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アイシンがMaaS事業を加速、フードデリバリー「めしクルー」 提供地域を拡大 他

8月24日 自動車部品、エネルギー・住生活関連製品の製造販売を行うアイシン(本社:愛知県刈谷市)が、この8月からフードデリバリーサービス「めしクルー」の提供地域を、現在実証実験中の刈谷市から、西尾市、碧南市に拡大する。この取り組み(「刈谷飯crew」)は、刈谷市のホームページ上の新型コロナウイルス感染症に対する取組等、テイクアウト・デリバリーで飲食店の支援のページで、刈谷商工会議所自身が行う「刈谷テイクアウトグルメ応援掲示板」を紹介する傍ら、地元企業でもあるアイシン精機との連携も紹介されているものだ。「刈谷飯crew」の専用ホームページを拝見すると、複数店のメニューが一度に頼め、配送料はどれだけ頼んでも1回400円、オフィスの他、一般家庭にも配送可能と謳われている。但し、お届け場所は刈谷駅から概ね2km圏内、配達は商品の合計が1,000円以上から受け付けとなっている。その他の詳細は、https://www.meshicrew.com を参考にしていただきたい。注文方法は、お届け時間(お届け希望時間帯)を選択、注文する商品を選び(店名、商品、個数など*お店は複数選択できる)、最後にお届け先を選択(お名前、お届け先、電話番号、メールアドレス)すると、入力した内容の確認・注文画面が表示される。現在参加店は21店舗。豊富なメニューを選択できる。注文者には、テレワークなど在宅での食事シーンが増えるため、便利に食事をしたいとのニーズや、飲食店には、コロナ禍における来客数減を補完したい、自店にデリバリーサービスを取り入れたいが、注文サイトの構築や、配達員の確保などの壁があり、手軽にデリバリーを始めたいとのニーズもある。アイシンでは、フードデリバリーサービスにこれまで培ってきた乗り合い送迎サービス「チョイソコ」、運転代行アプリ「うんてん代コール」など、移動したい人や、運びたいものを「移動手段」とつなぐマッチングサービスの技術やノウハウを活かし、利用者と飲食店と配達員(運転代行業者)を結ぶ。かあーなびで培った技術を応用した同社のシステムで、複数店から効率よく料理をピックアップし、同様に複数の利用者に効率良く料理を配達するルートを導き出すことが出来るとのこと。今回、拡大される地域となる西尾市では、西尾駅を中心に半径3km圏内、碧南市では碧南市役所を中心に1.5km圏内がデリバリーの対象地域となるようだ。フードメニューには地元青果店や酒屋さんも参加しており、出来合いの料理だけでなく、新鮮な野菜やお豆腐、調味料なども入手でき、買い物の時間が取れないが自分で調理したいという方にも、晩酌にちょっと一杯という方にも、気の利いた品揃えとなっている。サイドメニューとしてドリンクメニューが選べる点なども工夫されている。西尾市、碧南市のフードメニューと、アイシンのマーケットリサーチ力にも期待したいところだ。

