きる事故の責任主体について、今後法的な整備はどのようになるのか?との話題を扱っている。「国交省 自動運転 事故 責任」「法務省 自動運転 事故 責任」などの語で検索を行うと、関連が深そうなのは、①「自動車損害賠償保障制度に係る最近の動きについて」(国土交通省自動車局 令和3年6月4日)や、同じく同局が平成30年3月に作成した②「自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書」などだろうか。①では、・現在の自賠法では、民法の特則として、運行供用者(所有者等)(※1)に事実上の無過失責任を負わせている(免責3要件(※2)を立証しなければ責任を負う)が、自動運転システム利用中の事故における本制度の維持が論点。・平成28年11月より、自動運転における損害賠償責任に関する研究会において検討を行い、平成30年3月20日に報告書をとりまとめ・公表。・主要な方向性については、平成30年4月にとりまとめられた「自動運転に係る制度整備大綱」にも盛り込まれたところ、自動運転車の導入初期におけるレベル4までの自動運転システム利用中の事故については、迅速な被害者救済のため、従来の運行供用者責任を維持することとした。また、保険会社等から自動車メーカー等に対する求償の在り方等については、関係者間で検討することとした、とある。※1:運行供用者は自己のために自動車を運行の用に供する者、自動車の運行についての支配権(運行支配)とそれによる利益(運行利益)が自己に帰属する者と解釈される(自賠法第3条)(判例・通説)。※2:免責3要件とは、自己及び運転者が自動車の運行に関し、注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと(自賠法第3条)。求償に係る協力体制の在り方に関する検討状況については、保険会社等から自動車メーカー等に対する求償権行使の実効性確保に係る協力体制を構築するため、作動状態記録装置に記録されるデータ項目も踏まえて、検討すべき事項(データ提供の対象となる事故の条件、ユーザーからの同意の取得方法等)を整理し、関係者が協調して検討中。令和3年4月1日に、自動運転に対応した自賠責保険約款の改訂を実施。また、ハッキングにより引き起こされた事故の損害(自動車の保有者が運行供用者責任を追わない場合)について、どのように考えるか。自動車の保有者等が必要なセキュリティ対策を講じていない場合等を除き、盗難車による事故と同様に政府保障事業で対応することが適当、とある。事故の責任主体の定義も続けて進化してきている。今後も自動運転に関する法の整備についてフォローしていきたい。報告書には見当たらないが、事故の究明には、自動車メーカー、運行供用者、保険会社等の中に警察や実際の作動記録装置の調査を行う調査会社が含まれる。場合によっては街頭に取り付けられた監視カメラの記録映像、ニュースなどでも頻繁に利用されるようになったが、歩行者が持ち合わせたスマートフォンの写真や動画なども真相究明の一助となる。IoT社会においては事故の責任主体を明らかにするための相方である「調査関係者」の概念もあわせて刷新されるべき時期かもしれない。

MaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス会社「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~ 他

