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経産省、MaaSや自動運転に関する特許出願技術の調査結果発表 他

9月7日 特許庁が「令和2年度 特許出願技術動向調査 結果概要 MaaS(Mobility as a Service)~自動運転関連技術からの分析~」をまとめた。(令和3年2月)調査範囲は、①特許文献の出願年(優先権主張年)が2014-2018年、出願策国・地域は日、米、欧州(独除く)、独、中、韓となる。②非特許文献については、発行年が2014-2019年、調査対象としたMaaSの技術範囲は、自動運転関連技術、MaaS関連技術、自動運転&MaaS関連技術だ。調査の手法は、①がWPI検索、②がScopus検索による。双方とも商用データベースからの検索となる。①は上記の出願策国・地域への特許出願を前述のデータベースで検索、抽出された特許文献の分類を行った。②は論文発表からみた研究開発動向について、前述のデータベースで検索、抽出された論文が述べている自動運転関連技術、MaaS関連技術の分類を行ったものだ。資料の全容を当欄で書ききるのは難しいが、本調査の結果概要をお伝えすると、出願人国籍・地域別出願件数(35.4%)、出願人国籍・地域別出願ファミリー件数(31.3%)では、日本国籍が最も多かった。日本国籍からの出願は、車載センサやHMIに関するものが多いが、人工知能と遠隔監視・遠隔操作技術については米国籍の出願件数が日本を上回り最も多かった。また、MaaS関連技術区分別において、中国籍、米国籍の存在感が大きく、日本国籍のものが最も多かった分野は、駐車場、立ち寄り情報、広告、車両シェアリング。中国については、バス、タクシー鉄道など公共交通機関に関する出願件数が多く、またマルチモーダル関連の技術区分では、中国の出願件数が最多だった。日本は次位。欧州については出願件数は他国よりも少ないが、論文発表件数は多かったようだ。また、出願人別出願件数上位ランキング(自動運転関連技術、日米欧独中韓への出願)において、上位3社はトヨタ自動車、FORD GLOBAL TECHNOLOGIES(米国)、デンソーであった。出願人別出願件数上位ランキング(MaaS関連技術、日米欧独中韓への出願)においては、トヨタ自動車、DIDI CHINA TECHNOLOGY(中国)、FORD GLOBAL TECHNOLOGIES(米国)となった。資料の結びとなる「提言・示唆」においては、自動運転技術については、多くの特許が出願されるも、同分野で今後重要性が一層高まる「遠隔操作や遠隔監視技術、通信技術および人工知能の技術」については、他国の存在感は無視できず、研究開発の強化、製品開発の競争力を維持・向上が求められている。MaaS(マルチモーダル)については、鉄道やバス、タクシーなどの公共交通に、カーシェアやオンデマンド交通も含めた連携構築が課題であり、連携を促すため、多様な交通事業者がアクセス可能なデータ収集・共有プラットフォーム(MaaS基盤)の構築や個別に実用化の進むプローブ情報やバスロケーション、鉄道情報、交通管制、鉄道技術において実績のある運行管理などの技術の統合が求められている。また、MaaS(移動サービス)については、目的は利用者の目的地での活動を支援するものであり、移動手段に閉じたモデルではなく、利用者に付加価値を提供する「他産業と連携」が重要とされ、MaaS関連技術と自動運転技術の融合においては、新規ビジネスモデルの創出機会とされ、通信技術は双方の技術を融合させる技術として位置付けられている。中国ではモジュール間通信技術への注力が顕著とされ、各国の技術動向を注視しながらビジネスモデルの創出拡大が求められている。資料ではこの他、国際基準調和と国際標準化、「新たな日常」におけるモビリティの在り方の変化についても触れられているが、割愛させていただく。詳細をお知りになりたい方は、https://www.jpo.go.jp/resources/report/gidou-houkoku/tokkyo/document/index/2020_03.pdf をご覧ください。