地域間や業種をまたがるモビリティデータ連携 経産省が事業を支援 他

8月23日 今回のニュースの「地域間や業種をまたがるモビリティデータ連携 経産省が事業を支援」の記事を拝見し気になる点が一つ。国土交通省の総合政策局公共交通・物流政策審議官部門モビリティサービス推進課が令和3年5月に策定した「MaaS関連データの連携に関するガイドラインダイジェスト」の内容を見ると、9ページにMaaSに関連データの主な項目というタイトルがある。例として挙げられている公共交通等関連データ(鉄道の場合)の動的データに運行情報(路線毎/列車毎の遅延情報、運転見合わせ情報等の運行状態に関連する情報)があり、その備考欄には協調的データ及び競争的データの「区分の目安として」、各データごとに「◎」「○」「(空欄)」の分類が行われている。一般的利用者が基本的なMaaSのサービスを受けるうえで特に重要なデータ(MaaS基盤データ)として、協調的データとするよう務めるデータに「◎」が付されている。一方、少し前のニュースだが、8/6にこのニュースで採り上げさせていただいた「MaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス会社「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=68431?pno=3&site=nli)ニッセイ基礎研究所の記事中、「MaaS実現に、他社のオープンデータ化の壁。将来のために、交通事業者自身がIT投資をして公開すべき」において、みちのりホールディングスが実証実験において2年目に作成したアプリについて、JR東日本の運行情報が検索出来なくなり、みちのりホールディングスグループ内の事業者の運行情報の検索のみに、検索範囲が縮退している理由についての質問がある。みちのりの担当者は次のように答えている。「1年目は我々以外の運行データを買ってアプリを作ったが、結構高額なんです。だから費用の問題で、2年目は買わなかったという訳です。バス業界ではこれまでデータ化が遅れていましたが、各社が次々と、国土交通省が標準フォーマットと定めた「GTFS」という形式でデータを作って、オープンにしています。それに比べて、鉄道業界は従来から先行して、一定のお金を掛けて運行情報などをデータ化し、販売してきました」。費用をかけて構築したデータベース。JRの立場も理解されるべきだし、みちのりホールディングスのコスト感覚も正しいものだろう。同省が定めた標準フォーマットに各社がデータの運用を合わせた結果である。しかし、同様の理由で全国各地で開発され、或いは運用中のMaaSアプリの利便性が損なわれているとしたら、国交省・経産省は、協調的データ及び競争的データの「区分の目安として」ではなく、どちらにすべきかを判断し、必要なら費用補助などを考慮すべきタイミングではないか。経産省は「令和3年スマートモビリティチャレンジにおける先進実証を行う地域・事業者」の選定を行った(コンソーシアム幹事:産総研、事業担当:日本工営)。その中で「地域や業種をまたがるモビリティデータ利活用推進事業」を6/25から日本工営が公募し、この度、事業者が決定した。「利用者のデータ提供受容性と持続的ビジネスモデルの検証」(日本ユニシス)、「MaaSの高度化に向けた異業種連携ユースケースの確率」(MaaS Tech Japan)、「SNSデータを活用した利用者目線での地域の課題・サービス効果の見える化」(SEEDホールディングス)が選定されている(*実証事業者の決定は8/24)。国交省・経産省の課題の把握と各社の取り組みに期待したい。