8月9日 ニッセイ基礎研究所が発表したMaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス社会「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~を拝見した。これまで国により進められて来た地方都市型、地方郊外、過疎地型MaaSについて、現時点でもう一度深堀りすることが必要な幾つかのポイントがまとまっている。①地方ではMaaS構築以前に、交通手段自体を増やす必要がある事。デマンド交通などのサービス充実、基幹交通の自動運転化などが対策に当たる。②また丘陵地帯に開発されたオールドニュータウンに住まう高齢者・免許返納者の交通手段確保。ここでもやはりデマンド交通が解決策となる。地方における移動ニーズは、基幹交通ではなくラストワンマイルの比重が高いことが分かる。また高齢者が移動サービスを利用するにあたっては、スマホアプリやカード決済のハードルは高く、ここには電話対応(コールセンターもしくは担当者設置)が求められる。③事例には、みちのりホールディングス(以下、同社)が2019年度に日立市と近郊エリアで行ったデマンドサービスの例が挙げられている。大型バスを朝夕に1本ずつ運行し、事前に予約があった乗降所に立ち寄り最短ルートで運行、運賃は500円に設定したところ利用者は当初の予想を下回った。この事例から明確に分かるのは、通勤者は支給される通勤費用以上の交通機関利用には慎重である点だ。企業内の通勤費支給ルールにもデマンドサービスが加わる必要がある。地域企業の協力を得られれば、交通事業者は通勤者の人流という大きな収入源を得られる。④地元高齢者にMaaSを利用してもらうため、同社は地域の店舗との連携を進める。理由は、移動という手段と買い物や通院などの目的はセットだから、目的と手段のチケットをセット販売したということと、デマンドサービスなど新しいサービスの認知や普及は容易でないことから、地域の店で商品を購入する際、バスチケットと商品を一緒に変えると周知してもらった。地域に密着した小売店に協力を仰ぐというアイデアが創出・実践されている。その見返りとして、地域店舗はMaaSアプリ(ナビタイムジャパンが制作)に店舗情報を安価で登録できる(参加店が増えれば一店舗当たりの負担が抑えられる仕組みを構築している)。⑤デマンドサービスと既存交通(タクシー等)の競合問題。同社はデマンド交通の域外への移動ニーズが発生することを予測、その際はパーソナルなサービスを提供し、プレミアム料金を支払って貰う、コストが見合えばO.K.との柔軟な姿勢を見せる。(但し、この判断は同社がバス事業及びタクシー事業を包含する企業ゆえ、実現が可能ということかも知れない)。地域での新規参入事業者となるオンデマンドサービスと既存交通の棲み分けは、どう解釈されるのか?同社は末端交通と基幹交通を組み合わせた交通システムが効率が良く、それこそがMaaSの概念だと考える。地域交通事業者の業務提携やM&Aが進み、台所が統一されれば、徐々に解決される問題なのかもしれない。⑥MaaSの核であるオープンデータ化の問題。同社が1年目の実証実験で作成したアプリでは、JR東日本の運行情報も検索出来たが、2年目に作成したアプリでは、グループ内の事業者の運行情報のみとなった理由について、同社は鉄道事業者の運行データの取得に高額なコストがかかる点を挙げている。日本は、MaaSの主体が国ではなく民間企業ゆえ、交通事業者間の協力体制が課題となる。鉄道事業者側にも莫大なコストを投じて、運行データを整備してきた経緯がある。オープンデータ化とその連携は、MaaSの根幹であるため、国主導で例外として認可した自家用有償旅客輸送を担う事業者まで含め、オープンデータ化やデータ連携で事業が推進できない事業者を可視化し、急ぎ支援したい課題だ。⑦当初見えなかった収益問題。ここ数年は初期投資が必要となるが、利用者の回復や増加に至る時期も、さほど先ではないとの見方だ。収益改善のポイントは、サービスの認知・浸透。後押しする要素としては、コロナ回復経済、それに伴うインバウンドや観光需要の回復などがある。同社は地方MaaSレベルでの地元利用者の利便性向上を考え、路線バス再編などにも着手している。再編内容は、既存路線のバス停の削減による待ち時間短縮、運行本数の増加。そして、バス停からのラストワンマイルにデマンドサービスを接続させるなどの施策だ。この国のPDCAのうち、Cの機能が上手く機能するかが問われる局面ではないだろうか。