ワーケーションタウン千曲市でマイクロツーリズム 「地元deワーケーション」 他

9月6日 9/29(水)~10/1(金)まで長野県千曲市にて「ちくまの魅力、再発見!地元deワーケーション~温泉MaaSでコワーキングやカフェをめぐる~」が開催される。千曲市は2019年より、町をあげてワーケーションの誘致活動と市民の交流促進に取り組んで来た。このため、同市のの産業振興課は、信州千曲観光局とも連携し、民間事業者によるMaaSの取り組みと、これを活用したワーケーション体験会を開催してきた。令和2年度の実績はワーケーション体験会を4回開催し、参加者は合計107名を数えた。令和3年度は観光交流課が担当し、シェアサイクルの社会実験事業を実施予定、需要把握などの効果検証を行った上で、シェアサイクルの本格導入に向けた検討も進める(千曲市「施策検証表」より)。今回の「地元deワーケーション」は、コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、住んでいる地域の魅力に目を向けなおす「マイクロツーリズム」にも目が向く。イベントのタイトルも、長野県在住の方々に向けた「地元de」を謳っている。今回も独自の配車アプリ「温泉MaaS」を活用し、参加者に地元の個性豊かな「ワークスペース」や名店巡りを楽しんでもらう予定だ。また本イベントは、全国からオンラインでワーケーションに参加する「おうちdeワーケーション」と同時開催する。「おうちdeワーケーション」は、地元参加者と、オンライン上での交流を楽しむことが出来る。参加者の「おうち」には、千曲市のグルメが届く(おしぼりうどんセット、あんずサイダー、あんずのお菓子、信州のおつまみ)。また、ライブ中継においては、千曲市の名所でのワーケーション体験が出来る仕組みだ。厳選されたロケーションは、姥捨ゲストハウスなからや(映画ロケ地)、千曲川、善光寺大本願別院(瞑想体験)、信州千曲観光局Gorori(戸倉上山田温泉/千曲市総合観光会館/畳部屋)、クラウドカッコウランドなど。「おうちdeワーケーション」では温泉MaaSシステムや、トレインワーケーション、ゼロ・カーボンなどの取り組みも紹介される。募集人員は30名程度、体験料金は5,000円(税込)、申込期限は9/21(火)だ。*申込みフォームはワーケーションLINE公式アカウント https://lin.ee/ywFZDF4 「温泉MaaS」は温泉を含む観光地において、ワーケーションとモビリティサービスを組合せ、様々な移動手段をワンストップで利用できる。支払いはチケット制となっている。募集人数はこちらも、30名程度、参加料金は、2泊3日、32,000円(税込)※1泊2日、日帰りも選択できる。*申し込みフォームは、上記と同様だ。イベント運営は、今回も、株式会社ふろしきや となる。同社は、新しい地域活用や社会課題解決に向けたプロジェクトを生み出す企業で、地域ブランディング要件定義・データ、情報解析による現状可視化、プロジェクト構想・実行プロセスの設計なども行う。