デイユース利用の回数券を新たに販売事前決済・非接触のWebチケット導入 他

8月20日 9/1(水)より京王プラザホテルが、京王電鉄が進めるMaaSサービス「TAMa-GO(タマ・ゴー)」上で、ホテルを定期利用したいお客様向けにデイユース利用の回数券の販売を始める。ユーザーは、「Webチケット」の導入によって、事前決済・非接触・キャッシュレスで回数券を購入することが出来る。デイユース利用の回数券「The Five ~Day Use~」は1セットで5枚、45,000円(サービス料/税金込み)。利用は購入より180日間有効なので、クリスマスなどの利用も見込める(*12/31-1/1は除外日となる)。回数券は1枚につき1室(部屋のタイプはおまかせ)、2名様まで。9:00~23:00の間に5時間利用できる。特典として、駐車場無料(1室1台)、レストラン、バー・ラウンジの10%割引が付く(一部店舗を除く)、特典は利用日に限りだ。京王プラザホテルでは、本年5月からドリンクのサブスクリプションサービスや、レストランなどの食事券として「Webチケット」を導入している。利用の仕方は、「TAMa-GO」からプロフィールとクレジットカード情報を登録、同サイトから京王プラザホテルを選択、希望のチケットを購入する。その後、電話予約を行い、チェックインの際にフロントにチケット画面を提示する。ホテル会員、契約企業特典の同時利用は出来ないので、その点は注意が必要だ。西新宿の高層ビル街の景観の一部に溶け込んで久しい京王プラザホテル。何をいまさら!という向きに。同ホテルのイベント・フェア一覧をチェックしてみた(*いずれも上記とは別企画です)。期日は残りわずかとなる(~8/31まで)が、今年開業50周年となる同ホテルと、カップヌードルの50周年記念コラボ(カップヌードルを京王プラザホテルのシェフがアレンジし、ホテルクオリティのフルコースに仕立てた企画、カップヌードルカレーと謎肉の焼き菓子、炊き込みご飯、冷製チリトマトのヌードルサラダなど全8種)や、安心・安全な環境のホテルでお仕事!オフィス利用や会議利用のできる、「WORK@theHOTELホテルでお仕事!」、身近なところでは、上記同様「TAMa-GO」の「Webチケット」が使える「サブスクコーヒー」(9月分販売決定!/1ヶ月:5,000円、テイクアウト:1杯 500円)が、8/27_12:00より販売開始となる。平日朝の出勤前(7:00~11:00まで)に心地よい店内で仕事のスケジュール確認も進むはずだ。また、ランチの後の1杯(13:30~)のテイクアウトも出来る。*テイクアウトは全日O.K.(7:00~17:30/曜日の制限なく利用可能)。*但し、販売数は先着50名様。提供されるドリンクは、コーヒー、カフェラテ、紅茶(4種)だ。マイボトルの利用もO.K!モビリティの利用を軸としながらも、MaaSアプリ(MaaSサイト)が沿線の経済と結びつき、厳しいコロナ禍経済を乗り切るため、逞しくコラボレーションを確立している好事例と言える。決して新宿だから、著名なホテルだから、ということではない。「Webチケット」は、すべてのビジネスパーソンのアイデアを収益に昇華する支援ツールと言えよう。ぜひ、取り組んでみてはいかがか?

名古屋の幹線道路で自動運転 ウィラーなど実証実験開始 他

8月19日 愛知県は、名古屋市の鶴舞周辺にあるイオンタウン千種→JR鶴舞駅→イオンタウン千種間(鶴舞駅ルート:1.6km)と、イオンタウン千種→名古屋工業大学→イオンタウン千種間(名工大ルート:1.4km)の2ルートで、自動運転によるビジネスモデルの構築を進める。実施日程は、8/18(水)~10/29(金)まで。実施は昼間(期間中の祝日を除く水・木・金、午前10時~午後5時まで)及び夜間運行(8/14,15,20,21,22,27,28の7日間、午後8時から午後10時まで)に分けて行われる。一日辺りは7~14便の運行を見込む。この実証実験の一環として名古屋市鶴舞周辺において「都心における自動運転を利用した移動」をテーマに幹線道路を含むルートで、交通事業者が自動運転車両を運行する。本実証実験には、WILLER、名鉄バス、WILLER EXPRESS、ST Engineering、BOLDRY、名古屋工業大学、イオンタウンが参画する。実証実験は、若宮大通りなどの都心部の幹線ルートにおける自動運転車両の技術オペレーション面における安全運行の確立と、長期間の実証により、自動運転への社会受容、理解を得ることを目的とする。また車両の運行はWILLERグループと名鉄バスが担う。使用する自動運転バス車両は、茨城県境町や羽田イノベーションシティでも、実績のある自動運転シャトルバス「NAVYA(ナビヤ)」だ。衛星測位システムを用いて、自己位置を把握、センサー等で障害物を検知する。前方3m以内に障害物を検知した場合、自動で緊急停止する機能を備えるのと、常に操作者が車両を監視、危険を察知した場合は、手動モードに切り替えて走行を続行するなどの安全対策を施す。ちなみに車両は名鉄バスをイメージさせるカラーに仕上げられている。都心の鶴舞駅や名古屋大学医学部附属病院、鶴舞公園や名古屋工業大学、イオンタウン千種(ショッピングモール)付近では、人や自転車による道路の横断、幹線道路部分においては、他車の割り込みなどのシチュエーションも起こり得るかも知れない環境だ。境町や羽田のイノベーションシティといった自動運転車両にとって有利な走行環境から一転、都市部への社会実装のため、より実践に即した実証となると思われる。また、名工大の学生にとってはMaaSやCASE、自動運転などの技術を身近で触れることが出来る、またとない機会が提供されることになる。様々な面で期待の大きな実証実験だ。最後まで安全に運行され、都心部での走行における様々な課題を洗い出す機会となることを願いたい。写真提供:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー

令和3年度 北海道におけるMaaS普及啓発イベント開催事業に係る一般競争入札 他

8月18日 8/17に、経済産業省 北海道経済産業局が「令和3年度 北海道におけるMaaS普及啓発イベント開催事業に係る一般競争入札」を開始した。これまでの、北海道におけるMaaSの導入状況を調べるため「北海道におけるMaaS導入状況について~調査結果(中間報告)~」(2021年1月18日 北海道経済産業局 地域経済部 製造・情報産業課)を拝見した。内容は三部構成で、調査概要とアンケート調査結果、道内自治体のMaaS導入取組事例となる。調査は当局より道内の自治体や交通事業者を対象に、MaaSへの関心度や導入意向などをアンケートしたものだ。この調査によるとMaaSに関心のある自治体は6割に上り、実際に導入に取組んでいる自治体に取組みの内容や進捗状況をヒアリングしている。令和元年度の調査では、自治体(139自治体)や交通関連事業者団体(95事業者)に、令和2年度の調査ではMaaS導入に取組んでいる自治体(20地域程度)、MaaS関連事業者(5事業者)に対して調査が行われている。アンケートの結果では、地域交通・観光客向けの二次交通の課題として、路線バス事業者への補助金増加が最も多かった(石狩振興局ではデマンド交通の担い手確保、地域住民の理解が多かった)。地域交通確保のための施策として何らかの施策を講じている自治体は9割を超え、やはり「バス事業者への補助金」が最も多かった。実際に投じている予算では、「バス事業者への補助金」に次いで「コミュニティバス」が多かった。*ちなみに2次交通とは、前述の2者以外では、デイサービスバス、直営路線バス、乗合タクシーなどだ。しかし、観光客向けの二次交通確保のための施策は、8割以上が「施策なし」、講じている施策としては「レンタルサイクル」が最も多く4割を超えた。次いで「期間限定観光バス」が続く。予算の投入割合としては、観光シャトルバス(21%)が多かった。自治体に於けるMaaSの認知度は「聞いたことはあるが詳しくは分からない」(45%)、次いで「知っている」(41%)。札幌近隣の都市圏や胆振、日高、十勝では認知度が高く、反対に釧路、根室管内、留萌、宗谷管内等は観光地を有するエリアでも認知度は低かった。一方、導入済み、検討中、情報収集中の自治体は6割に上り、うち情報収集中は半数以上である。関心がないのは4割程度。MaaS導入の課題としては「導入費用」(100%)、「情報不足」(92.4%)。他方、交通事業者においては「知っている」が4割程度、事業者別では空港ターミナルビル運営事業者は「知っている」の割合が6割を超える。関心度については、6割が「関心はない」という結果だ。しかし、地域交通・二次交通の確保が新たなサービスに繋がると考えている事業者は8割に上る。MaaS導入の課題については「情報不足」「導入費用」「人材不足」が3つが大きな課題だ。オープンデータ化については5割が「対応済み」、「今後対応予定」である。これらの調査結果からMaaS導入における自治体の最大の課題は「財源確保」であり、地域住民の理解を得ることの難しさであり、現段階では他の自治体の導入事例や、国や道の支援制度等の情報の取得だ。MaaSビジネスによる自主的・長期的な収益源の確保という意識には至っていない。交通事業者の課題は、札幌圏では一定程度浸透しているものの、他地域ではあまり浸透しておらず、費用対効果などについての懸念が多い。道の推進方針や事業者にとってどのような利益につながるかが、明らかになると関心度合いが挙がることも期待される。タクシー会社やバス会社では投資額に対する効果が見えないため、二の足を踏んでいるという意見も見られたようだ。国や道庁の積極的な情報共有、ビジネス性に関する丁寧な説明が必要だ。コロナの感染状況にも拠るが、自治体がMaaSの導入効果を味見できるような「TOHOKU MaaS」のようなイベントをオール北海道で経験する、或いは「TOHOKU MaaS」を実施したJR東日本などが成果を共有する等出来たらよいのではないか?