日本初、複数都市の自動運転バスを1か所で遠隔操縦 東急が実験 車両は「タジマ」 他

8月6日 静岡で東急株式会社が始動した。前回は伊豆半島から県西の静岡空港までを範囲とするMaaSの実証実験を行い、貴重な成果をレポートした。コロナ下での実証ゆえ、コロナ前の健常な旅行環境での数値的とは隔たりがあった筈だ。今回は静岡県の自動走行実証事業「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」を受託している。東急の静岡への熱意が感じられる。同事業は静岡県内の各地域が直面する地域交通の運転手の人手不足や過疎地域などの高齢者移動支援を念頭に地域の交通事業者が新たなモビリティサービスを展開、社会実装することを目的としている。これまで東急は静岡県内で観光列車・観光型MaaSなどの事業を通じ、地域の活性化や防災力強化に向け、2019年より県と各種連携協定を結び、課題解決に取組んできた。2020年に伊豆高原駅付近に複数台の自動運転車を監視・操縦する「遠隔コントロールセンター」を設置、運行車両の遠隔監視や、遠隔操縦技術を検証したが、この取り組みの内容が静岡県から将来の社会実装時に向けて、最も親和性が高いと評価され、今回の受託に至ったそうだ。今回は県内の賀茂郡松崎町(過疎地)、伊東市、沼津市(都市部)、掛川市で複数都市の車両の遠隔監視、遠隔操縦を行う。目新しいのは夜間の時間帯の自動運転、遠隔監視・操縦を項目に加えていることだ。実証には、名古屋大学、ソリトンシステムズも参画する。松崎では、遠隔監視・操縦オペレーションを検証、伊東市では車両を2台に増やし、狭隘道路での自動運転車両の運行(AI監視カメラと仮設信号機を設置、自動運転車両通過時には対向車側を赤信号にする)なども検証される。沼津と掛川は、複数都市・複数台での遠隔監視・操縦とともに信号との連携(信号情報非対応の交差点では、センター方でシステムを用いて円滑な加減速を行う技術を実証)、夜間時間帯の遠隔監視・操縦が試される(掛川市は協議中)。一般車両との安全な運行を実現するため、自動運転車両の後方に案内モニターを設置、一般車両との協調が可能かを検証する(関係者と協議中)。また、自動運転車両の車内には案内システムを設け、行先や次のバス停の案内、観光情報の放送など運転手が乗車しない際の、乗客への案内の充実を図る。遠隔コントロールセンターは伊東市に設置される。車両はタジマモーターコーポレーションの車両を用い、地域の交通事業者が遠隔監視・操縦、車両の保安要員を請負う。MaaS関連事業者は年を追うごとに実証実験の内容が、より実践の場を想定した作り込みを迫られるようになる。今回の内容を見てもそのような雰囲気がひしひしと伝わってくる。今後行われる、各実証実験の技術的な区分や情報共有、調べやすい・分かりやすい共有を望みたい。

MaaSアプリ「WESTER」「setowa」と個客選択型スタンプラリー「マイグル」が尾道市実証実験サポート事業に採択されました!

8月5日 尾道市では、地域課題の解決や豊かな市民生活の実現に向けて、地域における先端的なデジタル技術の活用、新規産業の集積、ブランド力向上を目的として、スマートシティ推進のための実証実験を募った。「尾道市実証実験サポート事業」と命名されたこの事業に、計10件の実証実験が採択された。提案された内容は、高齢者の健康増進や見守り、道路環境の美化、デジタル・トランスフォーメーションの人材育成やプラットフォームの導入、罹災証明書の迅速な発行、高齢者施設事業者向けの見守りサービス、急病の早期発見、見守り要員自身の効率化、人口非集中型地域でも、採算性やオペレーションの双方から成り立つモビリティシェアリングの検証や構築、地域コミュニティ内や、観光客向けの情報をデジタル化など多岐にわたる。その中でJR西日本と(株)ギックスが旅行者向けの観光スポットや公共交通機関のフリーパスを個人の嗜好に合わせ、AIを活用したスタンプラリーを通じ、市内の回遊や観光消費の促進、公共交通機関の利用促進を図るための個客選択型スタンプラリー「マイグル」を活用した実証実験をしている。JR西日本のアプリ「WESTER」や「setowa」に、この個客選択型スタンプラリー「マイグル」を積み、旅行者の嗜好に最適化された複数の選択肢から、オリジナルのスタンプラリーを生成することが出来る。旅行者は好みにより選択したお店で飲食をしたり、買い物をしたりするとポイントが得られる仕組みだ。旅行者自らの意思で立ち寄りたい店舗や食べたい食事や、試してみたいサービスを選択出来るので、ラリー参加率や、継続率を高めることが出来る。従来型のスタンプラリーのように参加者全員に、同じ提案内容が勧められることはない。お店側は既にある会員アプリを「マイグル」に置き換えて、新たにアプリを構築する必要はない(既存の会員アプリ内でスタンプラリーを起動させるため、WebViewでスタンプラリー画面を実装、POSシステム/ポイントシステムとAPI連携させる)。「マイグル」導入後は短期間でスタンプラリーを実施することが出来る。一昔前なら旅行者は、旅行雑誌や、ガイドブックを片手に、下調べの手間をかけ、出かけたい場所を探し、食べたい食事を探していた筈だ。そのような時代であれば、自ずと行きたい場所や店舗、観光スポットに向かうわけだが、昨今、Web上で出会った宿泊施設や、周辺情報に惹かれたり、ショップの発信する情報に触れ、旅を決めることも増えているのではないだろうか。更に尾道のような有名観光地であれば、様々なお店や観光スポットを、自分の好みに合わせて網羅することは至難の業と言えよう。現地に降り立ち、宿で一息ついた時「さあ、どこに行こうか?」、場所を選んでいるうちに一日目のお風呂や夕食というシチュエーションもあるのではないか。尾道の歴史は古く、瀬戸内海やしまなみ海道沿いの特徴ある景観とあいまって見どころは多彩だ。瞬時に好みに合った観光情報を提案してくれる「マイグル」は結構便利かもしれない。そして一度では見切れないこの街を何度も訪れたい「お得意さん」にとっても「マイグル」のポイントシステムは重宝するものとなるに違いない。