三重広域連携スーパーシティ推進協議会 スマートシティ2件採択 6町連携 他

9月3日 内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省は連携し「令和3年度 スマートシティ関連事業」として62地域と74事業を選定した。三重県多気町、大台町、明和町、渡会町(わたらいちょう)、大紀町(たいきちょう)、紀北町の6町は「三重広域連携スーパーシティ構想」として国の特区認定を目指し、経済産業省の「地域新MaaS創出推進事業」と国土交通省の「スマートシティモデルプロジェクト」に選定された。6町の総人口は77,609人。単独自治体の行政施策だけでは困難な地域課題を、産学官民連携で解決を試みる(*「学」には三重大学が参画)。参加企業は27企業。地域課題として横たわるのは、高齢者の医療費増加、人口減少による交通空白地帯の増加、農林水産業の高齢化・衰退化、医療や教育への不安、町の魅力の発信、住みたくなる住環境の整備、効率的な行財政運営などが出来ていない点、新規事業の参入がしづらい点などが挙がる。今回、施策としては高速自動車道国道法改正の第1号で生まれた全国初民間スマートIC直結施設である、グリーンフィールド「VISON」複合型滞在施設/敷地面積:約115ヘクタール、ナゴヤドーム24個分)の活用だ。グリーンフィールド「VISON」に投入された先端技術で、県内のその他自治体(Broun Field)の地方創生を目指すとともに、複数のサービス横断型のデータ連携モデルを構築する。「スーパーシティ広域データ連携」の全体像は、自治体主導により、自治体(行政)や地域事業者がデータ活用による先進的な住民サービスや地域の経済活性化を図るもの。都市OSによるデータ連携基盤の整備が必要とされる。分散型データ連携基盤(複数のサービス分野の多様なデータを活用、先端サービスを利用者に提供する)を整備、API連携を図る。本事業では、都市OSと複数分野に亘る先端サービス群の間には、地域通貨(キャッシュレス)サービス基盤を構築している。前述の地域課題を解決すべく取り組まれるサービスは、7万人のドクターネットワークとPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)連動型の医療サービスが支える、未来の地域医療(医療ヘルスケア)や、モビリティの自律走行を支えるインフラとなる「ダイナミックマップ」整備と、広域MaaS連携(モビリティ・サービス)、また林業等の地域産業を活性化させるため、一次産業におけるデータ活用と規制改革施策(地域産業の活性化)、位置情報などメタデータを活用した観光から防災までカバーする地域情報発信プラットフォーム開発(地域情報発信基盤)、自然との共存とRE100(100%再生可能電力に取り組む、グローバルな企業再生可能エネルギーイニシアチブ)の地産地消によるゼロカーボンシティの早期達成(ゼロカーボンシティ)、環境情報やインフラ情報など社会基盤データを共通化、維持管理の簡易化、防災へのデータ活用(デジタルインフラ・防災)、観光客や住民による地域店舗の利用活性化のための行政サービス連動型のデジタル広域通貨(デジタル経済圏)、ヘルスケアや林業等の地域産業、また教育など多目的なツーリズムプランによる交流人口の増加(多目的ツーリズム)などだ。サービス利用者となる住民や観光客は、オプトインによる住民合意を「My Key-ID Connect」という仕組みを通して、地域の生活ポータル(ヘルスケアやモビリティサービス、学校情報利用)や観光ポータル(地域情報、観光情報)を利用するようになる。6町を始めとする広域への「先端サービス早期実現」のため、国、県、三重広域連携スーパーシティ推進協議会、三重大学などが担う、課題整理・進捗管理・アドバイザリーといった役割は重要だ。

MaaS Tech Japan、モビリティデータ連携基盤構築業務に採択 他

9月2日 株式会社MaaS Tech Japanは、8/26にMaaS Tech Japanの移動情報統合データ基盤「TralSARE」が広島県モビリティデータ連携基盤に採択されたと発表した。本事業は、広島県の全域を対象とした広域自治体でのモビリティデータの利活用及びデータに基づく交通政策立案(EBPM)を支援する取組みとなり、県が複数のモビリティデータを統合し、分析・活用を行うデータ基盤の整備であり、日本で初の取り組みとなる。「EBPM」は、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングの略で、証拠に基づく政策立案のこと。政策の企画を、その場限りのエピソードに頼るのではなく、政策目的を明確にした上で合理的根拠(=エビデンス)に基づくものとすることです。少々寄り道となるが、群馬県前橋市などでは、東京大学空間情報科学研究センター、帝国データバンク、三菱総合研究所が参画し、市が保有する住民基本台帳、固定資産税台帳、水道使用料などのデータに基づき、市内の空き家の状況を、「EBPM」を活用して推定・可視化する実態調査システムを構築した例などがある。この取り組みにより、空き家調査を外部に委託することなく(予算の改善)、リアルタイムに状況を把握・更新でき(時間の改善)、ビッグデータにより調査員の判断を補完(判断の改善)するなどの効果をあげている。話は戻るが、広島県では、2018年3月末にJR西日本の三江線(島根県江津駅~広島県三次駅)が旅客営業を終了、翌4月1日に全線廃止になった経緯や、可部線では、いったん廃止となった可部駅~あき亀山駅間の路線復活なども記憶に新しい。県では人口減少・高齢化社会の進展に加え、コロナ禍の移動自粛などにより地域交通の維持がきびしい状況にある。特に中山間地域を始めとする各地域の交通ネットワークの維持・確保に向け、デジタルデータを活用したデータ分析に基づく、効率的で利便性の高い交通体系の構築を目指し、今後の交通政策に活用するため「広島県モビリティデータ連携基盤構築」を進めている。収集・分析されるデータは、バス乗降データや(ICカードデータ)、運行データ(運行情報データ)、移動関連データ(位置情報データ、人流データ)となる模様だ。また、MaaS Tech Japanの「TralSARE」は、鉄道、バス、タクシー、飛行機など交通に関する多様なデータをシームレスに共有し、分析・予測することを可能にした移動情報統合データ基盤だ。県内、特に中山間地域の足が確保・充足され、地域の足の利便性が向上し、経済も含めた地域の発展に繋がることを期待したい。