Amazonが「NVIDIA DRIVE」採用の自動運転トラックを1,000台導入 2022年にはNVIDIA DRIVE Orinに移行へ 他

8月17日 福島県浪江町の棚塩産業団地は、3つのエリアからなる。「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」「企業誘致エリア」「福島ロボットテストフィールド」である。ちなみに「福島ロボットテストフィールド」は、ロボットテストフィールドと言いつつ、立派な滑走路を備える飛行試験、操縦訓練に使用する施設、つまり立派な飛行場である。「福島水素エネルギー研究フィールド」は再生可能エネルギーを利用した水素エネルギーシステムを、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネルギーシステムズ(株)、東北電力(株)、岩谷産業(株)などが、同町で建設を進めて来た、10MWの水素生成装置を備えた水素製造施設である。本プロジェクトの特長は、再生可能エネルギーから水素を製造することで、CO2排出量削減を試みる。1日の水素製造量(1時間当たり1200Nm3)(Nm3は、ノルマル・リューベと読み、標準状態(0℃、1気圧)に換算した1㎥のガス量のこと)で、一般家庭、約150世帯(1ヶ月)の電力を供給、或いは560台のFCV(燃料電池車)に水素を充填できる。また、再生可能エネルギーの利用拡大を実現することである。水素需要を予測する「水素需要予測システム」と、電力系統の需給バランスを監視制御する「電力系統側制御システム」からの情報をもとに、「水素エネルギー運用システム」が最適制御を行うことで、再生可能エネルギーの利用拡大を狙う。最適制御とは、電力系統の需要より供給が多ければ、水素の製造量を増やし、反対に電力系統の供給より需要が多ければ、水素の製造量を削減するということだ。システムを簡単に述べると、太陽光発電や、風力発電など再生可能エネルギーから得た電力に、系統電力(前述の発電に火力発電を加えたもの)を加え、水素を製造、これを施設内に貯蔵する。貯蔵された水素は、前述の水素エネルギー運用システムにより、最適制御され、輸送車により水素発電(燃料電池)で電力化され、電力市場で使用されるか、水素ステーション経由で燃料電池車、燃料電池バスなどで利用される。また、工場などの産業用途で利用される。水素はメタンCH4(都市ガスの成分)などと比べると、検知し難く、最も軽い気体なので拡散し易い、燃焼可能濃度範囲が広い、着火し易いなどの性質を持つが、安全対策として漏らさない(法規に基づく適切な設計・施工、有資格者による保安管理)、検知したら止める(各所に検知器を設置、水素を検知した場合は、機器単体とプラント全体の両面で安全停止を行う)、万が一漏れても溜めない(設備に水素がたまらないよう、換気風量を確保)、着火させない(導電性の高い床素材、適切なアース接地、静電気を溜めない)など安全対策を施し利用する。同施設で製造された水素はこの7月から、いわき市鹿島町の水素供給施設「いわき鹿島水素ステーション」で一般FCV向けに供給されている。浪江版地産地消モデルが実績を積み、早期に全国展開されることに期待したい。