境町の自動運転バス、路線距離を4倍に拡充…「LINE」でオンデマンドも開始へ 他

8月4日 茨城県境町の自動運転バスの走行路線が、5Km(1路線)から20km(2路線、一部の路線は共用)に延長された。本日までの累計乗車人数は、3,177人(twitter.com/abi_sakai より)。全国初の自治体導入事例である境町の事例を、やはり全国の市区町村が注目しているものと思われる。自動運行バスの運行ルート選定・設定、3Dマップのデータ収集、障害物センサー・車両設定などは、BOLDRYが、車両のメンテナンスは引き続き、マクニカが行っている。今回のリリースの目玉は、この7月から運行が開始された、東京駅~境古河バスターミナルまでの直通高速バスと自動運転バスとの接続だ。高速バスの運行は、ジェイアールバス関東と関東鉄道が共同運行する。上り便はJR京浜東北線や東京メトロ南北線、都電荒川線の接続駅となる「王子駅」にも停車させる。経路となる首都高の渋滞時に備え、乗客の混雑回避ルートを考慮したものだ。境町の人口は約2万4千人(令和3年4月1日)、東京から60km圏内ながら、町内には鉄道路線を持たない。2017年2月に開業した圏央道の茨城区間全線開通の地の利を、最大限活用し、成田空港や都心へのアクセス性を大幅に向上させた。また、もう一つの目玉は、今夏モニターを募集して行うオンデマンド運行だ。バス停を新規に10ヶ所追加の上、モニターに「LINE」を使ってバスの予約と定時便の時刻表などを配信する。また、スマホを使わないバス利用者向けには、複数のバス停に自動運転バス呼び出し用のタブレットを設置する。LINEで受け付けた予約は、BOLDRY社の自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher」が捌き、各バスに最適な配車指示を出す仕組みだ。コミュニケーションツールの中でも普及率の高い「LINE」、利用者の使い勝手の改善も試みる。また境町は、持続可能性を高めるため、自動運転バスを運行する経済面の作り込みも進めている。町内で定期的に輸送している食品などを自動運転バスに混載、将来的には町内の産品を東京駅に直通する高速バスに積載し、都内に出荷する青写真を描く。モノの移動・産品販売についても、運賃外の収入源として考慮して検討している模様だ。別な観光MaaSの話題とはなるが、利用者の移動体験を「LINEミニアプリ」を導入すれば、高速バスのチケットの予約・購入、決済、経路検索、混雑状況の把握が出来たり、予定外の渋滞などで計画通りに移動できなかった利用者も、外部の地図サイトや自社の経路検索サイトと連携し、継続したアクセス情報を提供・フォローできたり、また一度、サービスを利用した顧客に「お得な情報(お土産の購入や季節ごとの産品の紹介情報など)」を配信したり、割引クーポンを発行したりも出来る。境町は、古河、坂東、常総、八千代とともに、茨城県西部の猿島台地に位置、下総国の名産「さしま茶」の産地に数えられる。ぺリーの黒船が来航した時分、地元の豪農、中山元成は海外貿易の必要性に目覚め、アメリカ総領事ハリスに接触、1859年日米修好通商条約発行と同時に「さしま茶」の輸出に成功している。キリンビバレッジの「キリン 午後の紅茶 ミルクティードルチェ 和栗モンブラン」(2017年1月24日から数量限定で発売)にも、「さしま産紅茶」として同じく茨城県産の「和栗」とともに使われた銘茶だ。1937年にアルゼンチンとの交流の証として建てられた文化施設「モンテネグロ会館」に移転オープンした「chabako」では、ランチタイム以外に緑茶の試飲をしたり、「さしま茶」や「SASHIMA CRAFT TEA」を試飲したり購入したり出来る。また、紅茶のテイスティング体験(こちらは有料)も出来る。LINEミニアプリとあわせて地元逸品の経済効果も、ぜひ実証して欲しいところだ。