全国初、自動運転コミュニティバスとスマートバス停が連携 他

9月1日 本日9/1から凡そ半年の間、福岡県みやま市で、株式会社YE DIGITALとみやま市が、スマートバス停(YE DIGITALと西鉄エム・テックが提供)とコミュニティバス「みやま市自動運転サービス」の連携を図る実証実験を行う。スマートバス停×自動運転バスの連携は、全国初となる。スマートバス停は、デジタルサイネージに、時刻表や運行系統図の表示、その他の告知メッセージや広告などを遠隔から更新・表示できる次世代のバス停だ。豊富な情報配信が出来るモデルや、情報量を絞ることで消費電力を抑え「ソーラーパネル」を電力源とするエコモデル、その他様々な気象条件下(ソーラーパネルの電力供給量が不足するような環境下)でも、乾電池駆動により、稼働可能な「楽々モデル」などのバリエーションがある。今回の「連携ポイント」は、自動運転サービスの停留所「ルフラン(旧山川南部小学校:平成26年11月に同市が、佐賀市・佐伯市(大分県)とともに、九州初の「バイオマス産業都市」として認定されたことに伴い、現在はメタン発酵発電・液肥化プロジェクトとしてバイオマスセンターとなっている、元校舎の1階はシェアオフィスや、食品加工室、カフェスペースに改装されており起業家向けの施設にリニューアルされている)」において、紙運用の時刻表をスマートバス停により電子化、遠隔配信に置き換えると同時に、自動運転サービスの「運休情報」や「お知らせ」などをスマートバス停で遠隔配信する。またスマートバス停で、QRコードを遠隔配信し、運行情報案内や各種情報ソースとの遠隔なアクセス環境を提供する。市内のスマートバス停の設置場所は山川線(Aコープ山川店~ルフラン)の「ルフラン」バス停1ヶ所となる。今回ルフランのバス停には「楽々モデル」が採用されている。「楽々モデル」は、乾電池駆動により、電源やネットワーク配線不要で設置が容易。13.3インチの電子ペーパーが採用され、省エネと視認性の両立が図られている。既存のポールや壁面に専用金具で取付出来るため、設置の際に大掛かりな工事は不要だ。みやま市は、2021年7月19日より自動運転を利用したコミュニティバスの運行を開始している。「みやま市自動運転サービス(オレンジスター号)」は、2017年、2018年度に内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を活用、国と県と市が実施してきた自動運転サービスだ。車両にはヤマハのゴルフカートが採用されている。毎週月~金曜日に運行、運休は土日及び年末年始となっており、料金は一般が100円、高齢者・障害者・小学生は50円、未就学児童は無料だ。乗客定員は4人。速度は12km/hで運行している(自動運転時)。「スマートバス停の」ビジネスモデルについては未発表だが、順次、市内のバス停に導入されれば、自動運転サービスにとっては、タクシー広告のように新たな広告収入源となり得るかも知れない。