日立、仏タレス「鉄道信号事業」買収の全舞台裏 MaaS展開拡大へ「料金収受システム」にも着目 他

8月16日 日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社、日立レールがThales S.A.(タレス社)を買収した。対象事業のの事業価値は16億6,000万ユーロ(約2,150億円)。タレス社の持つ鉄道信号関連事業(以下「同事業」)は、①鉄道信号システム、②鉄道運行管理システム、③通信システム、④チケッティング分野。同社の2020年度の売上高は、16億ユーロ。本買収で日立は鉄道信号システム事業をグローバルに拡大したい意向で、更に日立の強みとタレス社の鉄道信号関連事業のデジタル技術をかけ合わせ、MaaSソリューションのグローバルでの事業展開を加速させることを目的としている。これらの事業は買収クロージングから4年後となる2026年度に売上高1兆円、二桁の調整後営業利益率の達成を目指す。タレス社の同事業は、幹線鉄道向け信号システム、都市鉄道向け信号システム、統合通信システム、料金収受システムの4事業で構成され、うち50%はデジタル関連事業であることから、モビリティーセクターにおけるデジタル人材を豊富に抱えている。タレス社の上記の事業を細分化すると、以下のようだ。①は列車制御システム、トラフィックマネジメントシステム、進路制御システム、②は列車制御システム(CBTC:無線式列車制御システム)、路線制御システム、③は運行管理センター、監視カメラ・セキュリティシステム、人流解析システム、アダプティブ接続システム、予知保全システム、路面電車・ライトレール向け信号システム、④は料金収受システム、駐車料金決済システム、道路通行料決済システム。タレス社の幹線鉄道向けの信号システムは、近年都市鉄道で導入の進むCBTCは40か国を超える世界の国々で採用されている。2013年にはJR東日本から常磐緩行線・綾瀬~取手間のCBTC設計メーカーとして選定されたが、コスト面や導入後の保守の担い手の問題から導入が見送られ、JR東日本が開発した「ATACS」が採用された経緯があるようだ。一度はJRが海外メーカーを選定したとの事実は関係者間で話題となった。現在、日立が持つ社会情報システム(交通分野)のメニューは、https://www.hitachi.co.jp/products/it/society/product_solution/mobility/index.html を閲覧すれば一覧できる。ジャンルは、チケッティング、トランスポート、ナビゲーション、メンテナンス、その他となっているが、売り上げの比率などは別として、単純にメニュー数で見るとトランスポート分野(在来線混雑可視化システム、車両トータル運用支援システム、鉄道輸送ソリューション)のメニュー数が少ないように感じる。今後、タレス社の①②の事業がどのように、トランスポート分野を補強して行くのか見守りたい。

セイノーが「空の宅配便」 10月からドローン配送参入 他

8月13日 西濃運輸は10月から山梨県北都留郡小菅村(きたつるぐんこすげむら)で、ドローンによる配送事業を行う。遡れば、今年の1月にセイノーホールディングスは、産業用ドローンの機体設計構造技術の研究開発などを行う株式会社エアロネクストと、新スマート物流の事業化について業務提携契約を締結、ドローン配送サービスを主事業にする戦略子会社、株式会社NEXT DELIVERYを設立、セイノーが同業他社に小菅村への共同配送を呼びかけ、効率化を図るとともに、既存の陸上輸送とドローン配送を合わせたスマートサプライチェーン「SkyHub」を、エアロネクスト社と共同開発する意向を示していた。4月からは同村で全国の過疎地への普及を見据え、ドローンによる配送サービス(実証実験)を行いながら、顧客にも協力を求めたり、顧客の意見を取り入れながら、事業開始のため準備が進められて来た。村内には、「ドローンデポ」が置かれ、ここでは、既存物流により運ばれて来た荷物を一時保管するとともに、村内にドローン配送する起点倉庫の役割を担う。「ドローンデポ」からは、村内に設置された「ドローンスタンド」まで、ドローンで荷物を運び、荷受人は置き配された荷物を受け取る。(*スマートサプライチェーン「SkyHub」の概念図では、「ドローンデポ」から、自動配送車や貨客混載、ギグワーカー等による配送なども想定されている)。セイノーは起点倉庫に食品や日用品など、300品目を村内の倉庫に常備する予定。常駐スタッフが電話やLINE経由で注文を受け、品物を箱詰め(80サイズ、5kg未満)し、発送する。最も遠い「ドローンスタンド」まで、3kmを、片道7分で配送する。ドローンに積載された箱は、着陸後に自動で切り離すことが出来る。トラックによる陸送の場合、配送は週3日だったが、日用品などの買い物代行サービスは毎日注文を受けられるようになった。荒天時は、トラックでの配送も並走させる。Amazonのドローン配送サービス「Amazon Prime Air」プロジェクトは、2020年8月にFAA(米国連邦航空局)による認可を受け、実用化にめどを付けている。日本国内では、今年の6/15に日本郵便が、ドローン配送サービスの実用化に向け、国産のドローン開発を手掛ける自立制御システム研究所(ACSL)が業務提携を結び、あわせて日本郵政キャピタルは、ACSLに30億円を出資するなどしている。今後の空の配送サービスの動きにも注目して行きたい。