自動運転トラック開発のTuSimpleが貨物ネットワーク構築に向けRyderと提携 他

8月3日 自動運転トラック開発のTuSimpleは、米国のフリート、輸送、サプライチェーン管理のRyderと提携した。Ryder社は1933年にジム・ライダー氏がモデルAフォードトラックに可能性を見出し、コンクリート運搬事業から出発した会社だ。5年後にはマイアミの飲料事業者(シャンパンベルベットビール社)が、同氏から5台のトラックをリースしたことから、同社の「フルサービスリース事業」がスタートする。1971年頃から「メンテナンスへの革新的なアプローチ」を立ち上げ、1987年にはケンタッキー州において、最先端の自動車工場をサポートする北米初の大規模なジャストインタイム供給配送システムを実装、1992年には数百のメンテナンス施設のネットワークを、コンピュータおよび自動診断ツールで繋いだ。2000年にはテキサス州ダラス/フォートワースにWeb対応の輸送管理センターを開設、地上(陸運)、航空、鉄道、海上貨物輸送の1500を超えるプロバイダのネットワークを通じて貨物輸送の管理をしている。2010年には天然ガス自動車を用いた大型トラックのレンタル及びリース事業を導入、翌年にはカリフォルニア州ランチョドミンゲスに初の天然ガス自動車メンテナンス施設を開業、大型天然ガス自動車の配送を開始した。自動運転トラック運用にあたり、Ryder社はTuSimpleのAFN(自動運転貨物ネットワーク)に必要なサポートを培って来た輸送管理のプロと言える。AFNは2024年までに米国内で展開が計画されている自動運転トラックのための配送ルートとターミナルの集合体のことだ。TuSimpleのAFNは自動運転トラック、デジタルマッピングされたルート、貨物ターミナル、顧客がオペレーションをモニターし、貨物のリアルタイム追跡が出来る。日本国内でもトヨタを中心とする大手商用車メーカーの連携が進むが、伝わってくるのは専ら自動運転車両の普及や高精度地図(いわゆるCASE視点)についての内容が多い。メーカーはメーカーゆえ、正しい潮流と言えるが、この動きを支援する足場(物流MaaS)についても、宅配事業者や倉庫事業者、陸運、海運、航空各社間などで積極的な動きが必要だ。TuSimpleが、Ryder社と提携した視点の中には、いわゆる貨物の受け渡しを行う物流センターとの意味だけでなく「調整された自動運転システムが使われているセンサーを必要に応じて搭載したりできる戦略的ターミナル」(ダウンロードサービスも含めた)との視点が存在する。日本でもこれらの機能も包含した拠点ネットワークの早期整備が望まれる。国交省に「特定整備制度概要」との資料がある。交通政策審議会 陸上交通分科会 自動車部会 自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会報告書では、先進技術の点検整備のあり方について、現行制度を、近年の自動車技術の電子化、高度化に伴い、「現行の分解整備の対象となる装置の取り外しを伴わない整備又は改造であっても、当該装置の作動に影響を及ぼすおそれがあり、その結果として保安基準適合性に大きな影響を与えるものが増加している」と評価、今後は「国においては、自動車整備自動車が行う自動ブレーキ等の先進技術を搭載した車や自動運転車(以下「自動運転車等」)の整備について、その確実な実施を担保するため、これらの整備を行う自動車整備事業者を、「自動車特定整備事業者」(仮称)として認証することが必要である。また、使用者がこれらの事業者を判別出来るようにすることが必要である。」としている。今のところ、①対象となる作業は、自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼす恐れがある整備・解像、②衝突被害軽減制動制御装置(いわゆる「自動ブレーキ」)、自動命令型操舵機能(いわゆる「レーンキープ」)に用いられる、前方をセンシングするためのカメラ等の取り外しや機能調整(※)※カメラを接続したことをECUに認識させるコーディング作業やカメラを取り外さずに行う光軸調整など、上記の取り外しを伴わない整備・解像、③ ①、②に係るカメラ、レーダー等が取り付けられている車体前部(バンパ、グリル)、窓ガラスの着脱※その後、カメラ等の機能調整が必要となるため、としている。①はレベル3以上の車に関係してくる。物流に携わる商用車から進む自動運転。普及にとっては、これらのサービス拠点をどこから配置するかも重要なポイントだ。