京浜急行電鉄、横須賀・三浦エリアで観光型MaaSの実証実験の成果は? 他

8月31日 横須賀市には「観光立市推進アクションプラン(2017年度~2021年度)」は、事業者と連携しながら施策を進め、観光客の市内における消費活動を活発化させ、観光消費額の上昇カーブを一気に上向きにすることを目的にするものだ。平成28年9月にまとめられた同市の「観光立市推進基本計画(2016年度~2025年度)」に対するアクションプランと言える。「観光立市推進基本計画」基本計画の第2章では、観光立市の目指す姿について触れられている。「人を惹き付ける地域資源の魅力は何か」について、同市は観光イメージとして一般に強くイメージが定着している「軍港都市」「海」「アメリカの雰囲気」「グルメ」、他に観光スポットとして「猿島・観音崎公園・三笠公園・くりはま花の国・YOKOSUKA 軍港めぐり」を上げる。同時に「体験観光」「文化観光」「スポーツ観光」「MICE(*多くの集客が見込まれるビジネスイベントなど)」を挙げ、ニッチな地域資源の開発に言及している。第3章 本市観光の現状等に記載のある本市観光の強み・弱みを拝見すると、「大きな強み」としての素材には、米海軍横須賀基地、自衛隊関連施設、グルメ(よこすか海軍カレー、ネイビーバーガー、地場産農水産物)、ペリー、世界三大記念艦「三笠」、東西で異なる自然環境、猿島、米軍横須賀基地居住者などが挙げられ、「ニッチな強み」として、同市ゆかりの近代の歴史や、アニメ、ゲーム、パワースポット、映画、小説などのサブカルチャー、プロスポーツチームの練習場、サイクリングやランニングなどのスポーツ、地形(坂道、トンネル、谷戸)などが挙がる。反対に弱みとしては、全国的に知名度が高い資源の活用不足(ペリー・開国)や、中心部における核となる観光集客施設不足、観光客と市民の動線の混在、基地関連施設の観光活用への抵抗感などが挙がる。この計画の策定時点で、表中の「大きな強み」を推進する「動かす力」は空欄だった。この6/22~1ヶ月間、京浜急行と同バス、NTTドコモは横須賀・三浦エリアを訪れる観光客らを対象に次世代移動サービス「MaaS」の実証実験を行った。デジタル化された京急電鉄の乗車券「みさきまぐろきっぷ」によるキャッシュレス決済、経路検索、観光施設の混雑情報可視化などをスマホアプリで提供、三浦半島の周遊性向上について検証を行った。実証実験では、iOS対応スマホ向けに「みうらよこすかMaaS」アプリを配信、アプリ内で京急品川~三崎口間の「デジタルみさきまぐろきっぷ」(大人3570円、小児2580円/税込)を購入、区間の全駅や食事券・土産券が利用できる全店にNFC(近距離無線通信)プレートを設置、スマホでNFCタグを読み込むと、非接触で改札の出入りや飲食・土産物の購入が出来るようにした。シェアサイクルやカーシェアのサイトへの移動も出来るようにした。MaaSによる実証実験が同市と三浦半島の観光活性化の推進力となり、今後の移動サービスや地元での観光消費の拡大に繋がることを期待したい。