第2回“浜松市モビリティサービス推進コンソーシアム”オンラインセミナーを開催します! 他

8月12日 「春野医療MaaS」で名を馳せた浜松市モビリティサービス推進コンソーシアムが、この9/2_13:30~15:30にオンラインセミナー「国土縮図型都市・浜松から展望する”自動運転が実装する社会”」をテーマに開催する。予備知識として令和3年3月17日に行われた第4回会議の資料を拝見した。令和2年4月1日に設立された、同コンソーシアムの共同幹事は、浜松市、遠州鉄道株式会社、スズキ株式会社が担う。今年の7/20現在の一般会員は73団体を数える。ちなみにアドバイザリーとして、MONET Technologies が参画する。同市が国土縮図型都市と呼ばれるのは、昭和20年代から周辺の町村との合併で拡大を続け、平成15年には天竜川・浜名湖地域合併協議会が設置され、平成17年7月には12市町村が合併、新浜松市の誕生となった経緯からだ。図らずも、海沿いの都市部から中山間地域までMaaSの全ての型(都市、郊外、中山間地域)を包含することとなった。2020年9月現在、人口は80万人を超える。同コンソーシアムが今までどのような課題を持ち、解決のためどのような活動をして来たのか?背景には、国の地方都市活性化に向けた環境整備や日本版MaaSの推進があり、同市の人口減少や少子高齢化による公共交通機関の維持の必要、買い物や医療など生活サービスの維持があり、このため各種サービスとモビリティの連携により、持続可能なまちづくりが求められている。課題解決のため、スマートシティー化への取り組みの一環として、MaaSへの取り組みが行われている。同市が第一期(2020年度~2024年度)と定めた取り組みでは、重点分野として、移動診療、自家用車乗り合い(自家用有償旅客運送)、フードデリバリー、浜松テレパーク構想(車をオフィス化、駐車場等の空きスペースを利用)、ドローン活用(平時・有事)があり、基盤づくりとしてエコシステム構築(官学企民)やデータ利活用(データ利活用の勉強会)が挙がる。第一期として動き始めているのは、①フードデリバリープラットフォーム、②前述の春野医療MaaSプロジェクト、③浜松テレワークパーク構想、④アイデアソンなどだ。①などは、浜松版のデリバリー&テイクアウトプラットフォーム「Foodelix」を構築しようとの動きだ。コロナ禍でテイクアウトのニーズが増えるものの、決済や配送エリアも異なる事業者単位でのサービスを一元化しようとの動きだ。デリバリーを利用したい事業者側のノウハウ不足の解消も狙う。②は中山間地域向けに「医療を届ける」試みだ。市の奥座敷となる天竜区の高齢化、免許返納による移動困難者の存在、地域交通の衰退による通院困難、医師不足などへの対応を図る。移動診療車によるオンライン診療や服薬指導、ドローンでの薬剤配送などを実現を目指す。③はテレワークのコワーキングスペースを、机や電源付きのレンタルオフィス車と駐車場としたものだ。電源さえあれば浜松の地の利を生かし、海でも山でも駐車場でも仕事ができる。④本コンソーシアム参加企業同士での「意識共有」「関係構築」「価値創造」を促進する事を目的としている。これまで全国で行われた様々な分野・技術・業種による実証実験の成果を、いか迅速に地域に取り込むのか?自治体が先導、或いは地域企業にビジネス的なモチベーションを持って連携してもらうか、どのように収益化・持続可能なMaaSを構築していくのか?この段階において、地域「コンソーシアム」が果たす役割は大きい。