AI運行バス+自動運転技術の可能性とは? 日産がドコモと実証実験を実施 他

8月2日 横浜市に「I▫TOP横浜」(IoTオープンイノベーションパートナーズ)というIoT等を活用したビジネスに向けた、交流、連携、プロジェクトの推進、人材育成の場がある。市内の製造業(約6000社)、IT産業(約3000事業所)を客体として、個別プロジェクトの実施とマッチング、新ビジネスの創出や社会課題の解決、中小企業の生産性向上、チャレンジ支援などを行っている。IoT等を活用してオープンイノベーションにより、新たな製品・サービス開発に取り組める企業・大学・団体などの参画が想定されている。取り組む活動に中小企業が参画している、参画できる可能性があることが前提とされている。市はこれら団体に対してビジネス支援、マッチング、プロジェクト支援、人材育成支援、展示会出展、情報提供などを行う。この「I▫TOP横浜」の個別プロジェクトの中に自動運転PJがあり、これまでにも幾つかの取り組みが行われ、持続可能なモビリティサービスや物流サービスの実現、地域内の交通利便性の向上に向けた取組を推進している。一つ目は自動運転に関する実証実験(第一弾:H30.3、第二弾:H31.2-3)、二つ目は、まちの回遊性向上に関する横浜MaaS「AI運行バス」実証実験(H30.10-12)、AIを活用するタクシー配車アプリの実証実験(H29.9-10)。7/19(月)に日産自動車とNTTドコモは、横浜みなとみらいおよび中華街エリアにて、自動運転車両(自動運転SAEレベル2相当)を用いたオンデマンド配車サービスの実証実験を、今秋、9/21(火)から開始すると発表した。本実証では、自動運転車両を用いた交通サービス「Easy Ride®」と人工知能を活用したオンデマンド交通システム「AI運行バス®」を組み合わせて行います。進化した日産の自動運転車両と今回新たに自動運転車両の配車に対応したドコモの「AI運行バス」を組み合わせることで、将来の完全自動運転による交通サービスをイメージさせる最新技術やサービスを、今回に募集する一般モニター(約200名)に体験してもらい、その実用性を実証する。今回の乗降ポイントは23カ所に拡大され、配車予約に利用される「AI運行バス」は、自動運転車両と電気自動車両、双方に対応し、自動運転時のドアの開閉との連携や、車両の電池残量を考慮した配車制御を新たに実装している。またアプリ上では、行きたい場所を地図から直接指定する以外に、ショッピングや食事、観光などのカテゴリから目的地を選択することが出来る。モニター募集は7/19(月)~8/15(日)までとなる。横浜中華街では、9/21(旧暦8月15日)に中秋節を迎え、中華菓子店に様々な月餅が並ぶ。