「運転席ないバス」市街地公道を自動走行 岐阜市が10月実証実験 他

8月30日 岐阜県岐阜市で公共交通への自動運転技術導入に向け、10/23(土)~31(日)まで実証実験が行われる。本年度は、金華橋通りや長良橋通り、若宮通りなどの一般道において、県内初となる小型バスによる自動運転実証実験を行い、一般交通への影響や路上駐車など、自動運転に際し生じる課題の検証を行う。ルートは、岐阜市役所~金華橋通り経由、JR岐阜駅~長良橋通り経由で岐阜市役所に戻るコース(中心部ループ線ルート:5㎞、所要時間40分程度)と、同じく市役所を出発して、若宮通りを周回し、市役所に戻るショートコース(若宮通りルート:2km、所要時間20分程度)だ。時速19㎞以下での走行となる(最高速度は25km/h)。運行は午前10時~午後4時30分まで。1日6便を運行予定だ。車両は、茨城県境町や羽田イノベーションシティなどで、国内でも豊富な走行実績のある、NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ/レベル3対応)。同車は乗車定員15人(座席数は10席だが、コロナ感染防止のため乗車定員は5人)、EV(電気自動車)仕様となり、1回の充電で9時間(100km)の自動走行が可能だ。ハンドルや、アクセル、ブレーキペダルなどは装備していない。手動走行が必要な時には、操作員がコントローラで車両を操作する。茨城県境町の自動運転バスでも、これまでの運行実績などから保安要員がいなくても安全な運行が可能であることが認められ、既に保安要員の同乗は撤廃されている。しかし、8/26にトヨタのe-Palletがオリンピックの選手村内の横断歩道で、視覚障害を持つ選手と接触事故が起きた際、同車にはドアを開閉するスタッフと緊急時などに対応するスタッフの2名が乗車していた。市内の一般道では、同様に何らかのハンディキャップを持つ市民の通行も想定されなければならない。実証実験を行う上で、確実な安全対策を講じるべき重要なポイントだ。実証実験は、雨天により中止となる場合がある。今回は将来的な遠隔操作を見越して、遠隔の車外監視員も参加する。同時に顔認証によるキャッシュレス決済の実験も行われるため、参加者は事前に顔認証登録が必要になる。同市の取組に期待したい。

自動運転用の半導体チップ開発の芯馳科技が約170億円を調達 他

8月27日 8/26(木)14:00頃、東京2020オリンピック・パラリンピック選手村内の横断歩道において、村内巡回モビリティであるトヨタの「e-Pallet」と、視覚障害を持つ歩行者との接触事故が起こった。同社は、ニュースルームにおいて事故に遭われた歩行者へのお詫びとともに、事故原因の特定について、警察の捜査に全面的に協力すると発表している。 https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/35952442.html 現在、村内を巡回する「e-Pallet」の運行は、全面停止の措置が取られている。また、同社は徹底的な原因究明と、事故の再発防止に向け、組織委員会とともに検討を進めるとしている。コネクテッドと自動運転の時代。事故の再発防止策とともに、自動運転車両の発展・普及に向け、LiDARや監視カメラの歩行者検知の記録や車両のブレーキ動作記録データなどをもとに、明確な原因究明がなされるとともに、横断歩道付近での歩行者への安全対策に必要な改善策が練られ、今後の運転に確実に反映されていくことを願いたい。

国交省、日本版MaaS支援で12事業採択、高齢者に優しい支援型や、あいのりタクシー活用の事業など 他

8月26日 国土交通省は、8/24に「令和3年度 日本版MaaS推進・支援事業12事業について」をまとめた。6/18~7/19にかけて、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省が連携した「スマートシティ関連事業」の一事業として、「日本版MaaS推進・支援事業」の公募を行った選定結果だ。12事業の対象は、北海道芽室町(めむろちょう)*、群馬県前橋市、東京都大丸有地区*、山手線周辺/横須賀市、川崎市・箱根町、神奈川県三浦半島、富山県朝日町、静岡県静岡市、京都府与謝野町、宮崎県、沖縄県*、沖縄県宮古市となる(*は令和3年度新規)。あらためて資料を読み直して見ると、素人目ながら幾つか視点が生まれる。一つ目は、事業年度と地図の関係だ。令和元年度、2年度、3年度を通しで取組んだ自治体が見えてくる。群馬県前橋市、神奈川県川崎市・箱根町(箱根町は2年度は欠)、静岡県静岡市、京丹後地域(2年度は京都府京丹後市、3年度は京都府与謝野町)である。2年目の取り組みを見せる地域も多い。これらは微妙に地域名が変わるものがあるが、事業範囲が拡大したり、1年目の実証の結果を踏まえ、戦略的組込みをした結果と捉えたい。反対に一年で取り組みが終了した地域もある。コロナ禍での実証実験を強いられたこともある。実証結果を得て社会実装段階に至った地域は多くないのではないか?国は実証の結果得られた課題について、早期フォローアップが求められる地域と言えるのではないか。二つ目。現段階で地域ごとに改めてシステム開発するのは非効率なのではないか。類似したケースを探し、使い回せるプラットフォームやシステムを、コンサルタントやプラットフォーマーなどの手を通じ、取組み初年度の自治体に共有(紹介)する等の動きが活発化しても良いと思われる。三つ目は、自治体のMaaS導入目的について。交通事業者の担い手不足への対応、公共交通利用者減少への対応(行動変容)、交通空白地域対応、移動弱者への対応(バリアフリー化)、買い物・通院・通学対応、地域経済の活性化、データ基盤整備・活用、観光地における渋滞・混雑回避、新型コロナウイルス感染防止(非接触サービス)導入、市内周遊促進、二次交通基盤整備、市民の健康増進、交通モードの再編、ワーケーションや地域電力の地産地消促進など周辺課題との連携など、目的の類型化と類似した目的を持つ自治体同士のマッチングなどが考えられる。四つ目は、事業年度と地図に掲載されていない自治体への啓蒙(MaaS導入メリットの共有)と取組みへの早期誘導だ。自治体内や地域にスペシャリストが不足しているのであれば、経験値の高い自治体・企業と初取組みとなる自治体のマッチングや人脈紹介・人材交流は有効なのではないか。