移動手段の効率性提供、青森県がMaaS勉強会 他

8月11日 青森県でもMaaSの社会実装に向け、本格的な取り組みが始まった。7/9に青森市新町のウェディングプラザアラスカ 4F ダイヤモンドで「第1回青森県地域交通デザイン講座及び第1回あおもりMaaS推進会議」が開催された。市職員向けの講座を開催し、市町村における地域公共交通のあり方の検討、地域公共交通計画の策定支援、青森県型地域共生社会実現に向けた域内交通ネットワークの形成促進を図る。また、地域公共のデジタル化の促進とともにMaaS導入への取り組みを促進、地域活性化、利用者の利便性向上などのため、「あおもりMaaS推進会議」を立ち上げ、市町村交通におけるオープンデータ化を促進する為の勉強会を開催する。また同時に専門家を招き、セミナーを開催、県内の交通事業者やIT事業者の育成にも取り組む。青森県は令和3年度「選ばれる青森」への挑戦推進事業(令和3年度当初予算及び令和2年度2月補正予算)において、5つの戦略プロジェクト、4つの分野別取組みにより、政策・施策の取り組みの重点化を図るとしている。また地域県民局では、地域別計画に掲げる地域の目指す姿の実現のため、地域別計画推進事業を実施するとしている。戦略プロジェクト中、④未来へつなぐ「地域のゆりかご」プロジェクトに交通ネットワーク形成・買物支援の推進のための5事業には、5311万の予算が付く。内容は①持続可能な地域公共交通ネットワーク構築事業、②地域交通MaaS推進事業、③商店街コミュニティ機能再生・魅力創造事業、④QOL向上に向けた生活交通MaaSモデル構築事業、⑤産直と高齢農家をつなぐ「食の輪」づくり推進事業などで構成される。青森県では、現在の「青森県地域公共交通網形成計画」の計画期間が令和4年度までとなる。現在は次期計画となる「青森県地域公共交通計画」(令和5年度~令和9年度まで)を令和4年度内に策定するための協議期間だ。この計画は、「持続可能なバス交通ネットワーク再編に向けたワーキング会議」及び「持続可能なバス交通ネットワーク再編に向けたワーキング会議地域分科会」において具体的な検討を行うとあるので、主に路線バス中心の計画と言える。国交省では、地域の多様な主体の連携・協働による、地域の暮らしや産業に不可欠な交通サービスの確保・充実に向けた取り組みを支援する「地域公共交通確保維持改善事業の概要」との資料なども出している(令和2年度の予算額で、204億円、令和元年度補正予算額49億円を加え、前年度比1.15)。青森県の「青森県地域公共交通計画」を見ると、まずは路線バスの交通網の維持・確保優先と言った印象が強い。地域的には冬期の雪の影響も大きく、実際に県民の足として身近な公共交通と言えるのは鉄道網より、バスネットワークということかも知れない。交通網はその基幹から末端までがシームレスに繋がり、地域にある程度の便数を投入できて、はじめて利便性という高い移動価値を生み出す。あおもりMaaS推進協議会が発足により、他県の取り組みなどの情報が充実することや、各交通モードへの注力度合いが平準化され、地域に見合う豊かな移動アイデアが生まれることを期待したい。