定額機器利用サービス「エネカリ」 他

7月30日 少し前の話となるが、6/3に日本自動車工業会のオンライン記者会見で、豊田章男社長がEV充電インフラについてコメントしている。「数だけを目標にすると、結果として使い勝手が悪いことになりかねない」と指摘した。質疑の発端は、朝日新聞の記者からの質問だった。質問は「政府が成長戦略で2030年に急速充電器を3万基、水素ステーションを1000基に増やす方針を打ち出した。この数字をどのように受け止めているか。また、EVやPHEV、FCEVを本格的に普及させるために、どんなところに、どのように増やせばいいと考えるか?現在の課題、誰が設置を担うべきか?」との内容だ。豊田会長は一点目に政府の成長戦略を挙げ「2030年、急速充電器、水素1000基?急速充電器は15万基でしたっけ?を増やすという計画だが、設置することだけを目標にしてほしくはない」と指摘。令和3年6月2日に内閣官房、経産省、内閣府、金融庁、総務省、外務省、文科省、農水省、国交省、環境省が連名で作成した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(案)」に基づいた発言のようだ。成長戦略案中では「充電・充填インフラの不足は電動車普及の妨げとなる。(中略)既存のインフラを有効に活用できるサービスステーション(SS)における急速充電器1万基等、公共用の急速充電器3万基を含む、充電インフラ15万基を設置し、遅くとも2030年までにガソリン車並の利便性を実現することを目指す。充電インフラの普及促進や規制緩和等により、最適な配置やビジネス性の向上をすすめるとともに、充電設備の普及が遅れている集合住宅に対する導入を促進する。(中略)また、充填インフラについては燃料電池車・燃料電池バス及び燃料電池トラックの普及を見据え、2030年までに1000基程度の水素ステーションについて、人流・物流を考慮しながら最適な配置となるよう整備するとともに、規制改革に取組む。」豊田社長は「目的はカーボンニュートラルであり、BEV(バッテリー式電動自動車)とFCEV(燃料電池を搭載した電気車)は、インフラとセットである。しかし、数だけを目標にすると、設置できる場所に設置していくということになり、結果として使い勝手が悪いと言うことになりかねない、故にカーボンニュートラルの達成速度に影響がある」ことを懸念していると思われる。充電・充填インフラの設置場所は、考えを広げれば、充電中の消費行動が期待できる人流を作る。上記案を見る限り、政府は、既存のサービスステーション(SS)の活用、集合住宅などへの設置を考えており、トヨタは「もう少し、自動車業界を当てにしてほしい」と考え、その論拠に、コネクティッド技術を使えば合理的に電動車が多く走行する場所や、集まる場所を特定でき、再エネの蓄電機能、車両・部品のトレーサビリティ&リサイクルへの貢献、CASE技術による物流効率化→社会全体の省エネ貢献、電動車の給電機能(災害貢献)等を挙げる。自動車メーカー大手4社(トヨタ、日産、ホンダ、三菱)は、国内の充電インフラ構築を担う「e-Mobility Power」にも出資する(但し、東京電力HD、中部電力なども出資)。同社の期待する充電・充填インフラの設置場所は、高速道路のSA/PA、旅先のホテルや旅館の駐車場、ショッピングセンター、集合住宅の駐車場などだ。また東京電力パワーグリッド株式会社(一般送配電事業/主に発電所から発電された電気を変電所や鉄塔、電柱を通じて顧客に届ける)では、送配電事業の安定、効率化、価値向上の観点から「ゼロエミッション(CO2の排出ゼロ)」や「レジリエンス(回復・復元力)向上」「分散化社会の構築(各地に分散する電源を活用)」につながる付加価値事業の創出にも取り組むが、その一角に分散型の電源として「EV、PHV」が想定されている。EV=再エネの発電量のばらつきを抑える蓄電池と捉えられている。同社の想定する充電・充填インフラの設置場所は、企業などの業務用車両を充電する「自社の駐車場」であり、V2H(Vehicle to Home)を想定した「一般家庭」である。これらの「使い勝手(充電ポイント)」をどのように配置してゆくか、関係業界と国が早期に足並みを揃え、普及を図る必要がある。