令和3年度 無人自動運転等の先進MaaS実装加速化推進事業(地域新MaaS創出推進事業)に係る委託先を決定しました 他

8月25日 経済産業省の「令和3年度スマートモビリティチャレンジ」の先進パイロット地域に14地域が選定された。同事業では、令和3年度におけるMaaS実証では、地域の移動課題解決に向け、①他の移動との重ね掛けによる効率化、②モビリティでのサービス提供、③需要側の変容を促す仕掛け、④異業種との連携による収益活用・付加価値創出、⑤モビリティ関連データの取得、交通・都市政策との連携の5要素について、前年度の課題や地域の特性を踏まえ、更なる高度化に取り組む。また、全国展開に向け、データの活用・連携、人材の確保、マッチング機能の強化、持続性の確保といった横断的な視点からの検討をあわせて行うとしている。また分野・地域を横断的に取り組む4つの観点として「データの活用・連携基盤の構築」「必要な人材の確保」「マッチング機能の強化」「取組の持続性の確保」が設定され、各事業に対して、これらの観点から横断的に分析が実施される。北海道の帯広市(実施主体:十勝・帯広新モビリティ検討協議会)では、旅客バスを改造し、移動販売を行う「マルシェ機能付車両による路線バスの収益多角化」について取り組む。交通結節点である帯広駅から郊外の大空団地までの区間を対象に、遊休車両に改造を施し、マルシェ機能を付与した路線バス運行を行い、交通事業者の収益多角化・事業性改善、住民の受容性の検証を行う。帯広駅を出発するバスは、帯広駅で販売を行い、路線上の複数のバス停で商品を積み込み、大空団地停車中にも販売を行う。その後、終点となる郊外商業施設に向かう道中のバス停でも商品を積み込み(補充)、さらに終点でも商品の販売を行う計画だ。ちなみに大空団地は、昭和47年~平成30年まで建設が行われ、団地の棟数としては44棟、660戸強の戸数を持つ大規模団地だ。団地住民の徒歩圏に生活の質を向上させるサービスを提供する。料金については、路線バス運賃は乗客が支払い、商品販売の売り上げは店舗運営事業者が得る。契約に応じ、売上金額の数%を十勝バスに払う仕組みだ。同時に店舗運営者は、十勝バスに対して基本利用料金を支払う。基本利用料金は、車両利用料、ガソリン代、運転手・販売補助員の人件費などを想定している。さながら、大規模団地向けの移動スーパーといったところか。新たなMaaSサービスはモビリティ自体にも、従来とは異なる構造・デザインの変革をもたらす。特に客貨混載などを本格的に導入する場合、車体スペースや機能(冷蔵機能のような)の見直しが必要となると思われるが、帯広版MaaSや、十勝バスが変革の波に合わせ、どのようなモビリティを創出するのかも大変興味深いところである。