選手村、自動運転バスをオーストリア代表が紹介 「ついにこんなものが」と驚きの声も 他

7月29日 最近、めっきり報道の機会が減ったトヨタの「e-Pallet」。オリンピック直前に発表された東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県における「無観客」での実施や、コロナウイルスの感染拡大による4回目の緊急事態宣言など、「e-Pallet」関係者には辛い報道が続いた。当初選手村での選手や大会関係者の輸送を担うと宣言し、業界や大会関係者からも期待を集めていた。この期間トヨタを始めとする「e-Pallet」関係者はひたすら準備を積んできた。選手の入村も済み、ついに迎えた大会期間。7/23、豊田社長は大会会場でなく選手村にいる運行チームの現場に訪問した。「e-Pallet」は約束通り選手村を誇らしげに、そして静々と走行していた。Webには、オーストラリア代表(ビクトリア・ウォルフハルト氏)が「選手村を乗り物でめぐってみるのはいかが?」と「e-Pallet」の運行されている様子を投稿している。話は変わるが、移動スーパー「とくし丸」は冷蔵機能を備えた軽車両に生鮮食品や惣菜、日用品などを揃え、スーパーの超大型店化と郊外化による、街中のスーパー消滅で生まれた「買い物困難者」のニーズに応える移動型スーパーだ。ネットスーパーを使えるお年寄りは限られる。また弁当の宅配も、確かに便利で調理の手間も省けるが、長期利用となるとメニューや味に飽きてしまうとの現実もある。自治体などの送迎サービスを使うのも気が引けるなどの声もある。「とくし丸」の軽トラックに積まれる商品は訳400品目、約1200~1500点。おばあちゃんの「セレクトショップ」の位置を確保してきた。販売の訪問は3日に1回程度、御用聞きの役割も果たす。そしてコロナ禍においても対面販売形式を続ける。理由は顧客との関係性を重んじるからだ(トラックは屋外なので密な環境にはなりにくい)。コンビニ網の合間を縫う生鮮食品店となっている。「とくし丸」が築く、顧客との信頼関係をベースにした「ヒューマンネットワーク」は、そのまま様々な物品販売の小売りルートに転用が可能だ。そして、自治体内での高齢者の「見守り隊」ともなる。オリンピック選手村を支えた「e-Pallet」の技術の次の舞台は全国展開(社会実装)だ。この優良「ヒューマンネットワーク」を「e-Pallet」に載せ、DX(デジタル・トランスフォーメーション)させることは出来ないか?

ウーブン・プラネットがCARMERAを買収、自動運転の高精度地図作成加速へ! 他

7月28日 今春~今夏にかけて、物流MaaSや商用車の電動化におけるニュースに接する機会が増えた。世界でもCASEや自律運転は物流向けのサービスから着手される傾向が目立つ。その間隙を縫って、ロボタクシーや自動運転バスなどの話題が並走する。国内ではトヨタを旗艦とする小型商用車連合への合流も進む。当初はいすゞ、日産、先日はスズキとダイハツが艦隊に加わる意向を示した。トヨタの子会社、ウーブン・プラネット社は、7/15にCARMERA社(米国のスタートアップ)を買収、高精度地図の生成・リアルタイムの道路情報解析の技術を強化した。車載カメラや各種のセンサーで取得した映像データを解析し、刻々と変わる車線や信号、標識などの変化を迅速に高精度地図に反映させることが出来るようになる。また経済産業省は「物流MaaS推進に向けた実証事業を実施」、2021年度は①「トラックデータ連携の仕組み確立」②「見える化・混載・自動化等による輸配送効率化」③「電動商用車活用・エネルギーマネジメントの導入ユースケース等に係る検証」を推進していく。このうちの③では、ミツバが交換式バッテリーを搭載した「軽貨物EV」を制作、テストコースで配送サービスを模した運用を実施する。また、みちのりホールディングスは「小容量バッテリーのEVバス」を地方の路線バスとして活用、運行管理とエネルギー管理をエネマネシステムで行う。長瀬産業は支線輸配送業務向けに設計した「ミニカー区分の小型電動車」を宅配業務の現場で実際に運用、小型電動車の課題や現場ニーズに応じた仕様、望ましい運用システムや関連設備の在り方を検証、とある。艦隊は、艦隊を支える湾内のタグボートや燃料補給船、浚渫船、サルベージ船のような、様々な用途で利用される特殊自動車(救急車や消防車、パトカー、空港や自衛隊の特殊車両、果ては建設用の重機や自転車、電動キックボード、ベビーカー、電動車いす、LRTなどに至るまで)など、少数勢力(メーカー)も束ねて、取り込むことを忘れてはならない。少数勢力の積み重ねは、即ち見えない大勢力となり、数の力はコスト削減け、路面の詳細情報の収集を助けるからだ。